ポーラスチャックとは
図1. ポーラスチャックのイメージ
ポーラスチャックとは、多孔質体の吸気孔から空気を引くことでウェハーやガラスなどの薄い物体を真空吸着するツールです。
被計測物・被加工物を吸着する目的で、加工機や検査装置のテーブル、ダイシングソーに使用されています。また搬送用の吸着パッドとしても活用されているツールです。薄いものを破損・変形なく吸着固定することに優れています。金属などのボディ (本体) にアルミナセラミックなどのポーラス (多孔質体) がはめ込まれた構成です。ポーラスバキュームチャック、多孔質真空チャックなどの別名で呼ばれることもあります。
ポーラスチャックの使用用途
ポーラスチャックは、吸着固定するという用途で検査装置・測定装置など様々な装置に使用されています。主な用途に下記のようなものがあります。
- ウェハ、薄型半導体デバイス、3次元メモリ基板などの板状対象物などの加工時における固定治具
- 各種、測定装置、検査装置の固定治具
- フィルムシートや金属基板、薄膜などの加工時における固定治具
ポーラスチャックと共に使用される装置としては、
- 平面研削盤
- ロータリー研磨機
- ラップ加工機
- ダイシングソー
- グラインダー
- ポリッシャー
- CMP
- ボンディングマシン
- 外観検査装置
- 画像検査装置
- 二次元測定器、及び三次元測定機
などが挙げられます。
ポーラスチャックの原理
1. 材質
ポーラスチャックに用いられるポーラス (多孔質体) の材質には、アルミナセラミック、炭化ケイ素 (SiC) 、ステンレス (SUS)、樹脂などがあります。アルミナセラミックが最も標準的であり、炭化ケイ素は静電気対策に使用され、ステンレスは導電体です。樹脂は柔らかい素材であるため、吸着ワークへのダメージが少ない特徴があります。ボディにはステンレス、アルミニウム、セラミックなどが使用されます。
2. 仕組み
図2. ポーラスチャックの模式図
ポーラスチャックはポーラスの吸気孔から空気を引いて負圧にすることで真空吸着し、対象物を固定します。面全体に対象物を乗せることで、変形させること無く均一に吸着固定することが可能です。気孔径は約2μm〜約230μmですが、標準的には55μm、120μm、10μm、2μmなどが使用されることが多いです。反対側のポーラス面には溝があり、ポーラスを通してワークに対する負圧を受けるようになっています。
ポーラスの粒が粗い場合、ワークの表面に凸凹が生じるため、ポーラスの粒が細かいほど平面度が高くなります。また、全面を対象物で覆わなくても吸着することが可能です。これは、ポーラスチャックは綿密な気孔が全面に広がっているため、エアーの漏れが発生しづらいことによります。液体を使用する工程や対象物が濡れている場合など、湿式での使用もできます。
ポーラスチャックの種類
図3. 色々なポーラスチャック (左: 角形ポーラスチャック、右: 面発光ポーラスチャック)
ポーラスチャックには、前述の通り、素材・ボディなどに様々な種類があります。また、形状は丸形の他、角形もあります。用途に合わせて適切なものを選定することが必要です。
1. 素材別種類
最もスタンダードな仕様のポーラスチャックは、平均気孔径55μm、材質はポーラス/ボディが、アルミナセラミック/SUSです。気孔径2μmなどの特に緻密なポーラスを用いたポーラスチャックは、ファインポーラスチャックと呼ばれ、特に薄い対象物の吸着や部分吸着力に優れています。
炭化ケイ素 (SiC) を用いたポーラスチャックは帯電除去素材であり、また傷にも強い素材です。特にレーザー加工に適しています。ボディにセラミックやアルミを採用したものでは、スタンダード仕様よりも軽量化が図られています。ポーラスにSUS素材を採用したメタルポーラスチャックでは対象物であるワークとポーラス間で導通させることが可能です。
2. 特殊機能の付加
ポーラスチャックの中には光源を内蔵して発光機能を追加したものや、ヒーターを内蔵して加熱機能を付加したものなどがあります。面発光ポーラスチャックは、多層ウェハの内部検査や、エッジ検査の精度向上などに役立ちます。加熱機能のあるポーラスチャックは吸着と同時に250℃程度までの加熱が可能です。
参考文献
https://www.nittan.co.jp/member/admin/document_upload/takousituceramicsinkuucyaku.pdf