プラズマ滅菌器

プラズマ滅菌器とは

プラズマ滅菌器のイメージ

図1. プラズマ滅菌器のイメージ

プラズマ滅菌器とは、過酸化水素のガスと高周波発生装置を組み合わせて低温プラズマを発生させ、プラズマ中に生じたフリーラジカルの作用により、細菌などの微生物を死滅させる装置です。

高い殺菌効率を持つことに加え、短時間で工程を完了できるメリットがあり、さらに工程後は水となることから安全性にも優れています。本体の設置には給水や排水といった設備が不要です。

そのため、電源の供給によりただちに使用することができます。また、プラズマ滅菌器はオートクレーブなどと違って低温の装置であり、高圧・高温蒸気などで滅菌できない物であっても、適用することが可能です。 「過酸化水素ガスプラズマ滅菌器」と呼ばれる場合もあります。

プラズマ滅菌器の使用用途

プラズマ滅菌器は、金属製品、プラスチック製品、ガラス製品などの滅菌が可能です。特に、熱に弱くオートクレーブなどの高圧蒸気滅菌を使用することができない器材などの滅菌に利用されています。

1. 医療分野

医療分野においては、眼内レンズ、人工関節などのメンテナンス前滅菌や、内視鏡、手術器材など医療器材のメンテナンス前滅菌に用いられています。内視鏡手術などで使用する内視鏡管や、超音波ガイドで用いるプローブは、使用頻度も高いため効率的に滅菌する必要があります。

従来法にはエチレンガスを使った滅菌手法や浸漬による消毒方法がありますが、エチレンガスの毒性回避や滅菌時間の短縮といった課題がありました。プラズマ滅菌器であれば安全性も高く、滅菌時間の短縮も実現することができます。

2. 化学分野

化学分野においては、前述の医療分野に関連して、人工臓器、医療器材などの素材の研究開発に用いられています。その他では、バイオクリーンルーム施設用機材の滅菌などの用途があります。

3. 畜産分野

畜産分野においては、人工受精器材の滅菌や、SPF動物施設用機材の滅菌などの用途があります。

プラズマ滅菌器の原理

プラズマ滅菌器によるプラズマ化の機構

図2. プラズマ滅菌器によるプラズマ化の機構

プラズマ滅菌器は、過酸化水素ガスに対して、高周波放電する手法が一般的です。具体的には、以下の手順で滅菌が行われています。

  1. 真空引きした滅菌チャンバー内に過酸化水素蒸気を拡散させる
  2. 過酸化水素分子を低温プラズマ状態に電磁励起させる
  3. プラズマ化により生じたフリーラジカルによって滅菌される

一回の装置稼働の間に、過酸化水素蒸気の拡散とプラズマによる滅菌を何サイクルか繰り返すことが一般的です。金属製品、プラスチック製品、ガラス製品などへの滅菌に適しています。

プラズマ滅菌器の種類

プラズマ滅菌器は、小型 (チャンバー容量30L前後) 、中型 (チャンバー容量80L前後) 、大型 (チャンバー容量140L前後) など、様々な大きさの種類があります 。また、製品によって滅菌時間も異なっており、滅菌時間が50分前後や70分前後の製品がある一方、最短では20分前後や30分前後で滅菌完了する製品もあります。用途に合わせて適切なものを用いることが必要です。

過酸化水素だけでなく過酢酸など他の薬剤も添加してプラズマ化することにより、より効果を高めている装置もあります。過酢酸をプラズマ化することにより得られるラジカルは、ペルヒドロキシルラジカル・OOHや・CH3COなどです。

プラズマ滅菌器のその他情報

1. プラズマ滅菌器の安全性

プラズマ化で生成したラジカルの分解

図3. プラズマ化で生成したラジカルの分解

過酸化水素やプラズマ化によって生成するラジカルは、残留性がありません。滅菌終了時には水と酸素に分解されるため、プラズマ化による滅菌は安全な方法です。

また、滅菌サイクルは、全ての段階が低温乾燥環境で作動するので、熱や湿気に敏感な適合器材を破損することがありません。

2. プラズマ滅菌器に適さない材質

プラズマ滅菌器は、リネン、ガーゼ、綿、紙、段ボール、木などのセルロース類や、発砲スチロール、粉体、液体、などの滅菌には適していません。

参考文献
https://www.yamato-net.co.jp/word/21/
https://oici.jp/file/285-8.pdf

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