ワイヤーカット治具とは
ワイヤーカット治具とは、ワイヤーカット放電加工機で加工する金属製のワークを加工機のステージにセットするための治具のことです。
ワイヤ放電加工機は、直径1mm以下の太さの細い金属製ワイヤーに高いパルス電圧をかけて、ワークの金属との間にアーク放電を連続して発生させ、金属を溶かしながら加工、切断する工作機械です。ワイヤ放電加工機を使うと鋼鉄のような硬い金属も加工できます。CADで設計した部品図のデータに従って、ステージが正確に動きながら加工を進めます。
ワイヤ放電加工機はこのように優れた加工性能を持つため、金型や工作機械の金属部品を製造する際によく使われます。ワイヤー加工法電機が高精度に加工を行うためには、ステージにX,Y,Z軸方向のいづれの方向に対しても寸法の狂いなくセットされ、加工開始から終了まで全くズレることなく保持されていなければなりません。
そのために、ワイヤーカット治具はワークを確実に保持しなければなりません。さらに、対象のワークが大きい場合や重い場合には、ワークを1つの治具で保持するのではなく、複数個の治具で1つのワークを保持します。その時、ワークの傾きや位置を調整するためには、ワイヤーカット治具同士が連携してワークの傾きを調整できる必要があります。
また、ワークの形や厚さ、材質は様々なので、ワイヤーカット治具がワークを挟むクリップ部もいくつかの種類や大きさが存在します。
ワイヤーカット治具の使用用途
ワイヤーカット治具は、ワイヤ放電加工機においてワークをステージにセットするための取り付け治具です。ワイヤーカット治具には、ワークを治具にセットした際にワークがステージに対してX-Y-Zの三軸で平行になるように調整のためのネジが付いています。
ワイヤーカット治具の原理
ワイヤ放電加工機は、機械の中心部付近に、内側がくり抜かれて外周部分だけが残った四角いテーブルのような枠の形をしたステージがあります。ステージの上面の4辺には、それぞれ金属性で細長い板状の治具バーが取り付けられています。治具バーには等間隔にネジ穴が切ってあり、ワイヤーカット治具はこのネジ穴を固定用に使います。
ワイヤーカット治具には様々な形状と大きさが存在しますが、いずれもワークをステージから中心方向に張りだす形で固定します。ステージの中央部付近には上部から、加工用の電極になるワイヤーが下りてきて、下部にあるホールに巻き取られて行きます。ワークには様々な大きさがあり、重さも形状も無限にあるので、ワイヤーカット治具の形状や大きさも様々です。
ワイヤーカット治具の種類
1. 単純な形をしたワイヤーカット治具
治具バーの穴の上に、受け側 (クリップの下側) の治具を置いて上から支柱となる棒を通して治具バーに固定し、受け治具の上にワークを乗せた状態で、上から固定治具 (クリップの上側) を支柱を通して降ろします。固定治具についているハンドルを回すことで、受け側の治具と、固定治具とでワークを固定します。
2. 少し複雑なワイヤーカット治具
水平方向に延びるアームを、治具バーのネジ穴を使ってねじ止めし、アームの先端に受け側と固定側の治具が付いています。上下の治具の付け根には高さ調整用のネジが付いており、このネジを廻すことで高さを微調整できるようになっています。
ワイヤーカット治具は、加工の間ワークがずれ動かないように保持していることと、加工を始める前にワークの位置決めと平行出しをするために、ワークの取り付けの微調整が行える機能を備える必要があります。ワークが大きくなると、X方向の治具バーに間隔をあけて2つの治具を取り付けて2点支持でワークを固定したり、さらにY方向の治具バーにもう1つ治具を付けて3点支持でワークを支えることもあります。
3. ワイヤーカット用平行出し治具
ワークの支持点が増えると、ワークの平行出し作業が難しくなり、ワークの取り付け作業にかかる時間が長くなります。この作業を簡単化するために、ワイヤーカット用平行出し治具も製品化されています。
ワイヤーカット用平行出し治具は、2つのネジ穴を使って治具バーに固定されます。ワイヤーカット用平行出し治具の先端部には、ネジ穴がいくつも並んで開いていて複数のワイヤーカット治具が取り付け可能な、ベースと言われる板を降り付けます。ワイヤーカット用治具は、このベースの様々な傾きの微調整ができるようになっています。ワイヤーカット用平行出し治具を使うと、ワークの取り付け作業にかかる時間を短縮できます。
ワイヤーカット治具の選び方
ワイヤーカット治具の先端部にあって、ワークを掴むクリップにも様々な形状のものがあります。単純な平板の板を掴む汎用的なものから、ワークの角や円形になったコーナー部を掴むものなど様々です。ワイヤー放電加工機を使いこなすにはワイヤーカット治具の選択も重要です。ワイヤーカット治具の選択に当たっては、カタログや仕様の入手にとどまらず、メーカーや取扱店との連携が必要となります。