近赤外カメラとは
近赤外カメラ (英: near infrared camera) とは、一般的なカメラでは映すことができない赤外線波長域の光を撮影できるカメラです。
近赤外線は、波長が700nmから2,500nm (0.7~2.5μm) の電磁波の1種です。人間の目で見ることができる可視光よりも波長が長いので、肉眼で見ることができません。
物体はその組成によって光の反射や吸収の仕方が異なっているため、この特性の違いを利用し、人間の目で見えない光を近赤外カメラによって可視化することが可能です。そのため、近赤外カメラは電子部品から農産物まで幅広い製品の検査で利用されます。
近赤外カメラの使用用途
近赤外カメラの使用用途は、人間の目で見ることができない近赤外線を写すことができるため、監視や検査、観察などです。被写体は様々で、医薬品や電子部品などから、農産物や食品など多岐にわたります。
具体的には、農作物の鮮度を判別したり、食品に異物が混入していないかを検査したり、医薬品の成分や肌の水分を分析したりする際に使用されます。また、塩・砂糖・調味料の区分が可能です。
果実のキズや木材の割れの検出、水と油の分別、ICカード内の回路読み取りなどの用途があります。今後も更なる使用領域の拡大が期待されます。
近赤外カメラの原理
近赤外カメラは、物質ごとの近赤外光の吸収量を画像として表示するものです。近赤外線は赤外線をさらに分別した中で、可視光線よりも波長が長く、電波よりも短い赤外線です。
近赤外線は太陽光中にもあるような日常に身近なので、人体や食物などに照射しても影響のない安全な光と言えます。色や熱には特徴を示しませんが、光の中で物体に一番吸収されやすい光です。
近赤外カメラの原理は、物質によって光の反射や吸収の度合いが異なることを利用する方法です。波長域の異なる光によって見え方が違うので、その違いのコントラストを強調させることで、異なる物質同士でも可視化することができます。
被写体に近赤外線が含まれた光を投射すると、異なる物質で光の反射や吸収の違いが特徴として画像に表れ、これを映すことで可視化しています。
近赤外カメラのその他情報
1. 近赤外カメラと遠赤外カメラの違い
赤外線は、さらに細かい波長域で3分類されます。
- 0.7~2.5μm:近赤外線波長
- 2.5~4μm:中赤外線波長
- 4~1,000μm:遠赤外線波長
近赤外カメラと遠赤外カメラは、可視化出来る波長の範囲が異なります。また、カメラの検査対象となる被写体も近赤外カメラと遠赤外カメラとで異なっています。
近赤外カメラの対象は、食料品や医薬品、化粧品などの不良品検査に対し、遠赤外カメラは防犯セキュリティや車のドライビングアシスト用に、暗部での人や動くものが対象です。<近赤外カメラは、自ら熱を発するような物体の検知はできません。
そのほとんどが日中の太陽光下や照明器具による反射光を利用して観測を行います。近赤外カメラでのノイズ対策は比較的容易です。余計な反射を行う箇所を反射しない黒い布で覆えば改善できます。
遠赤外カメラは、熱を発するものをほとんど検知できるため、どんなに暗闇でも被写体と背景の間に温度差があれば、観測が可能です。ただし、日中は熱を発する物体が多くあるため、検査対象ではない物体は、すべてノイズとして観測されます。
2. 近赤外カメラの映像の見え方
近赤外線は電磁波の1種なので、人間の肉眼では見ることができない光です。しかし、可視光下で見分けがつかない被写体に対して、近赤外カメラで撮影すると、通常見分けができない被写体に対しても見分けることができるようになります。
例えば、食塩、砂糖、調味料は可視光下ではほとんど見分けがつきませんが、1.5μmの近赤外カメラで撮影すると、それぞれを見分けることが可能です。3種類の粉体の赤外光吸収度が、可視光下ではほぼ同じなのに対して、近赤外線下では異なることが理由として挙げられます。
塩は約1.1μmの吸収波長ですが、砂糖は約1.3μm、調味料は約1.5μmの赤外光吸収波長を有しています。そのため、1.5μmの近赤外カメラで撮影すれば3種類の粉体を見分けることが可能です。
参考文献
https://www.avaldata.co.jp/solution_imaging/near_infrared/near_infrared_camera.html
https://www.avaldata.co.jp/products/imaging/near-infrared-camera
https://www.asanumashoukai.co.jp/sanki/industry/photographic-equipment/ingaas
https://www.ko-pro.tech/200317marutto/