静電気防止剤とは
静電気防止剤とは、機材や衣類などの対象物に塗布や練り込むことで、対象物が静電気を帯びることを防ぐものです。
静電気が発生すると、対象物が空気中のゴミやチリを集めて堆積したり、静電気による放電を起こし機材の中の半導体部品などを破損したりします。最悪の場合、発火して火災に至る可能性もあります。
静電気防止剤は、この様な静電気を原因とした、さまざまな不具合を回避するために使用されます。
静電気防止剤の使用用途
静電気防止剤の使用用途としては、最終製品の静電気発生を防止する目的と、工業製品の生産工程での静電気発生によるトラブルを防止する目的の2つがあります。
1. 製品の静電気発生防止
- 家具、衣類へのホコリの付着防止や静電気防止
- 家電、電子機器などのホコリ付着防止や、静電気による破損、誤作動防止
- 車のプラ部分各所、室内内張、エンジンカバー、エアクリボックス内側吸入部分の静電気除け
- 電子機器搬送ケースや緩衝材の帯電防止
- フィルムなどの付着防止
- 粉末をいれる袋への粉末の付着防止
2. 生産工程での静電気発生防止
- 繊維製造工程での紡糸、延伸、紡績工程での帯電防止
- フィルム製造工程での、フィルム同士の張り付き防止
静電気防止剤の原理
静電気防止剤は、プラスチックへの塗布、または練り込むことで、対象物のイオン伝導性を向上させています。イオン伝導性が向上すると、静電気が発生しにくくなるためです。
静電気防止剤はスプレータイプのものが一般的には良く知られていますが、界面活性剤を含む洗剤も静電気防止剤の1つと言えます。家庭用の衣類の洗剤には、界面活性剤が使用されています。従って、洗濯した後の衣類は静電気が発生しにくい状態です。
静電気防止剤は、扱う対象の機器や衣類等それぞれに合ったタイプのものが用意されています。
静電気防止剤のその他情報
1. 衣類の静電気防止剤
日常的に着用する衣類の場合は、界面活性剤を含む洗剤や柔軟剤が静電気防止剤の役割を担います。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤の4つがあります。なかでも静電気防止剤の用途としてよく使用される界面活性剤は、カチオン界面活性剤です。
カチオン界面活性剤は、溶液中でプラスイオンに電離する界面活性剤です。柔軟剤の主成分としてよく用いられています。柔軟剤を入れた洗濯物は乾燥すると、繊維表面が摩擦抵抗が小さくなることで、静電気の発生を軽減します。
さらに、界面活性剤は衣類表面の親水性を向上させるため、水分子も強く結合しやすくなります。静電気が発生しても、水分子を通して流れることで、静電気が溜まるのを防止できます。
2. アクリル板への静電気防止剤の適用時の注意点
アクリル板は、静電気が発生しやすい素材です。特に静電気が発生しやすい冬場には、アクリル板を使った製品に埃やゴミが付着してしまい、なかなか除去できないことがよくあります。
静電気の発生を防ぐ方法としては、静電気防止剤を含んだ水溶液をスプレーする方法です。最初に大きな埃やゴミは除去しておき、その後でスプレーを適量塗布して柔らかい布で拭き取ります。
静電気防止剤を含むスプレーの中には、アクリル板を侵すものがあるので、その点は注意が必要です。購入の際にはアクリル板に使用できる製品であるかを確認する必要があります。
3. 生産現場での静電気対策
静電気防止剤は静電気の発生を防ぐ目的で使用されますが、工場などでの静電気の発生は深刻な問題です。電子部品を含む製品が、静電気により内部基板上の一部の部品が破壊されることなどが考えられます。
この様な事態を回避するために、静電気の発生を防ぐための取り組みがなされています。
湿度管理
工場内の湿度を高めに設定して、一定の湿度で工場内を管理し、機器類の表面の電気抵抗を下げることができます。
除電棒
アーシングした金属製の棒を、各所に設置し、作業する人間がこれに触れることで作業者に帯電した静電機を逃がすことができます。
導電性マット
導電性マットを敷くことで、仮に作業者が帯電しても導電性マットを経由してアースに静電気を逃がすことができます。必要に応じて、製品や摺動部分など静電気が発生しやすい箇所に、静電気防止スプレーを使用して静電気の発生を防ぎます。
参考文献
https://www.trade-sign.com/magazine/1633/
http://www.nissin-kk.co.jp/product/taiden.html
https://axel.as-1.co.jp/contents/ap/static_elimination
https://jp-surfactant.jp/surfactant/nature/index.html
https://www.kao.com/jp/qa/detail/16543.html
http://www.rencontre-semi.jp/blog20180911/