定電流ダイオードとは
定電流ダイオードとは、電圧が所定の範囲内のとき、一定の電流を流すことができる電子部品です。英語名である”Current Regulative Diode”の頭文字から”CRD”と呼ばれることもあります。 電子機器の中にはLEDのように駆動中の電流値を一定にしたい機器が多数あります。そのような電子機器にCRDは用いられます。
定電流ダイオードは一般的に1mAから15mAといった比較的小さな電流を流すときに用いられますが、500mAといった大きな電流を流すことができる定電流ダイオードもあります。ただし、駆動中の発熱、それに伴う部品の破損には注意が必要です。
定電流ダイオードの使用用途
ダイオードは様々な電子機器に使われる基本的な電子部品です。電子機器の中には駆動中に一定の電流を流し続けたいものもあります。例えばLEDは流れる電流量によって輝度が変化するため、発光を安定させるには回路を流れる電流量を一定にしなければなりません。このような電流駆動型の電子部品、電子機器で定電流ダイオードは使用されます。その他、バッテリーの充放電回路や漏電遮断機(漏電ブレーカー)などにも定電流ダイオードは使用されます。
定電流ダイオードの原理
図1.定電流ダイオードの原理
定電流ダイオードの電流特性を上記の図に示します。0からある電圧までは定電流ダイオードも電圧の増加とともに電流が増加します。しかし、電圧がある一定の領域に入ると電流の値が一定になります。このときの電流値は「ピンチオフ電流」と呼ばれ、定電流ダイオードの特性を表す値の一つです。
また、ピンチオフ電流の80%の電流値を与えるときの電圧を「肩電圧」と呼び、定電流を保持するには肩電圧よりも大きな電圧を印加する必要があります。なお、上記の図の通り、定電流ダイオードでも大きな電圧を加えると定電流ではなく、再び電圧の増加とともに電流が増加します。
なお、このように定電流の領域を超えるほどの電圧を加えると破損してしまうので、実際に使用するときには電圧の大きさに注意が必要です。
定電流ダイオードの種類
定電流ダイオードは1V以下の低電圧から100Vの高電圧まで動作が可能です。ピンチオフ電流の大きさが異なるもの、ピンチオフ電流値の変動が抑えられたものなど、様々な低電流ダイオードが販売されています。一般的には定電流の値は1mAから15mAのものが多いです。一方で大電流用の定電流ダイオードも販売されており、350mA、500mAの定電流を流すことが出来ます。
なお、定電流ダイオードを使用するときには駆動中の発熱に注意が必要です。電圧と電流の積の大きさに応じて発熱が生じ、場合によっては定電流ダイオードの破損の要因となります。また、ピンチオフ電流値が異なる複数の定電流ダイオードをつないで使用する場合、回路の構成を適切に行わなければ想定している動作をしなかったり、装置が破損する場合があるため使用時には十分な注意が必要です。
定電流ダイオードのその他情報
ダイオードの種類
一口にダイオードといっても多くの種類があります。ここでは定電流ダイオード以外の代表的なダイオードについて、その概略をお話しします。
- 整流ダイオード
通常、家庭では各戸にAC電源が来ており、その電力を利用して電気機器、電子機器が作動します。白熱灯、ドライヤーなど、直接交流で作動する機器を除いて、交流を直流に変換する際に使用されるダイオードがこれに当たります。整流ダイオードは比較的高い電圧で使用することが多いため順方向電圧VFが大きく、多くの電流を扱えるものもありますが、大電流用はそれなりに大きくなり、放熱が必要になってきます。整流用のダイオードは全波整流、ブリッジ整流などモジュールで使われることが多く、全波用、ブリッジ用のモジュールとしても用意されています。 - スイッチングダイオード
主にスイッチング回路で使用される小型ダイオードで、外観はガラスに封入されており、リードタイプです。スイッチング動作が目的なので逆回復時間trrは整流ダイオードよりも短くなっています。 - 定電圧ダイオード
普通、ダイオードは順方向に電圧をかけて使用しますが、定電流ダイオードは逆電圧をかけて使用します。定電圧ダイオードに逆電圧を掛けていくと、ある電圧で電流が急激に流れ出します。この電圧がツェナー電圧(降伏電圧)で安定した電圧となり、基準電圧などに使われます。 - 発光ダイオード(LED)
みなさんよくご存じの発光ダイオードです。2014年に日本人が青色発光ダイオードの発明でノーベル物理学賞を受賞したことは記憶に新しいでしょう。これにより、今まであった赤色LED、緑色LEDと併せて、光の3原色が揃い、フルカラーLEDや白色LEDが実現でき、LEDの使用用途が格段に広がりました。これは最近のLEDの動きですが、LED自体は以前から実用化されていて、様々な機器で電源のインジケータ、作動状態の表示などに常用されていました。電源ONを知らせるインジケータや信号のレベルを知らせるバー状のLEDなどは過度に明るい必要はなく目視で認識できれば良いので、10mAも流せば十分に実用になります。このような使い方は小型電球(豆電球 / ムギ球)などにはできませんでした。
その他、レーザーダイオード、フォトダイオードなどのダイオードがあります。
参考文献
https://kurashi-no.jp/I0016986
https://detail-infomation.com/diode-type/
https://www.onsemi.jp/products/power-management/led-drivers/linear-led-drivers/nsi50350as