ゆるみ止めナット

ゆるみ止めナットとは

ゆるみ止めナット

ゆるみ止めナット (英: Lock nut) とは、ゆるみを防ぐ機能や機構を備えたナットです。

一般的にロックナットとも呼ばれています。締め付けられたナットは、振動や衝撃・熱膨張などが原因で、ゆるみが発生することがあります。そのため、ねじのゆるみ防止方法は様々です。

例えば、ナットを2個重ねて使用するダブルナットや、ナットと被締め付け物の間にスプリングワッシャや歯付きワッシャを挟み込む方法、ねじ部に接着剤などを塗布する方法などなあります。これに対して、ゆるみ止めナットはナット1部品のみでゆるみを防止することが可能で、簡単に対策・施工ができる点がメリットです。

ゆるみ止めナットの使用用途

ゆるみ止めナット_図1

図1. ゆるみ止めナットの使用例

ゆるみ止めナットは、ボルト・ナットがゆるむことで損傷や事故を起こすような箇所で使用されています。具体的な例として、自動車や航空機、鉄道の車両・橋梁・建築物が挙げられます。ボルト・ナットのゆるみによる脱落で、損傷や事故が起こる可能性がある製品が大半です。

その他、公園の遊戯施設のブランコチェーン吊り軸部や、ジムのトレーニングマシンのフレーム固定部などにも使用されています。

ゆるみ止めナットの原理

ゆるみ止めナット_図2

図2. ねじによる締め付けとゆるみの原理

ボルト・ナットで被締め付け物を締め付けると、被締結物に圧縮力 (挟み込まれる力) 、ボルト軸部には被締結物から反発する引張力がかかります。この引張力によりボルト・ナットの座面 (被締め付けと接している面) と被締め付け物の間には摩擦力が発生し、ねじは固定されます。

この状態で下記の3つの摩擦力が働き相互に作用し合っています。

  • おねじとめねじ間の摩擦力
  • 被締結物間の摩擦力
  • ボルト・ナット座面と被締結物間の摩擦力

この摩擦力が何らかの原因で失われることを、「ねじがゆるむ」と言います。下記に例を示します。

  • ボルト・ナット座面、もしくは座面に接している被締結物表面の歪みや凹みにより摩擦力が低下
  • 振動で軸力が低下し、おねじとめねじの摩擦力が低下
  • おねじとめねじ間に油などの潤滑性物質が侵入し摩擦力が低下

ゆるみ止めナットの種類

ゆるみ止めナット_図3

図3. ゆるみ止めナットの種類

ゆるみ止めナットは、形状やゆるみ止め方法などにより、いくつか種類あります。それぞれに特徴と適した用途があるため、ゆるみの原因によって使い分けることが多説です。

ゆるみ止めナットの形状は、下記図4、5を参照してください。

ゆるみ止めナット_図4

図4. ゆるみ止めナットの種類と形状 (1)

ゆるみ止めナット_図5

図5. ゆるみ止めナットの種類と形状 (2)

ゆるみ止めナットのその他情報

1. くさびの原理の応用

ゆるみ止めナット_図6

図6.くさびの原理

前述したような「ねじのゆるみ」が発生しないように、ゆるみ止めナットはくさびの原理を応用しています。

2つのナット穴の中心軸を偏心させ、ナット同士は円錐状の凹凸はめ込み形状でナットを締め付けることにより、相互の円錐面にくさびの原理で大きな摩擦力を発生させ、ねじをゆるみにくくしています。製品例は「ハードロックナット」で、繰り返し使用することが可能です。

2. ねじ部との摩擦力の向上

ゆるみ止めナット_図7

図7. フリクションリングロックナットの原理

ナット上面に金属性のバネ効果のあるリングが取り付けられ、ボルトのオスねじ部に接触し摩擦力を高めることで、ゆるみ止め効果が発生します。一般的には、「フリクションリングロックナット」で、製品例は「Uナット」と呼ばれています。

フリクションリングロックナットは、耐熱・耐震性に優れています。また、ナット上面にナイロン製のリングが取り付けられ、締め付けることでナイロンリングとオスねじが接触し、その部分の摩擦力を高める、ゆるみ止め効果が発生します。

製品例として、「ナイロンインサートロックナット」があります。その他、座面の摩擦力を高めた緩み止めの「フランジナット」や、ナットとボルトを貫通するピンで固定し緩み止めの「溝付きナット」なども挙げられます。

参考文献
https://hardlock.co.jp/technical-info/why-hardlock/principle/
https://www.lockfastener.com/product/product_01/

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