ヘマトクリット毛細管とは
ヘマトクリット毛細管とは、血液検査に用いられる器具の一つです。
血液は、細胞性成分である血球 (酸素輸送に関与する赤血球や身体の免疫防御に関与する白血球) 及び血小板、並びにこれらを浮遊させる液性成分である血漿で構成されています。健康な人の血液では、細胞成分の大部分は赤血球です。赤血球には血液の赤色を呈するヘモグロビン (Hb) が含まれており、酸素結合能を持っています。
血漿は主に水 (約93%) から構成されており、その他の構成要素は塩類、各種タンパク質、脂質、糖 (グルコースなど) などです。血液検査で血液に占める赤血球の体積の割合 (ヘマトクリット) を調べることがあります。例えば、貧血の指標とする場合です。貧血は血液が薄くなった状態を指し、その指標としてヘマトクリットが用いられています。
このヘマトクリットを測定する器具が、ヘマトクリット毛細管です。
ヘマトクリット毛細管の使用用途
ヘマトクリット毛細管は、主に血液検査におけるヘマトクリットの測定に用いられます。また、動物実験などで少量の血漿を得る目的に使われることもあります。
1. ヘマトクリットの測定
ヘマトクリットの測定は、貧血や脱水、出血、その他の内科的・外科的疾患が疑われる場合に行われることがあります。低ヘマトクリットは、循環赤血球の数が少ないことを反映しており、酸素運搬能力の低下または過湿の指標となります。
低ヘマトクリット(貧血)を引き起こす状態の例としては、以下のものがあります。
- 内出血または外出血 – 出血
- 慢性腎不全の合併症-腎臓病
- 悪性貧血~ビタミンB12欠乏症
- 溶血 – 輸血反応に伴う
- 自己免疫疾患や骨髄不全
高いヘマトクリットは、赤血球数の絶対的な増加、または血漿量の減少を反映している場合があります。
- 重度の脱水 – 例:火傷、下痢、または利尿剤の過剰使用の場合
- 赤血球過剰症-赤血球過剰症
- ウイルス性多血症-血球の異常な増加
- ヘマクロマトーシス – 遺伝性の鉄代謝障害
- 赤血球の生成を促す外因性エリスロポアチン(EPO)の過剰摂取の指標
2. 動物実験
ごく少量の血液を採取でき、遠心分離により血漿が得られる特徴から、主に動物から微量の血漿を得るときに用いられることがあります (マイクロサンプリング) 。
ヘマトクリット毛細管の原理
ヘマトクリット毛細管は、よく使われるものは、内側がヘパリン処理された毛細管 (キャピラリーチューブ) です。未処理のもの (プレイン) もあります。
採取した血液に毛細管の一端を接すると、毛細管現象によって血液が毛細管に吸い込まれます。吸い上げると同時に、ヘパリン処理のものはヘパリンにより抗凝固処理がされるのです。
この毛細管を遠心分離機にかけ、血球と血漿を分離します。赤色に見える血球部分 (赤血球カラム) の長さと、無色~淡黄色 (ヒトの場合) に見える血漿部分の長さから、ヘマトクリットを求めます。
ヘマトクリット毛細管のその他情報
1. ヘマトクリットの定義
ヘマトクリットの定義は、全血液量に対する赤血球の体積の比率であり、パックド・セル・ボリューム (PCV) とも呼ばれています。ヘパリン化した血液 (ヘパリンは抗凝固剤) を遠心分離すると、赤血球はチューブの底に詰まった状態になり、血漿は上部に透明な液体として残ります。この赤血球が詰まった体積と全血量の比がヘマトクリットです。
ヘマトクリットはパーセンテージまたは比率として報告されます。健康な成人では約40~48%ですが、新生児では60%に達することもあります。
以下は、ヘマトクリットを議論する際に関連する略語の要約です。
- Hct:ヘマトクリット
- ctHb:総ヘモグロビン濃度
- 赤血球 (RBC)
- MCV:平均細胞体積
- MCHC:平均冠状ヘモグロビン濃度
2. ヘマトクリットを測定する場合の使い方
シール
遠心分離する前に毛細管の一端をシールする必要があります。シールしなければ遠心力で血液が流れ出てしまうためです。毛細管をシールするには、専用のパテを使用します。
血液を吸いあげた後、一方の端を専用のパテに突き刺してパテを毛細管内部に食い込ませることで、毛細管の一端をシールします。シールした側を外側、すなわち遠心力がかかる向きにします。
スケールプレート
毛細管内の遠心分離された血液サンプルからヘマトクリットの値を得るためには、スケールプレートを参照します。充填された赤血球カラムの底部が最初に目盛り板の「0」の線に並び、次に血漿カラムの上部が「100%」の線に並ぶまで目盛りをサンプルの下に移動させます。
この状態で、赤血球カラムと血漿カラムの境目の数値を読み取ります。赤血球と血漿の間の層である白色の層は、約1%を占めますが、この層は赤血球側には含めません。
3. 微量採血器としての使い方
ガラス製毛細管を使用し、通常使用と同様に、血液採取しシールした毛細管を遠心分離します。ガラス製にするのは、途中で折る操作があるためです。遠心分離後、血球カラムと血漿の境目、やや血漿寄りにガラス切りで傷をつけ、毛細管を折ります。
折った毛細管の血漿側を回収容器 (マイクロチューブなど) に立て、遠心分離することで容器に血漿を回収することができるのです。この方法は折る操作が実施しにくいため、近年ではマイクロサンプリング専用の器具が開発されています。