フィラメント

フィラメントとは

フィラメントとは、非常に長い連続した繊維のことです。

繊維素系繊維や合成繊維を長繊維と呼び、ナイロン、人絹、生糸のような紡出した繊維は無限に長い糸が得られるため、この単繊維をフィラメントと呼んでいます。その一方で綿のような短繊維から構成されるものはステープル (英: staple) といいます。

化学繊維では最初の工程で紡糸してフィラメントが作られ、紡出の際の繊維の太さは用途によって異なり、一般的に3〜20デニールぐらいが多いです。適した熱処理などを施して羊毛のように加工して使われ、編物用や織物用の原糸の場合にはそのままリールに取って処理せずに用いる場合もあります。フィラメントからなる糸はフィラメント糸と呼ばれています。

人絹糸はモノフィラメント (英: monofilament) とマルチフィラメント (英: multifilament) に分類可能です。モノフィラメントは1本の単繊維から構成されたもので、モノフィル (英: monofil) とも呼ばれます。マルチフィラメントは通常よりも繊維が細い単繊維を用いて単繊維と同じ太さにしたもので、マルチ (英: multi) と略される場合もあります。

フィラメントの使用用途

衣類を代表とする幅広い分野で用いられます。具体例としてスポーツ用品、産業資材、高密度織物が挙げられます。サッカーやバレーボールのネット、テニスラケットのガット、釣り糸などに利用されており、数多くのスポーツ用品に使用可能です。自転車やゴルフクラブのシャフトにも使用される場合もあり、椅子やテントなどのアウトドア用品の生地にも使われます。

また強度があり安定した品質で生産できるため、ネット、ロープ、ワイヤー、ケーブル、フィルター、電線のような産業資材に使用されています。高強度かつ軽量な炭素繊維もフィラメントで用いられる場合が多く、ロケットや飛行機の部品のような非常に強度が必要な部分にも利用可能です。

さらにフィラメント糸は細くしやすくて目が細かい高密度の織物を作れるため、傘やロールスクリーンなどにも使われています。高密度の織物は糸と糸の隙間が少なくなり、光や水の透過性が低いです。

フィラメントの性質

糸の表面は平滑で部分的なバラつきが少ないため、滑らかな生地の表面を安定して作れます。紡糸時には酸化チタンのような艶消し剤を混ぜなければ光沢があり、上品で高級感がある印象を与えます。

短繊維のスパン糸と比べて細い糸を作りやすく目が細かくて薄い生地を作れるため、衣類以外の用途でも使用可能です。糸に強度が必要な場合にもフィラメント糸が向いており、高強度の繊維を使用してモノフィラメントにすると強度が大きく向上します。

フィラメントの種類

モノフィラメントは1本のフィラメントで構成されています。主に素材にはポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンのような合成繊維が使用されます。

マルチフィラメントは複数の長繊維で構成されています。マルチフィラメントの中でもフィラメントの数が多い糸をハイマルチフィラメントと呼びます。マルチフィラメント糸はマイクロファイバー (英: microfiber) に該当する場合もあり、紡糸によってマイクロファイバー糸を作れます。

フィラメントの選び方

1. モノフィラメント

モノフィラメントは1本の繊維が太く強度が高いため、ハリのある生地に用いられます。1本のフィラメントからなるため、糸の表面が毛羽立つこともありません。テニスのラケットに張られたガットのほか、重たい魚を釣り上げるための釣り糸にも使われます。

独特の光沢感があり糸の透明性が高いため、糸自体に染料を混ぜ込んで原着糸にでき、酸化チタンを混ぜ込めば光沢感を消せます。そのためアパレル製品の縫製の糸に使用可能です。透け感がある生地を作りやすく、レイヤー用や夏服に適しています。ただし紫外線の透過率が高く、透け感のある服で長時間紫外線を浴びると長袖でも肌が焼けやすいです。

糸自体が太くて硬く、皮膚に当たると痒みや痛みを感じる可能性もあります。直径が30μm以上では皮膚への刺激が強すぎるためアパレル製品への使用は避けるべきです。

2. マルチフィラメント

マルチフィラメントはやわらかくてしなやかな風合いの生地が作れます。肌触りが良く、糸を構成しているフィラメントの数が多いほど生地はやわらかくなります。細い繊維が集まっているとシワにもなりにくいです。

繊維同士の隙間が埋まっており、光が真っ直ぐに進まず屈折するため白っぽい糸に仕上がり、生地の透け感はありません。紫外線のカットに有効で、とくに黒や濃色は紫外線のカット率が高いです。防風効果も高いため防風ジャケットなどにも使用されます。ふくらみ感があり、風合いの良い生地が作れて、生地を垂らせば自然にひだが入るような落ち感やドレープ性もあります。

モノフィラメントよりも強度が低く埃が表面に吸着しやすいですが、この性質を利用して画面を拭く素材やメガネ拭きとして活用可能です。

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