DAコンバータとは
DAコンバータは、デジタル信号をアナログ信号に変換する電子回路です。
パソコンやタブレット、スマートフォン等のデジタル機器では様々な処理がデジタル信号で行われます。しかしその結果を音や光のような形で出力する場合、これらはアナログ量なのでデジタル信号からアナログ信号への変換を行う必要があります。
アナログ量は連続値であり、離散値であるデジタル量を厳密にアナログ量に変換するには無限の桁数が必要となってしまうので、DAコンバータからの出力値は必然的に近似値となります。逆に、アナログ量をデジタル量に変換する回路をADコンバータといいます。
DAコンバータの使用用途
DAコンバータは、アナログ信号を出力する必要のある全てのデジタル機器で用いられます。
スピーカを搭載したパソコン、スマートフォン、デジタルオーディオ、TVは勿論、スマートスピーカーに代表される音声合成機能を備えた機器にも搭載され、デジタルデータをアナログの音声信号に変換します。最近ではUSB接続などの外付けDAコンバータも開発されており、ハイレゾ音源など、高音質での音声出力のためにも使われています。
また、パソコンモニターやプロジェクタなどの一部の映像機器にはアナログデータを入力するVGA端子やRCA端子があり、DAコンバータによりデジタルデータから変換されたアナログ映像信号が入力されます。
産業用機器では、特に高精度の連続的な制御を必要とする場面等でDAコンバータから出力されるアナログ信号が必要となります。
DAコンバータの原理
DAコンバータの変換方式はいくつかありますが、最もシンプルでローコストな方式が抵抗分割方式です。抵抗ストリングスと呼ばれることもあります。
抵抗分割方式では、参照電圧とアースの間に2^n個の等価な抵抗を直列に接続し、抵抗間のノードを出力とすることで、参照電圧の1/2^nの整数倍の電圧を作ります。デジタル信号をデコードしてこの出力ノードのいずれかを選択することにより任意の電圧を出力することができます。このときの分解能はnによって決まり、nビットのデジタル信号をアナログ信号に変換することができることになります。
抵抗分割方式は非常にシンプルで単調増加性が確保されるため、線形性があり高精度である一方で、分解能を高めるためにビット数を増やすと回路規模は指数関数的に大きくなるというデメリットもあります。
抵抗分割方式以外の変換方式として、キャパシタを用いる方式、電流源を用いる方式、ローパスフィルターを用いる方式などがあります。
DAコンバーターのその他情報
1. DAコンバータ使用時の注意
DA変換の出力は原理的に離散値となるため、変換精度を上げても元のアナログ信号とは違ったものになります。この差がノイズとなり、アナログ信号の品質に影響します。また、DAコンバータの先に接続されるスピーカーなどの電子部品の品質もアナログ信号の品質に影響します。
このように、回路図のパラメータだけでは表せない部分が存在する場合もあり、全体のバランスを念頭に置いて使用部品を吟味し調整する必要があります。
2. DAコンバータの精度
DAコンバータは、産業用システム、IoTシステム、各種測定システム、各種メディアシステム等、様々なケースで利用されますが、各システムの高度化に伴ってより高精度のものが要求されています。
DAコンバータではいくつかの誤差が発生しますが、その主なものとしては下記のようなものがあります。
- オフセット誤差 (OE)
- ゲイン誤差 (GE)
- 積分非直線性誤差 (INL)
DAコンバータの精度はこれら3種類の誤差総てを含めて評価され、総合未修正誤差は (OE^2+GE^2+INL^2) の平方根で表されます。
3つの誤差のうち、OEとGEはシステム上で簡単なコードを使って較正することができますが、INLは一般的に複雑なコードとなり、誤差自体も関数で表せない誤差であるため、多くのパラメータをメモリ上に保管する必要があります。
また、較正コード自体がシステム全体に無視できない負荷を与える場合もあるため、INL誤差を抑えることが重要です。
参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/da-converters/da_what5
https://www.cqpub.co.jp/dwm/contents/0064/dwm006401200.pdf
http://www.phileweb.com/review/column/201709/19/553.html
https://ednjapan.com/edn/articles/1611/08/news012.html