ワイヤ放電加工機

ワイヤ放電加工機とは

ワイヤー放電加工機とは、水や油等の液体の中で電極となるワイヤーに通電させることで発生する液中放電現象により加工材料の加工を行う工作機械です。

通電させたワイヤーは液体の中で火花を起こし、熱によって溶融した金属が液体により冷却・飛散を繰り返すことで、加工材料の外形部を形成していきます。加工用のワイヤーには、直径が0.05~0.3mm程度の極細の真鍮 (黄銅) ワイヤーが使われています。

また、加工に使用するワイヤーから電気を放電させるだけで加工材料には直接接触しない非接触での加工のため、電気を通す性質を持つ材料であれば、原理的にはどんなに硬い材料でも加工できるという点が特徴です。

ワイヤ放電加工機の使用用途

ワイヤ放電加工機は、非常に硬い材料を精密に加工する必要がある場合に用いられます。具体的には、プレス金型の製作や超硬工具の刃先加工などです。

ワイヤ放電加工機は、電気を通す素材であればなんでも加工できます。例として、超硬合金チタン、ステンレス、モリブデン、インコネルなどが挙げられます。ただし、加工対象の大きさや素材により、加工時間が異なる点に注意が必要です。

ワイヤ放電加工機の原理

ワイヤ放電加工は、加工材料を装置の加工液に浸した後、以下のような流れで行われます。

  1. 加工液内で、絶縁状態にあるワイヤと加工材料が接近する。
  2. 火花放電を開始し、パルス電流が流れることで、何千度もの温度が発生し、加工材料が溶ける。
  3. 発生した高温によって加工液が水蒸気爆発を起こし、この衝撃で溶けた金属が吹き飛ばされ、除去される。
  4. 除去されて加工材料にできた凹部分に水が入り込んで冷却される。

上記の流れを加工したい形状に沿って繰り返すことで、ワイヤ放電加工による加工が行われます。「どんなに硬い材料でも加工可能」、「精密な加工が加工が可能」といった利点がありますが、一方で、上記のような加工方法となるため、基本的に加工速度は遅く、大量生産には不向きです。

また、底部分を残した加工や水平方向の加工はできないという欠点もあります。

ワイヤ放電加工機の特徴

ワイヤ放電加工機の特徴は、主に以下の3つがあります。

1. 様々な形状の加工が高精度で可能

ワイヤ放電加工機は、あらかじめ登録したプログラムに沿って極細のワイヤで加工を行うため、複雑な形状でも高精度で加工することができます。その特徴を活かした例が、微細なギアの加工です。

ギアは部品としての特性上、「軸穴の形状が真円に近いこと」「歯先形状が正しいこと」など、加工精度がギアの性能差に繋がりやすいです。微細ギアでは、φ0.05mm以下の寸法精度での加工が必要となることがあります。しかし、切削加工などの通常の加工方法では、この精度を実現するのは難しいです。

これに対し、ワイヤ放電加工の場合は極細のワイヤを用いるため、ギア中心部の穴や歯先形状なども寸法通りに加工することができます。

2. 難削材の加工が可能

放電時の電気エネルギーで加工材料を切断していくため、導電性の材質であればどれだけ硬くても加工できます。この特徴を活かした例が、超精密プレス型加工です。プレス型は、プレス加工時に非常に高い圧力がかかるため、金型の材料として硬度の高い金属素材を使用します。

切削加工などの通常の加工方法では、複雑な形状を高い精度での加工することが難しいため、ワイヤ放電加工による切断加工が用いられています。

3. 加工材料に外力がかからない

ワイヤ放電加工は非接触で加工するため、加工材料に負荷がかかりません。そのため、め切削・切断加工と比べ、切断面にバリが発生せず、面取りの作業が不要になります。

ワイヤ放電加工機の構造

ワイヤ放電加工機の構造は、以下のもので構成されています。

  • ワイヤ
  • ワイヤを送り出す駆動装置
  • 加工材料を設置するテーブル
  • 加工液を貯める加工槽
  • 脱イオン装置
  • 電源ユニット
  • NC装置

放電するための回路はコンデンサー放電回路とトランジスター放電回路の2種類に分かれており、トランジスター放電回路はコンデンサー放電回路と比較して、放電時の電気エネルギーを制御することが可能です。

出力を大きくすると加工速度が向上しますが、切断部の面粗さが粗くなります。反対に小さくすると加工速度は遅くなりますが、面粗さは細かくなります。 

参考文献
https://seizotimes.com/
https://bisaikakou.net/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です