ワイヤーカット

ワイヤーカットとは

ワイヤーカット (英: wire cut electric discharge machining) とは、ワイヤーと加工物との間の放電現象による高熱で加工物を溶かして切断する加工方法です。

正式にはワイヤー放電加工と呼びます。ワイヤーカットは、導電性のあるほとんどの金属が加工可能です。板厚が薄いアルミ板から、超硬素材の厚さ50mmまでの加工ができます。

加工精度が高く、複雑な形状の加工することも可能であり、精密部品の加工に適しています。

ワイヤーカットの使用用途

ワイヤーカットは、素材の硬さに関係なく、導電性のあるものであれば、種類を問わず高精度で加工ができます。

切削では困難な鋼板、ステンレス板、銅板、アルミ板などの薄い金属板の加工から、焼入鋼・超硬・ステンレス・真鍮・アルミ・インコネル・ダイス・多結晶ダイヤなどの超硬素材まで、ワイヤーカットが可能です。

ワイヤーカットの原理

ワイヤーカットによる加工は、まず加工槽に加工液である純水や油などを満たし、加工物を液中に固定します。そして、電極に真鍮やタングステン等の細いワイヤーを使用し、ワイヤーを走らせながら、ワイヤーと加工物の間の放電爆発を繰り返し発生させます。パルス電流の放電による高熱で加工物金属を溶解させ、加工物と非接触で切断します。

ワイヤーカットに使用されるワイヤーは、直径0.1~0.3mmほどの真鍮製のものがよく使われます。真鍮は導電性に優れた素材であるためです。

加工時に発生する温度は、6,000~7,000℃に達します。また、加工槽の冷却装置が作動して水温を一定に保ち、素材の熱膨張・変形を防ぎます。

加工物の加工屑の排出と冷却を行うため、パルス電流を用います。加工物とワイヤー電極との隙間は、数10μm程度の近接状態に維持されます。

ワイヤーカットの種類

ワイヤーカットは、ワイヤー電極と加工物を冷却する方法で、さまざまな方式があります。

1. 噴流式ワイヤーカット

噴流式は、加工物及び電極に付着したスラグを、加工液を噴射して冷却及び除去する方式です。

2. 水中浸漬ワイヤーカット

加工物及び電極を純水内に置き、加工中に発生したスラグを加工液で冷却及び除去する方式です。 純水を使用する為、火災の心配もなく、現在主要な方式となっています。

3. 油槽浸漬ワイヤーカット

加工物及び電極を油内に置き、加工中に発生したスラグを加工液で冷却及び除去する方式です。

ワイヤーカットのその他情報

1. ワイヤーカットのメリット

高精度微細加工
ワイヤーカットは、µ精度での加工が可能です。研削盤と遜色ないほどの精度が出ます。加工物のスライス加工 、リングの半割加工 、ギアの半割加工などの切代が0.4mm以内の加工が容易です。

また、直線切断の他、円弧状の切断や複雑な形状にも対応できます。また、上下のワイヤーを別々に動かすことで、テーパー形状も可能です。

難削材加工
超硬金属 (鉄、コバルト等) や耐熱合金 (モリブテン等) などの切削加工が難しいものでも、素材の厚み・大きさ・硬さに関係なく、導電性があれば加工が可能です。

綺麗な仕上がり
ワイヤーカットは、バリが発生せず、きれいな仕上がりが得られます。バリ除去の工程が不要のため、工程を短縮できます。

非接触加工
試験片などの用途で、切削加工すると残留応力が残るが、ワイヤーカットは非接触加工であるため、加工物に対する負荷が発生しません。また、水中で加工するため熱変異もわずかです。

切削工具が不要
ワイヤーカットは、切削加工に使用する工具類が不要です。切削工具に比べ安価なワイヤーを使うので、工具交換の手間が無く、消耗品のコストも低減できます。

2. ワイヤーカットのデメリット

加工速度が遅い
ワイヤーカットは、加工物を少しずつ溶かして切断するので、加工速度が切削加工と比較して遅い短所があります。1分当たり数mm程度です。

有底加工物が不可
ワイヤーカットのワイヤーが加工物を貫通して加工するので、底のあるものは加工不可です。切断と切り抜きに特化した加工機と言えます。放電加工で底のある加工物を加工する場合は、型彫放電加工機を使用します。

導電性が必須
導電性がない加工物は、ワイヤーカットでは、加工不可です。

水平方向は加工不可
ワイヤーは垂直方向に走行するので、水平方向の加工はできません。

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