常温収縮チューブとは
常温収縮チューブとは、ケーブルとコネクタの接続部や通信ケーブル同士の接続部を被覆して、接続部を保護および防水する接続部材です。
常温収縮チューブの使用用途
常温収縮チューブは、電力ケーブルや制御ケーブル、通信ケーブルなどを直線接続する際の接続部の被覆に使用されます。また、コネクタと同軸ケーブルのように外径が異なるものを接続する際の接続部の被覆にも好適です。
具体的な用途としては、ケーブルテレビや携帯電話基地局などにおける同軸コネクタの保護および防水の為の被覆などが挙げられます。
常温収縮チューブの原理
常温収縮チューブは、防水性および耐候性が高い素材よりなるチューブ部材内にチューブ部材を外径方向に押し広げるスペーサー部材が挿入された構造です。使い方は、まず常温伸縮チューブのチューブ部材内に所定の接続部を挿入したのち、スペーサー部材をゆっくりと引き抜きます。すると、外径方向に押し広げられていたチューブ部材が内径方向に収縮して接続部に密着し、接続部を被覆する仕組みです。
常温収縮チューブの構造
常温収縮チューブの構造は、チューブ部材内にスペーサー部材が挿入されたもので、チューブ部材を外径方向に押し広げるスペーサー部材の形状は大きく分けて2種類です。チューブ部材内壁に密着する筒形状のものと、チューブ部材の内壁に密着してスパイラル状に巻かれたリボン形状のものがあります。
筒形状のスペーサー部材を使用した常温収縮チューブの特徴は、チューブ部材を長さ方向にも圧縮していることです。このことにより、筒形状のスペーサー部材を引き抜いたときに、チューブ部材は端からゆっくりと接続部に順次密着していきます。また、スペーサー部材に長さ方向に切り込みを入れるなどして引き抜きの利便性を高めています。
リボン形状のスペーサー部材の場合は、スパイラルの巻き終わり端の反対側の端部にリボンを通してから引き抜くことが必要です。そうすることで巻き終わり端側から徐々にリボンが抜けてチューブ部材が順次収縮していきます。
また、常温収縮チューブには、チューブ部材の形状が、収縮後に単一径のチューブ状になる様にしたものと、収縮後に細径部と太径部を有する二段形状に対応できる形状としたものがあります。二段形状に対応できるものは、コネクタと同軸ケーブルの接続部のような外径の異なる接続部に好適です。
常温収縮チューブのその他情報
1. 常温収縮チューブの素材の種類
常温収縮チューブのチューブ部材を構成する素材としては、防水性および耐候性が強い上、引張強度や耐引き裂き性などの物理的強度も強い素材が用いられています。これは、スペーサー部材により押し広げられる力に耐える必要があることと、スペーサー部材を引き抜く際の引っ張り力に耐える必要があるためです。具体的には、エチレンプロピレンゴムやエチレンプロピレンジエンゴム、シリコーンゴムや高強度シリコーンゴムなどがあります。
2. 常温収縮チューブの防水性
常温収縮チューブは、防水性の高い素材で形成されており、高い防水性を有する部材です。しかし、近年では、防水性をさらに高めるべく、内部にシリコングリスを塗布したものや、防水パテを配したものなどが開発されています。常温収縮チューブの端部にこれら防水部材を配することでさらなる防水性を達成しています。
3. 常温収縮チューブの利点
常温収縮チューブは、施工時に加熱を必要としません。このため、火器など特殊な工具を必要とせず、施工時間の大幅な短縮が可能です。また、施工方法が極めて容易であることから、作業する人員による施工品質のムラが軽減されます。
加熱処理を必要とせず、常温収縮チューブ自体のサイズもコンパクトで可撓性もあることから、狭い場所での施工にも適しています。また、常温収縮チューブを通しスペーサを引き抜くだけなので、周りに空間がなくテープを巻くなどの処置が難しい場所でも、施工可能なこともメリットです。