強力ニッパーとは
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強力ニッパー (または強力ニッパ) とは、金属線などを挟んで切断する手動工具 (ニッパー/ニッパ) の一種です。
日本工業規格 (JIS )によるニッパーの規格は、強力ニッパー (JIS B 4635)と斜ニッパー(JIS B 4625)の2種類あります。
強力ニッパーの使用用途
強力ニッパーは、主に金属線 (針金や電線) の切断に使用されます。切断する対象に応じて、ニッパーは使い分けられます。強力ニッパーと呼ばれるものは、基本的にすべて「強力ニッパ」というJIS規格に準拠したニッパーですが、刃部形状やその材質によって切断能力が異なるためです。
JIS規格で表す切断能力とは、JISによって決められた鉄線を規定の荷重以下で切断できることを表します。ニッパーの刃部中央に、決められた試験用鉄線を挟み、試験用鉄線をくわえる点の荷重を規定された値以下で切断できなければなりません。
これは、刃の硬度と鋭さが一定以上の水準であることを示すものです。ニッパーの大きさを表す呼び寸法によって、試験用鉄線の線径や荷重の基準値は異なります。
強力ニッパーの原理
強力ニッパーは、概ねペンチと類似した形状の工具ですが、ペンチと異なり挟む箇所は刃となっています。強力ニッパーはこの刃部、支点となる接合部、柄部から成ります。強力ニッパーは頑丈さに重点をおいたつくりで、厚く丈夫な刃部と頑丈な接合部が特徴です。
使用するときは、切断したい線を刃にくわえ、柄部を手で強く握り、てこの原理で強い力を刃部に与えます。刃は鋏のような交差する刃ではなく、対称的に正対する刃がついています。この刃で金属線などをしっかりと押し切ります。
刃がきちんと正対した状態で押し切る動作が必要なため、接合部は「遊び (がた) 」が無いことが重要です。そのため、JIS規格で遊びが無いことが求められています。
強力ニッパーの選び方
強力ニッパーは、切る対象物に応じて選びます。〇〇用などの表示を目安にするのもよいでしょう。
これは、以下に示す通り、切断能力・使いやすさ・価格は相反することがあり、バランスが重要となるからです。JIS規格は最低限の性能を定めているに過ぎないため、規格に準拠した強力ニッパーでもさまざまなものがあります。その中から切断能力と使いやすさを考えて、対象物に適したニッパーを選ぶこと大切です。
1. 材質 (鋼材)
ニッパーの材質は、炭素工具鋼材や機械構造用炭素鋼鋼材、または、同等以上の品質となる鋼材が用いられています。鋼材の違いによって価格帯がわかれます。
材質は主に刃の機能に関係し、硬い材質を用いれば切断能力が高く、耐摩耗性も高くなりますが、衝撃に弱く欠けやすくなります。その反対に、やわらかい材質を用いた場合は硬いものを切ることができず、摩耗にも弱いです。そこで、必要な切断能力をそなえながら、用途にあった性質をもつ鋼材を使用し、切断能力と価格・使いやすさのバランスをとっています。
2. 刃部の形状
刃部形状によっても用途がわかれ、強力刃タイプは高い耐久性があり、ピアノ線や軟鉄線などの硬質材の切断に適しています。一方、薄刃タイプはシャープな切れ味があり、電線や銅線など柔らかいものの切断に適しています。
強力ニッパーの種類
強力ニッパーにはJ型とI型があり、JISでそれぞれに標準的な寸法 (呼び寸法) や品質、機能、機械的性質の規格が定められています。JIS B 4625は、2002年改正 (JIS B 4625:2002) で大きく改正され、下記との整合が図られました。
- ISO 5743:1988 (Pliers and nippers−General technical requirements
- ISO 5744:1988 (Pliers and nippers−Methods of test)
- ISO 5749:1988 (Pliers and nippers−Diagonal cutting nippers−Dimensions and test values)
J型は国内メーカーの製品でよくみられるタイプで、掲載画像に示すような形状です。I型はJ型より薄いタイプですが、現在国内ではほとんどつくられておらず、国内流通はJ型の形状をしているタイプがほとんどとなっています。
強力ニッパーはその刃部の断面形状の違いにより、さらに強力刃タイプと薄刃タイプに分類されます。なお、斜ニッパーは、切断箇所が見やすいように刃部が斜めになっており、主に電気配線における精密な作業に適したニッパ―です。そのため、電子基板の余分な半田の切断や平行線の分割に使用されます。
参考文献
https://blog.f-gear.co.jp/item/comparison/nipper_kyouryoku/