シャント抵抗器とは
シャント抵抗器 (英: Shunt Resistor) とは、電気回路において電流の測定に使用する抵抗器です。
Shuntという言葉には「分流する」や「脇へそらす」といった意味があるため、シャント抵抗器は分流器とも呼ばれます。電流値確認やバッテリーの残量検知といった主に通電確認を行う際に活用する素子・部品です。シャント抵抗器は、電流を測定する信頼性の高い方法です。
シャント抵抗器にも電流が印可されるため、シャント抵抗器の抵抗値と電圧降下の関係を利用して正確な電流値を計算できます。また、高電流が流れる場所で使用できるのも特徴の1つです。
大電流回路では電線が太くなることが多いため、クランプ式の電流測定方法を使用することが困難な場合があります。通常は低抵抗なシャント抵抗器を使用することで、正確で信頼性の高い電流値を得られます。ただし、大電流が印可される回路にシャント抵抗器を使用すると、発熱量が多くなる場合があります。したがって、冷却装置などを検討することが必要です。
シャント抵抗器の使用用途
シャント抵抗器は電気回路で使用される素子・部品です。使用用途の一部を以下に示します。
1. 計装配線
代表的なシャント抵抗器は250Ωの抵抗器です。一般的なアナログ出力信号としては、DC4-20mAの電流信号が多く活用されます。電流信号のため、電圧降下の影響を受けにくい点から使用されることが多いです。
これに対して、入力信号としてはDC1-5Vの電圧信号を指定されることも多いです。したがって、DC4-20mAをDC1-5Vの電圧信号に変換するために、入力端子に250Ωを並列接続して使用します。
2. パワーエレクトロニクス
インバーターなどのパワーエレクトロニクス装置では、電流制御と監視が重要です。シャント抵抗器は電流の制御や過電流を検出することを目的に使用されます。インバーターでは、直流側からの電流を制御し、交流側の出力を制御します。
また、産業用整流器では、電流測定に広く使用されます。産業用整流器は電車や電解槽・メッキ槽への直流通電に使用される装置です。数万Aの電流を作り出すことも珍しくないため、高電流を測定可能なシャント抵抗器を使用します。
3. 電気自動車
電気自動車においても、シャント抵抗器が電流制御に使用されることが多いです。バッテリーからモーターへの電力供給を制御し、適切な電流の流れを確保します。また、急速充電時の電流制限やバッテリーの保護にも役立ちます。
シャント抵抗器の原理
シャント抵抗の基本原理はオームの法則です。オームの法則によれば、抵抗器に流れる電流 (I) は、抵抗器の抵抗値 (R) と抵抗器にかかる電圧 (V) の比例関係にあります。
シャント抵抗器は、測定対象の電流が流れる回路に直列に接続されることが多いです。そのため、シャント抵抗器にも同じ電流が流れます。一般的にはシャント抵抗器の抵抗値は既知であり、電圧計などでシャント抵抗器に印加された電圧を測定することで電流値の計算が可能です。
シャント抵抗器の種類
シャント抵抗器は以下のような種類が存在します。
1. ワイヤ型シャント抵抗器
一般的な形状のシャント抵抗器であり、抵抗性の高い金属ワイヤが使用されることが多いです。金属ワイヤは細く長い形状で巻かれており、低い抵抗値を実現します。小さな電流値から高電流値まで様々な範囲で使用可能です。
2. ストリップシャント抵抗器
フラットな金属ストリップが使用されるシャント抵抗器です。ワイヤシャント抵抗器と同様に低い抵抗値を持ち、高い電流を扱うことができます。ストリップシャント抵抗器は熱効率が高い上に放熱性に優れているため、高負荷状態での安定した動作が可能です。
3. メタルフィルムシャント抵抗器
金属フィルムを使用して製造されたシャント抵抗器です。金属フィルムが基板上に堆積され、抵抗パターンが形成されます。メタルフィルムシャント抵抗器は高い精度と安定性を持ち、温度変化に対しても比較的安定した特性を示します。
参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/resistors/r_what14
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/shunt-resistor-guide
https://www.akaneohm.com/column/current_sense/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/4-20ma/selection.jsp