めっき薬品とは
めっき薬品とは、めっきによって金属やプラスチックの製品や部品の表面に皮膜を作る際に使用する薬品のことです。
被膜を作る金属を主体としたいくつかの物質が溶け込んだ溶液で、古くから用いられている表面処理の一つです。めっきとは製品や部品等の素材の表面に金属の膜を付ける処理です。
めっきを行う目的は主に3つあります。1つ目は見た目を綺麗にする装飾のためです。普段目にする金属製品は銀色や金色に輝いていますが、金や真鍮などを除くほとんどの製品は表面にめっき処理を施して色や光沢を出しています。また、プラスチック製品にも表面に金属のめっきを施して、金属製品のように見せているものがあります。
2つ目は耐食性を増すためです。素材を錆から防ぐために表面をさびにくい金属の膜で覆います。また、3つ目は求める機能性を得るためです。電気を通さない材料からできた部品も、表面に導電性の膜を覆わせると電気が通るように、電気的特性、物理的特性、化学的特性、機械的特性、光学的特性など様々な特性を、めっきによって変化させることができます。
めっきで素材に付ける膜は、材質や持たせたい特性によって様々です。従って、膜形成の主要部材であるめっき薬品には多種多様なものが存在します。
めっき薬品の使用用途
めっき薬品は、皮膜として形成したい金属を溶けこませた水溶液や粉末です。めっき薬品を適度に希釈して満たした水槽に、めっきを施す対象の素材を浸して、化学反応によってその金属の皮膜を形成させます。
めっきを施す素材の材質や目的と仕上がり状態などによって、使う金属の種類や濃度、配合する他の成分なども違ってきます。一つの素材に一回だけ施す場合もあれば、何回も重ねて行う場合もあります。
使用前には必ず素材の表面に着いた油脂、汚れ、錆びや酸化膜など、取り除き、表面をきれいにする前処理が必要です。素材の表面が少しでも汚れていた場合、めっきのつきが悪かったり、簡単に剝がれてしまうなどの問題が発生します。素材によっては、めっきのつきを良くするために表面を活性化する必要があります。塗布前には様々な前処理が必要であるため、前処理に使うための薬品もめっき薬品として市販されている場合があります。
めっき薬品の原理
めっきには湿式めっきと乾式めっきがあります。乾式めっきは蒸着やスパッタリングなど、空気中若しくは真空中で素材に膜を形成する方法です。湿式めっきには、電界めっきと非電界めっきがあり、工業的により多く使われるものは電界めっきです。
1. 電界めっき
被膜を作る金属がイオンの形で溶け込んだ水溶液に、めっきを施す素材を浸し、電極を繋ぎます。一方、金属のイオンと同じ種類でできた金属板を同じ水溶液に浸し、もう一方の電極を繋ぎます。電極間に電圧を加えると、水溶液中のイオンが素材の表面に電気的に引き寄せられ、素材の表面に膜を形成してゆきます。皮膜の厚さは、流れる電流の密度と、電圧をかける時間によって変化してきます。
良く知られている亜鉛メッキでは、亜鉛イオン (Zn2+) が溶け込んだ水溶液に金属の素材と亜鉛板を入れ、素材にマイナスの電極を、亜鉛板にプラスの電極をつなぎます。両社に電圧をかけると亜鉛イオンは素材の表面に集まり、1個の亜鉛原子が2個の電子を受けとり、亜鉛原子として析出します。
電界めっきができる素材は、表面に電気を通すことができる金属に限られます。また、イオン化傾向の小さな金属に、イオン化傾向のより大きな金属をめっきすることはできますが、その逆は素材の方が先に溶けだすためできません。
2. 非電界めっき
化学反応を利用しためっき方法で、置換めっき、還元めっきなどがあります。置換めっきでは、素材の表面がめっき液の中に溶けだし、代わりにめっき液の中の金属が表面に析出します。還元めっきでは還元剤が素材の表面で電子を放出し、それに引き寄せられた金属イオンが素材に付き、膜となって析出します。
非電界めっきは、プラスチックのように電気を通さない素材の表面に、下地として電気を通す膜を成型するためにも使用されます。
めっき薬品の選び方
めっき薬品は非常に多くの種類の薬品が市販されています。以前はめっき薬品は毒性が強く、劇薬に指定される取り扱いの危険な薬品とされてきました。しかし最近では環境意識の高まりから、環境に考慮した薬品も市販されています。家庭で趣味の工芸として使える薬品も市販されています。
めっき薬品を選択する際には、取扱い会社のHPにて使用用途や組成についての情報を得ますが、多種多様な要求を満たすために専門のメーカーや加工業者に相談することが一般的です。