スポットクーラーとは
スポットクーラーとは、取り込んだ空気を内部で冷却して送風する局所的な空調機器のことです。
冷風機、スポットエアコン、ポータブルクーラーとも呼ばれます。一般的なエアコンはエリア全体を冷却しますが、スポットクーラーは一部のエリアだけを冷やすためエアコンよりも電気代を節約できます。工事不要で設置でき、窓や壁面に取り付ける窓用エアコンやルームエアコンが置けない場所でも使用可能です。
スポットクーラーには家庭用や業務用があります。家庭用はサイズがコンパクトで、持ち手やキャスターが付いた機種も多いです。卓上に設置可能な小型モデルもあり、排熱用ホースが長いため、移動しながら場所を選ばず使用できます。家庭用のコンセントにも対応している100V程度が一般的です。
それに対して、業務用の対応電圧は200Vが一般的で、家庭用よりも冷房能力が優れています。暑い場所をしっかり冷却できますが、家庭用よりも大きい場合が多いです。そのため屋外や工場での使用に適しています。
スポットクーラーはエアコンのような涼しさや扇風機のような手軽さを兼ね備えています。しかし一般的なクーラーと比較すると、機体がコンパクトなため、冷房能力も小さいです。家庭用クーラーの場合には部屋が涼しいと消費電力は大きく低下しますが、スポットクーラーには温度設定はなく、消費電力がほぼ一定です。使用状況次第ではスポットクーラーの方が、家庭用クーラーより総合的な消費電力が多いときもあります。
スポットクーラーの使用用途
エアコンでは大規模なエリアでの効率的な冷房が難しく、天井が高くて広い空間に冷房装置を設置すると莫大な費用が必要です。その一方でスポットクーラーは、冷房装置を置けない場所や全体の冷房が困難な場所でも、冷気を集中的に送る際に優れています。具体例として、工場、倉庫、組み立てライン、機械室、クリーニング店、ゴルフ練習場、体育館などが挙げられます。
スポットクーラーは一般家庭用のクーラーとしても利用可能です。例えば、部分的にケージ内のペットや作業中のガレージを冷却したり、料理中、風呂上り、アイロンがけのように、部屋全体を冷やす必要がない場合に適しています。
大型のスポットクーラーであれば、工場の作業員や飲食店厨房の調理人の近くだけを冷やすためによく利用されます。夏の工場内は、熱溜まりを建屋外へ排熱しても、熱源が多いため非常に暑いです。スポットクーラーによって夏でも快適に作業ができ、作業員の発汗量も減って、職場環境が改善されます。警備員の詰め所や駐車場の管理人室のほか、屋外での作業や販売に従事する場合でも使用可能です。
スポットクーラーの構造
スポットクーラーは小型のルームエアコンや窓用クーラーに似ています。熱交換器やコンプレッサーがあり、周りの空気をファンで取り込みます。正面から冷風を放出し、裏側から熱風を排出するため、冷えるのは正面の狭い範囲だけです。背面からは熱風が出ているため、締め切った屋内で使うと、室温が上がります。したがってエアコン代わりとして、リビングダイニングなどの広い空間での使用には不向きです。
冷却器から生じる水はタンクに溜まります。満水になると停まるため、水の処理が必要です。一般的なクーラーと同様に、定期的にフィルターを掃除する必要があり、冷風取り入れ口や熱風取り入れ口にフィルターがあります。定期的に清掃しない場合には、ホコリが放熱器に溜まって、性能の低下に繋がります。
スポットクーラーの種類
スポットクーラーは冷風を出すだけでなく、除湿、暖房、衣類乾燥などの機能を併せ持ったタイプもあります。多機能な製品を選べば、小型のエアコンのように使用可能です。
また、特定の季節だけ用いる夏の扇風機や冬のストーブは片付ける必要がありますが、オールシーズン使用できる家電は便利です。さらに複数の部屋で用いるためにはエアコンは部屋の数だけ必要ですが、スポットクーラーは1台でも使い回せます。
スポットクーラーの選び方
締め切った室内全体を冷却できる通常のクーラーに対して、スポットクーラーは開放された場所での使用に適しています。スポットクーラーには室外機がなく、熱風と冷風のいずれも本体から出るため、密閉した室内では熱風がこもるので注意が必要です。
防雨型のスポットクーラーを選べば、屋外のイベントなどで急な雨に遭遇したときにも役立ちます。ただし騒音や振動が大きいスポットクーラーもあるため、静音性の高さを確認する必要があります。家庭用のスポットクーラーの動作音は、静音性が高い製品では、静かな事務所の音と同じ50dB程度です。
水の気化熱を用いて冷却する装置は、冷風扇や水冷式冷風機と呼ばれています。スポットクーラーと冷風扇は原理や効果が全く異なり、冷風扇ではスポットクーラーや家庭用クーラーのような冷却効果が期待できません。ただし冷風扇は水を使用するため環境にやさしく、スポットクーラーよりも騒音や消費電力が小さい場合が多いです。