レーザードップラー速度計

レーザードップラー速度計とは

レーザードップラー速度計とは、レーザー光のドップラー効果を利用した速度の計測装置です。

被測定物にレーザ光をあて、移動もしくは回転する物体の速度を測定します。レーザードップラー速度計の利点は分解能が高く、逆回転など回転方向の検出も可能なことです。

レーザードップラー速度計は、被測定物が気体や液体などの場合はレーザードップラー流速計と呼ばれます。レーザードップラー流速計では、気体や流体の流れの中に混入させた微小な水滴などにレーザ光をあて、流れの速度を計測します。

レーザードップラー速度計の使用用途

レーザードップラー速度計の使用用途は、ベルトなどの移動する物体の速度計測や、ロール、モーター、ギヤなどの回転する物体の計測などです。また、エレベータの開閉の検知などにも使われます。測定対象となる物体は、紙、建材、アルミホイル、ケーブル、チーズ (食品) 、鉄板など多岐に渡ります。

レーザードップラー流速計の使用用途は、流体力学研究の基礎分野、航空機や船舶、自動車などの物体まわりの流れといった工業計測です。具体例としては、車両や航空機などの空力特性を解析する風導実験、エンジンにおいては燃料や混合気、排気ガスなどの流れの解析などに用いられています。

レーザードップラー速度計の原理

レーザードップラー速度計もしくは流速計のどちらも、ドップラー効果を利用しています。ドップラー効果とは、波を発生する音や光などの波源と、それを観測もしくは検出する装置のどちらか一方、あるいは両方が動いている場合に、波の周波数がずれて観測される現象です。

私たちの生活の身近な例では、救急車や消防車のサイレンが、私たちの目の前を通過すると音が急激に変化して聞こえる場面が挙げられます。レーザードップラー速度計の原理は、動いている測定物に光を照射すると反射した光の周波数がずれるため、この反射光を検出し、速度を割り出すことです。ずれた周波数は光に比べ小さく検出が困難であり、もとの光源の光を重ね合わせて検出します。

レーザードップラー速度計のその他情報

1. レーザー光の特徴

レーザー光には、ドップラー効果を検出するために有利な特徴があります。レーザーとは「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の頭文字をとったもので、日本語に訳すと誘導放出による光増幅放射です。レーザー光は太陽光などの普通の光にはない、4つの特徴があります。

指向性が高い
指向性が高いため、光が1方向に真っ直ぐに進みます。

コヒーレンスが良い
コヒーレンスとは可干渉性と訳されますが、光の位相が規則正しく揃っていることを指します。

波長の幅が非常に狭い
波長の幅が非常に狭いため、単色の光が得られることです。

収束性に優れている
収束性が良いとは、レンズを使って光を一点に集めやすいことです。虫眼鏡を使って太陽光を集めると紙などが燃えますが、太陽光にはさまざまな波長の光があります。私たちが焦点を合わせたつもりでも、実際にはすべての光が1点には集まっていません。

これは、収差と呼ばれる焦点の誤差があるからです。しかし、レーザー光は収束性に優れているため、レンズを使って光を一点に集めやすい性質があります。

2. レーザードップラー速度計による気体や流体の測定

気体や液体の速度を計測するレーザードップラー流速計の場合は、流れの中に水滴、シリコーン油、酸化チタンなどの微小なトレーサ粒子を混入させる必要があります。流れの速度を計測する場合、このトレーサ粒子にレーザ光をあて、粒子が発する散乱光を検出し、トレーサ粒子の速度を求めます。そのため、トレーサ粒子が流れに十分追従していることが重要です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogaku1972/7/3/7_3_93/_pdf
http://eng.hgu.jp/hrc/activities/1999/02.pdf

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