フライバックトランス

フライバックトランスとは

フライバックトランス (英: flyback trans) とは、フライバック方式のコンバータに用いられるトランスのことです。

絶縁型DCDCコンバータやACDCコンバータなど絶縁型スイッチング電源の回路方式の1種で、そのほかにもフォワード方式やLLC共振方式、プッシュプル方式などがあります。

フライバック方式では、電力変換の際にトランスへのエネルギーの蓄積と放出が繰り返し行われます。そのため、フライバックトランスには他の方式のトランスとは異なり、大きなエネルギーを蓄積する特性が必要です。

フライバックトランスの使用用途

フライバックトランスは、民生機器や産業機器の様々な用途で用いられるスイッチング電源回路のトランスに使用されています。この電源で扱うことができる電力は数十W程度であり、他の方式の絶縁型スイッチング電源に比べ、比較的小電力の用途に向いています。

一方で、入力電圧範囲が広いのが特徴です。電源回路構成がシンプルで部品点数が少なく、コストがかからないというメリットがあります。しかし、ピーク電流が大きくなるため、スイッチング素子や整流ダイオードなどの部品を選ぶ際には仕様に注意が必要です。

また、リップル電流が他の方式に比べて大きいので、平滑化コンデンサの容量を大きくしなければなりません。

フライバックトランスの原理

フライバックトランスは、トランスの1次側に電流が流れた際に充電し、電流が遮断されたのちトランスの2次側を介して放電することを基本としています。動作の原理上、トランスに電磁エネルギーを蓄積させることが特性面で非常に重要です。

フライバックトランスの一次側にスイッチング素子 (パワートランジスタパワーMOSFETなど) が接続され、二次側に整流用ダイオードを通して平滑化コンデンサが接続されています。トランスの一次側に励磁電流を流した際に、二次側の整流ダイオードがオフする向きに電圧が発生するように巻線の極性を反対にします。

スイッチング素子をオンにすると、トランスの一次側に励磁電流が流れ、トランス内に電磁エネルギーが蓄積されます。この状態でスイッチング素子をオフにすると、一次側の励磁電流が遮断され、二次側の電圧の向きが反転し、トランスに蓄積された電磁エネルギーが整流ダイオードを通して放出されます。これをコンデンサで平滑化することで直流電圧を出力することが可能です。

フライバックトランスには、大きな電磁エネルギーを蓄積させる必要があります。他の方式のようにエネルギーの伝送を目的とするトランスの場合、透磁率の高いコア材料を用いて結合係数を高くしますが、そのような材料は通常大きな電磁エネルギーを蓄積することができません。そこで、フライバックトランスでは、コアの一部にエアギャップを設けることで透磁率の低い箇所を作り、そのギャップにエネルギーを蓄積させています。

フライバックトランスのその他情報

1. フライバック型電源とフォワード型電源の違い

フライバック型電源はトランスに電磁エネルギーの蓄積が必要なため、比較的大きなトランスが必要であり、微小なギャップをコアの一部に設けることで透磁率を下げて電磁エネルギーを蓄積させます。一方でフォワード型電源は、トランスに電磁エネルギーの蓄積が不要なため、そのような微小ギャップは不要で、トランスを小さくすることが可能です。

また、フライバック型電源は、1次側と2次側の帰還回路の絶縁分離が不要で回路構成を非常にシンプルにできるのに対して、フォワード型電源は絶縁分離が必要で、出力からの電圧帰還回路を構成する必要があります。

2. フライバックトランスに用いられるフェライト材料

フライバックトランスは、その構成上AC-DCスイッチング電源に広く用いられますが、AC-DCスイッチング電源の損失の大きい箇所として、スイッチング用の半導体デバイスとトランスが挙げられます。高速なスイッチング動作時にトランス内では急激な磁束の変化を生じるために、トランスコアに鉄芯を用いると渦電流損失により発熱して使用できなくなります。

このため、高周波用のAC-DCスイッチング電源向けフライバックトランスには、そのコア材料としてフェライトを使用する場合が多いです。フェライトの特性は周波数や温度依存性を有するため、所望の動作速度に適したフェライト材をコアに用いたフライバックトランスを選定することが重要です。

参考文献
https://www.kamidenshi.co.jp/magazine/1256/
https://ednjapan.com/edn/articles/1206/11/news010.html
https://ednjapan.com/edn/articles/1003/01/news100_2.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です