リテイニングリング

リテイニングリングとは

リテイニングリング_図0

リテイニングリング (英: Retaining Ring) とは、軸と軸が貫通する穴側の部品を、所定位置に固定もしくは保持するための金属製部品です。

「リテーニングリング」と呼ばれることもあり、「止め輪」「スナップリング」「サークリップ」なども同義語として使用されています。軸や穴にリテイニングリングをはめ込むための溝を加工し、軸や穴に取り付ける部品を固定するための部品です。

リテイニングリングの溝からはみ出ている板幅部分が、相手側の部品と接触して固定されます。

リテイニングリングの使用用途

リテイニングリング_図1

図1. リテイニングリングの使用例

リテイニングリングは、上記に示したように軸や穴に部品を固定する部品で、機械の組み立てなどで軸に軸受 (ベアリング) や歯車 (ギア) を固定するために使用します。軸用 (英: Internal) と穴用 (英: External) があり、それぞれ使用先、形状、型式が異なるため、選定には注意が必要です。

また、部品の固定方法や固定する拘束力によって、リテイニングリングの形状や型式を選定します。リテイニングリングを取り付けるためには、必ず軸の外側や穴の内側に、リテイニングリングの寸法 (サイズ) に応じた溝加工が必要です。

溝の加工寸法は、JIS規格やメーカーの寸法表に記載されています。

リテイニングリングの原理

軸の外周側または軸が貫通する穴の内周側に溝を加工し、溝にリテイニングリングをはめ込み、隣接する部品を固定します。リテイニングリングの溝からはみ出している板幅部分で、部品を拘束します。リテイニングリングがはめ込まれている状態は、上記の図1を参照してください。

軸用の溝底の径はリング内径若干大きく、穴用の溝底の径はリング外径よりも若干小さくより加工されています。そのため、専用工具などを使用しリテイニングリング外径を変形させ溝にはめ込みます。リテイニングリングは、スプリング状になり溝底に押し当てられ固定されます。

リテイニングリングの種類

1. 取り付け方向による分類

リテイニングリング_図2

図2. リテイニングリングの取り付け方向

リテイニングリングは取り付け方向によって、下記のような種類があります。

スラスト方向取り付け (溝加工必要)

  • C形 軸用、穴用
    最も一般的なタイプで、スラスト方向 (軸中心線と平行方向) に挿入し溝にはめ込んで使用します。
  • 丸形 軸用、穴用
    C形に比べ突起部が小さく、相手側との干渉が低減されますが、溝側面との接触面積が小さいため、スラスト荷重負荷が少し低くなります。
  • ベベル形 軸用、穴用
    溝の位置の加工精度、拘束相手の寸法のばらつきに影響されにくい特徴があります。
  • スパイラル形 軸用、穴用
    スパイラル形は、板状の鋼線をコイル巻きしたリング状のものです。リング全周の面で溝と接触しており、巻数を1重から2重へと変えることで、軽負荷荷重から重負荷荷重へ対応することが可能になります。スパイラルリングは、下記の同心型リテイニングリングと同様に、リング幅が溝からほとんどはみ出さないため、構成部品のスペースは十分に確保できます。

スラスト方向取り付け (溝加工不要)

  • ブッシュナット 軸用、穴用
    軸もしくは穴のスラスト方向 (軸中心線と平行方向) から挿入して使用します。爪部分が接触して抜け難い構造になっています。溝加工が不要なため、自由位置に取り付けが可能です。

ラジアル方向取り付け (溝加工必要)

  • E形
    軸用で軸に溝を加工してラジアル方向 (軸中心線と直角方向) に挿入して使用します。
  • クリセント形
    E形と比較して外径が小さいため、省スペースで使用できます。
  • U形
    軸用で軸に溝を加工してラジアル方向に挿入して使用します。溝に接触している部分が多いため、負荷できるスラスト荷重はE形より大きくなります。

2. 形状による分類

リテイニングリング_図3

図3 .リテイニングリングの形状

リテイニングリングは形状によって、下記のような種類があります。

偏心リテイニングリング
偏心リテイニングリングは、リング幅が開口部先端にかけて細く、装着状態で軸もしくは穴側の溝と、全ての面で接触しているのが特徴です。

同心リテイニングリング
同心リテイニングリングは、全体的にリング幅が一定で、組み付け時はリングが楕円形となり、溝と3点で接触し固定されているのが特徴です。リング幅のほとんどが溝内にはまり込みはみ出し部分が少ないため、構成部品の取り付けスペースを十分に確保することができます。しかし、偏心リテイニングリングと比較して固定力は低くなります。

リテイニングリングのその他情報

1. リテイニングリングの材質と表面処理 

リテイニングリングの主な材質は、炭素鋼  (S65C, S70C) 、硬鋼線材 (SWRH72B)  、ばね用ステンレス鋼帯 (SUS304-CSP) などが使われています。

また、保管期間・耐食性を向上させるため、リン酸塩皮膜処理や六価クロム皮膜処理などの表面処理が施されることがあります。

2. リテイニングリングの規格

  • JIS B 2804 止め輪 Retaining rings
  • ANSI/ASME B18.27 Tapered and Reduced Cross Section Retaining Rings (Inch Series)
  • ANSI/ASME B27.7 General purpose tapered and reduced cross section retaining rings, Metric

3. リテイニングリング用工具

リテイニングリング_図4

図4. リテイニングリング用プライヤー

リテイニングリングの取り付け・取り外しは比較的容易な作業で行えます。C形や丸型の作業には、専用のプライヤーが必要で、軸用と穴用があります。

スパイラル形のリテイニングリングは、特に専用工具なしで取り付け・取り外し作業が可能です。

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