CNT(カーボンナノチューブ)

CNTとは

CNT (英: Carbon Nanotube)  とは、炭素原子6個で作るベンゼン環が、X-Y平面状に均一に並んだ状態のシート状分子を、円筒状に丸めた3次元構造を持つ分子です。

カーボンナノチューブは、分子が炭素原子でできていること、分子1つの大きさがnmサイズであること、分子構造の立体的なモデルが筒状をしていることに由来します。

CNTは炭素原子の強力な結びつきでできた分子であり、大きさは0.4nmから50nm程度です。金属分子などと比較して、比重が非常に小さいにも関わらず、非常に強い引張強度や、非常に高い伝導性、熱伝導性、耐熱性など様々な優れた特性をもった物質と言われています。

CNTを単体若しくは数個単位から取り扱って、超微細な電子回路やメカトロニクスを開発しようという先端技術分野を、ナノテクノロジーと言います。CNTは筒の構造に種類があり、単純な1つの筒状になっているものを単層CNT、直径の異なる2つの筒が入れ子状態になっているものを二層CNT、さらに直径の異なる複数の筒が層状に重なったものを多層CNTと呼んでいます。

CNTの使用用途

CNTは優れた機械特性、電気特性をもつ素材として、単体としても、複合材としても幅広い分野での活用が期待されています。

実用化の面では、既存の工業用材料にCNTを添加剤として使う複合材料の分野で先行しています。樹脂に添加剤を混ぜて機能性を高める強化樹脂では、炭素繊維を添加剤として作られるカーボンファイバー・プラスチック (CFRP) が様々な製品に使われています。CFRPに添加剤としてCNTを使った素材が、既にテニスのラケットや自転車のフレームなどに使われています。このほかにも、金属やゴムなどとの複合材の開発が進められています。

CNTは金属の約1,000倍の電流を流すことができる非常に高い伝導性を持っています。CNTを回路の電線に使用すれば、現在よりも細い線で多量の電流を流すことが可能になるので、電線や電子部品の配線としての実用化が進められています。

また、金属と比較して重さが約20分の1、引張り強度が100倍という特性を活かして、細く軽くて重量物を引き上げられるロープの開発などが進められています。この延長線に、まだまだSFの領域の話として扱われることも多いですが、宇宙エレベーターの話があります。宇宙エレベータ構想ではCNTを宇宙ステーションと地上を結ぶロープとして使うことで、ロープ自身の重量が軽減され、宇宙ステーションが地球に引き戻される力を減らすことができるとしています。

CNTの原理

CNTは1991年に当時日本電気 (株) の研究員であった飯島澄男氏によって発見されました。飯島氏は炭素原子60個からなる球形の分子C60 (フラーレン) を実験室で作ろうとしていました。C60は、真空中に置いたグラファイトの電極間に高電圧をかけてアーク放電を発生させることで炭素が蒸発し、それで生じる煤の中にC60があるとされています。アーク放電を重ねることでグラファイトの電極が消耗するはずのところで陰極には付着物がたまっていたため、それを電子顕微鏡で観察したところCNTを発見し、電子顕微鏡を使って構造を解析しました。

現在、CNTはアーク放電法、レーザー蒸発 (レーザーアブレーション) 法、化学気相成長 (CVD) 法の3つの方法によって生産されています。

1. アーク放電法

アーク放電法は、CNTが発見された時と同じ方法で、アーク放電させた陰極のグラファイト電極の付着物からCNTを得る方法です。結晶性が高くて直径の細いCNTを比較的高純度で生成できる利点がありますが、生成効率が低くて量産化には向いていません。

2. レーザー蒸発法

レーザー蒸発 (レーザーアブレーション) 法は鉄、コバルト、ニッケルなどの金属触媒を混ぜたグラファイト棒を電気炉に置き、強力なレーザーを照射して2,000~3,000℃まで加熱することで単層のCNTを生成します。結晶性が高くて欠陥のない高品質のCNTを作製することができます。しかしこの方法も大量生産には向いていません。

3. 化学気相成長 (CVD) 法

化学気相成長 (CVD) 法では炉の中に触媒金属のナノ粒子と炭酸ガスを入れ、500~1,000℃に加熱してCNTを生産します。現時点では、この3種類の製造方法の中ではCVDが最も量産に適した方法と言えます。

CNTの構造

6個の炭素原子が結びついてできた六角形をしたベンゼン環が、X-Y方向の2次元に緊密に均等につながった状態の分子構造を、グラフェンと言います。グラフェンを平らなシートとみなして、それを丸めて筒状にしたものがカーボンナノチューブです。他に結合元素が無く、カーボン原子どうしが結合したこの分子構造は非常に安定した分子構造と言えます。

カーボンナノチューブの中でも、単純な1つの筒状になっているものを、単層CNTと言いますが、単層CNTにも2つの構造があります。1つはグラフェンのシートを全くのよじれがなく巻かれた状態のものです。もう1つはよじれた形で斜めにづれて巻かれたものです。電気的にはよじれのないタイプが金属の性質を持ち、よじれのある方は半導体の性質を持つと言われています。

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