超音波流量計とは
超音波流量計とは、超音波による音響振動を利用した流量計で、被測定物に非接触で測定ができる特徴を持つ流量計です。
伝播時間差式とドップラー式の2つの方式があります。超音波流量計は管内に障害物がないため圧力損失がなく、シンプルな構造です。故障しにくい、測定可能な範囲が広い、流体の密度や粘度の影響を受けない、高精度などの特徴があります。
また、超音波流量計はクランプオンデバイスであり、配管外側に取り付けることでセンサを腐食させずに、腐食流体も測定することができます。
超音波流量計の使用用途
超音波流量計は、配管内を移動する気体や液体、固体の流量の測定に使用されています。具体的には、水処理施設や工場での流体の流量の管理に用いられる場合が多いです。
超音波流量計の中でも伝播時間差方式は、固体や泡が混ざっていると測定精度を確保できません。そこで、純度が高い流体の測定、例えば半導体工場での薬品の流量管理などに使用されます。一方、ドップラー式は流体中の固体物質や泡を利用して流量を測定しているため、懸濁した流体、例えば汚泥や排水の流量測定に使用されます。
超音波流量計は、伝播時間差式とドップラー式のどちらの方式でも配管の外に着脱するクランプオンデバイスで、配管の外から超音波を送受信する構造です。このため、配管内に障害物がないこととなり、圧力損失はゼロで、シンプルな構造で故障しにくい、流体の密度や粘度の影響を受けないなどの特徴があります。また、配管内部にセンサーなどの部材を配する必要がないことから、部材を腐食させることなく腐食流体も測定可能です。
超音波流量計の原理
超音波流量計には、伝播時間差式とドップラー式があり、それぞれ構成が異なります。
1. 伝播時間差式超音波流量計
伝播時間差式超音波流量計は、トランジットタイム式超音波流量計ともいわれます。現在では、伝播時間差式超音波流量計が主流です。伝播時間差式超音波流量計では、配管内の流体に対して上流側から下流側 (正方向) と逆の下流側から上流側 (逆方向) に向けて流体を斜めに横切るように、超音波を送受信できる構成です。
流体が動いていなければ、超音波を正方向に送信した場合の超音波の伝播速度と逆方向側に送信した場合の超音波が伝播する速度は同じです。しかしながら、流体が動いていると、正方向で送信された超音波の伝播速度は流体の速度が加わった速度となります。
一方の逆方向で送信された超音波が伝播する速度は、流体の速度を差し引いた速度となります。すなわち、伝播時間差式超音波流量計では、この速度の差から流体の速度を算出し、そこから流量を算出しています。
伝播時間差式超音波流量計は、このような構造と原理を有するため、流量の計測精度は高いです。しかし、液体中に固形物や気泡があると測定精度を保てず計測できません。
2. ドップラー式超音波流量計
ドップラー式超音波流量計では、ドップラー効果を利用しています。ドップラー効果とは、救急車のサイレンの音が近づくときと遠ざかる時で異なって聞こえる現象に代表される効果です。これは、音の発生源が観測者に近づいてくるときと遠ざかる時で見かけ上の音波の波長が変わるために起こる現象です。
ドップラー式の超音波流量計では、変換器を用いて配管の内部を流れる流体に超音波を照射して超音波が流体中の粒や気泡が反射する現象を利用しています。そして、この粒や気泡による反射により波長 (周波数) がずれた超音波を受信しています。この超音波の周波数変化と流速は直線関係となるため、流速から流量の算出が可能です。
超音波流量計のその他情報
1. 伝播時間差式超音波流量計の気泡に関する課題
伝播時間差式超音波流量計で気体並びに液体の流量を測定する場合、測定値は系内の流速分布の影響を受けるため、流量計の上流側は整流となっている必要があります。特に流体の流速が速くなると、測定機器の上流や系内でキャビテーションが発生しやすいです。キャビテーションが起こると、流体中の気泡の発生や混入が起こりやすく、伝播時間差式超音波流量計での測定精度を確保できません。
この気泡対策としては、機器の上流側に気液分離槽の設置が挙げられます。しかし、既設の設備では改造が必要となり、コストなどがデメリットです。そこで、近年では気泡通過時のデータをキャンセルして、流量を測定する機能を持つ超音波流量計が開発されています。
2. クランプオン式の超音波流量計のメリット
流量計としては、容積式流量計やタービン式流量計、フローセル流量計などがありますが、いずれも配管内の流体の流量を測定するのに、配管内に検出部材の設置が必要です。新設の設備であれば、設計段階で流量計の設置位置を決め、仕様も確定可能です。
しかし、既設の場合、配管改造が必要となり、装置停止時の対応となるケーズが多くあります。例えば、差圧式流量計やタービン式流量計を既設の設備に設置する場合には、配管の切断などの工事が必要です。
しかしながら、クランプオン式の超音波流量計であれば、配管工事が必要ないため、容易に設置でき、既存の設備への設置も容易なことがメリットです。
参考文献
https://www.tokyokeiso.co.jp/techinfo/magazine/pdf/flow4.pdf
https://www.jp.omega.com/technical-learning/dif-between-doppler-transit-time-ultrasonic-flow-meters.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/technique/ultrasonic.jsp
https://www.tokyokeiso.co.jp/products/download/tg/UL350_TG-F1083.pdf