急速排気弁

急速排気弁とは

急速排気弁

急速排気弁とは、主にシリンダーをはじめとするアクチュエータからの圧縮空気やガスを速やかに排気させるための方向制御弁です。

アクチュエータの動作の抵抗になりえる圧縮空気を迅速に開放できるため、シリンダーの戻り速度を速くすることが可能です。急速排気弁を使用することで、エネルギー損失の低減や動作効率の向上を図ることができます。

また、上流にあるポンプや電磁弁の負荷慧眼されるため、これらの寿命を延ばすことも可能です。急速排気弁は、流入した空気をシリンダーに伝え、シリンダーからの排気は排気口から排出するといった方向制御を、ダイヤフラムを使用することで実現しています。このため、電力供給の必要がないことがメリットです。

急速排気弁の使用用途

図1. 急速排気弁の使用目的

急速排気弁は、迅速なアクチュエータの応答と効率的なエネルギー利用を重要とするさまざまな分野とアプリケーションで使用されます。主な目的は、空気圧アクチュエータから圧縮空気を迅速かつ効率的に排気させることです。

1. 製造と自動化

急速排気弁は、空気圧シリンダーやグリッパーを使用した位置決めなどの作業において、自動化された製造システムでよく使用されます。ロボットアームやエンドエフェクタで高速かつ正確な動作を実現することが目的です。

2. 包装作業、物流

包装機械におけるシーリングヘッドや、コンベアシステムのゲートやプッシャーで使用されます。いずれも素早い物資の取り扱いと仕分けなどを可能にします。

3. 加工機

金属加工設備として、パンチングやシャーリング、曲げ加工機などにおいて、加工機の戻り工程にかかる時間を短縮化するために使用されます。

4. 医療、研究分野

正確な液量を計測できるシリンジポンプとの組み合わせで使用されますが、チェック弁としての機能が目的です。液体の供給源とシリンジの間で設置されます。

シリンジが吸い込む際は入口から出口にかけて解放され、掃き出しの際には出口から排気口が解放されます。これにより、スムーズな排液とシリンジ部の圧力負荷の軽減が可能です。

急速排気弁の原理

図2. 急速排気弁の動作

急速排気弁は、流体の入口と出口、排気口の3つの接続口を持っており、ダイヤフラムによって流体の流れる方向を制御する仕組みです。電源などは必要ありません。

流入してきた経路とは別に排出用の経路を設定することで、流体が戻るときの圧損を軽減します。効率的に流体を排気できるようになっています。

1. 通常位置

デフォルトの状態では、ダイヤフラムは排気口を塞いでいます。

2. アクチュエータの作動

ダイヤフラムはゴム系材料でできており、外縁は変形可能です。流体はダイヤフラムの外縁を通って、アクチュエータへ誘導されていきます。

3. アクチュエータの戻り開始

アクチュエータが戻りの動作に入ると、アクチュエータからの圧力によってダイヤフラムが動き、すぐに入口を塞ぎます。

4. 排気

ダイヤフラムは入口を塞ぐと同時に、出口ポートから排気ポートへの直接経路を確立します。この経路は、入口とは異なる経路で確立され、アクチュエータ内で閉じ込められた圧縮流体を直接的に排気します。アクチュエータ内部の圧力が低くなるため、戻りのための動作が軽負荷です。

5. 排気完了

排気が完了すると、通常位置へ復帰します。

急速排気弁の構造

急速排気弁の構造として、代表的なものは以下の通りです。

1. ボディ

バルブのボディは、通常アルミダイキャスト、黄銅、樹脂 (PVC) など、用途によって様々です。ボディには、入口ポート、出口ポート、排気ポートが設けられています。

2. 入口ポート

流体の供給源であるポンプやコンプレッサーからの流入口です。

3. 出口ポート

シリンダーのボトム側など、制御したいアクチュエータに接続します。

4. 排気ポート

アクチュエータから排気されるポートです。

5. ダイヤフラム

排気ポートまたは入口ポートを塞ぎます。耐食性の高いフッ素機ゴムや、耐摩耗性があるNBRなどの材質です。

急速排気弁の種類

図3. 急速排気弁の油圧記号の例

1. 標準的な急速排気弁

入口、出口、排気ポートを備えた簡単な構造です。一般的なアプリケーションで使用されます。

2. 流量制限付きの急速排気弁

排気速度を調整できるタイプで、アクチュエータの動作速度を調整、制御することが可能です。

3. 大気開放型の急速排気弁

排気した流体を直接的に大気へ排出します。

参考文献
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/29/
https://www.ascojp.co.jp/recruit/denjiben.html
https://www.pisco.co.jp/dl/pdf/TFCT4-01_40.pdf

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