X線CT装置とは
X線CT装置とは、X線を照射して物体内部の材質や構造を調べる装置です。
大きく医療用と産業用に分けられます。医療用のX線CT装置では、頭から足までの骨や筋肉・血管などの組織や内臓を診ることができます。
X線CT装置の使用用途
X線CT装置は、大きく医療用と産業用の2種類です。順番に解説します。
1. 医療用X線CT装置
医療用X線CT装置は、人体を透過したX線を検出して人体内部の情報を得ており、病状を判断するために使用されます。なお、医療用X線CT装置には、人体をそのまま観察する単純CTと、血管内に造影剤を投入して観察する造影CTがあり、目的に応じて選択します。
2. 産業用X線CT装置
産業用X線CT装置は、物質の非破壊検査で多く利用されており、このような産業用X線CT装置は「観察用CT」と呼ばれています。非破壊検査の具体例としては、半導体パッケージなどの形状評価および欠陥調査、錠剤の内部構造評価、炭素繊維強化プラスチックの形状や繊維配向評価などです。
近年、産業用X線CT装置では「測定用CT」も多く開発されています。「測定用CT」は、「観察用CT」と同様に非破壊検査が行えるとともに、サイズの測定やCADによるデータ解析ができるのが特徴です。
この「測定用CT」を利用すれば、対象物の三次元形状の全取得や高精度な形状測定、高速検査および測定などが可能です。
X線CT装置の原理
X線CT装置には、医療用と産業用があります。物体に360度全方向からX線を照射して透過および吸収X線量を調べるという点ではどちらも同じですが、医療用と産業用では撮影方法が異なります。
1. 医療用X線CT装置
医療用X線CT装置は、ドーナツ状のガントリと、ガントリの中心穴に入り込み人体が寝た状態で中心穴内をゆっくりと移動するベッドをもつのが特徴です。ガントリの内部には中心穴を挟んで、X線を照射するX線管と、X線管から照射されたX線を検出する検出器が配されています。
ガントリの中心穴内にベッドに乗った人体が入ると、X線管から照射されたX線は一部人体に吸収され、残りは透過して検出器により検出される仕組みです。このとき、ガントリはベッドの周りを回転し、360度方向からX線を照射して透過したX線を検出しています。
そのため、人体を横方向に輪切りにした360度方向のデータが得られ、このデータからコンピューターが人体の断面像を構成しています。この医療用X線CT装置ではヘリカルスキャンが一般的です。
ヘリカルスキャンとは、ベッドがガントリの中心穴内をゆっくりと移動しながら連続してX線照射と検出を行う撮影方法です。これにより、人体の横方向の輪切り画像が身長方向の縦方向に連続して得られます。
2. 産業用X線CT装置
産業用X線CT装置では医療用X線CTとは異なり、X線管と検出器を固定する代わりに調査対象である物質が回転するのが特徴です。産業用X線CT装置には横照射型と縦照射型があります。
横照射型はX線管、物質、検出器を横に並べた構成をもち、縦照射型ではこれらを縦に並べています。調査対象物質や調査する場所に応じて、適した方を選択します。
X線CT装置のその他情報
1. マルチスライス医療用X線CT装置
医療用X線CT装置には、検出器がベッドの移動方向に複数列配されたマルチスライス医療用X線CT装置があります。X線CT装置の原理で解説した医療用X線CT装置は、シングルスライスと呼ばれています。
このシングルスライスX線CT装置では、検出器がベッドの移動方向と直交する方向、すなわち人間にとっての横方向に複数個配列されており、ベッドの移動方向には一列分配されている構造です。このため、ガントリが1回転すると、1枚の断面図のみ構成されます。
これに対し、マルチスライス医療用X線CT装置では、検出器がベッドの移動方向に複数列配されておりガントリの1回転により複数枚の断面図の取得が可能です。そのため、短時間で撮影が可能となり、人体への負担を減らせます。また、これとヘリカルスキャンを組み合わせることで3D画像も構成できます。
2. X線CT装置の3次元画像処理方法
X線CT装置の技術として注目されている3次元画像処理の方法としては、以下の3種類が用いられています。
多断面再構成法 (MPR)
多断面再構成法 (MPR) は、三次元のデータから人間の横方向の断面以外に、人間の身長方向の断面である冠状断面・矢状断面などの画像を構築できるのが特徴です。この方法は現在のCT三次元処理で最も使用されています。
最大値投影法 (MIP)
最大値投影法 (MIP) では、三次元のデータに対して、任意の視点を設定します。そして、その視点と投影面を結ぶ経路にある最大値を2次元面に投影します。
画像ノイズの影響が小さいことや低コントラストの画像であってもコントラストよく出力ができるのが特徴です。しかしながら、最大値以外は画像に反映されないため、前後の位置を正しく把握したい場合は何種類かの角度が異なる観察が必要です。
ボリュームレンダリング法 (VR)
ボリュームレンダリング法 (VR) では、目的とする領域のCT値の上限/下限を設定します。そして、設定した範囲に不透明に対応するパラメータを追加して陰影処理を行い、画像を構成しています。血管などの3D画像に好適な方法です。
参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/xxct1.html
https://www.nims.go.jp/personal/XrayCT/about/index.html
https://www.mst.or.jp/method/tabid/1341/Default.aspx
https://jp.medical.canon/general/CT_construction
https://www.innervision.co.jp/ressources/pdf/innervision2013/iv201311_028.pdf
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https://www.an.shimadzu.co.jp/ndi/first_x/first03.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mit/27/4/27_258/_pdf