輪転機とは
輪転機とは、回転する円筒の間に印刷紙を通しながらインキを移して印刷する機械です。
回転する円筒に湾曲する印刷版を取り付け (版胴) 、版胴についたインキをブランケット胴と呼ばれる転写ローラーに一旦移します。巻取り紙と呼ばれる印刷紙をブランケット胴と圧胴と呼ばれる円筒との間に挟みながら巻き取ることにより、印刷を行います。オフセット印刷の印刷機の1つで、両面印刷や多色印刷を高速で処理することが可能です。新聞やチラシなど、多量に印刷するものを得意としています。なお、巻取り紙を使用する輪転機に対し、カットした紙を使用する印刷機は枚葉機と呼ばれています。
輪転機の使用用途
輪転機は、主にオフセット印刷で低コストかつ大量に印刷する際に使用されます。具体的な印刷物の例には下記が挙げられます。
- 新聞
- 折込チラシ
- 雑誌
- フリーペーパー
- ビラ
- ポスター
発行部数が多く、比較的薄手の紙に印刷されるものが中心です。輪転機は大量に同じ原稿を印刷する場合、コピー機、複合機に比べてコストが安くなるという特徴があります。不動産業界におけるポスティングチラシ、自治会の配布物や、学校・塾・予備校やPTAなど、教育関係における大量の印刷物に使用される場合もあります。
輪転機の原理
1. 印刷の基本的な仕組み
輪転機の基本的な仕組みは、巻取り紙と呼ばれる印刷紙をセットし、インクの乗ったブランケット胴と圧胴の間を巻取り紙を通過させて印刷を行うというものです。色は単色もしくは2色刷りが主流で、毎分100枚以上で高速かつ大量に印刷することが可能です。
- 製版したアルミ製の刷版が輪転機の版胴と呼ばれる部分にセットされます。
- 版に湿し水とインクをのせ、インクを一度ブランケット胴 (樹脂やゴム製の転写ローラー) に移します。
- ブランケット胴と圧胴と呼ばれる円筒を回転させ、これらの間を巻取り紙に通過させて印刷します。
輪転機はブランケット胴にのったインクを用紙に転写するため、紙と版が直接触れ合わない印刷方法です。このような印刷方法をオフセット印刷と言います。版が直接紙と触れないことから摩耗が少なく、大量印刷に向いている手法です。
2. 印刷の特性と印刷後の処理
輪転機による印刷は、両面多色印刷で行われるため高速印刷が可能です。インクの乾燥を早くするため、熱で急速に乾燥するインク (ヒートセットインキ) を使用し、印刷後はドライヤー部分を通過して乾燥します。このため、輪転機による印刷は紙が縮みやすいです。
高温になった用紙は冷却されたローラーに巻き取られることで冷却された後、規定のサイズへの用紙の折り、裁断が行われます。
輪転機は非常に大型の設備です。大きいものでは全長40メートルにもなります。セットできる巻取り紙のサイズは輪転機によって異なります。
輪転機の種類
輪転機の種類には、新聞用輪転機や、グラビア輪転機などがあります。また、圧胴の構造により、B-B型・共通圧胴型・圧胴型などの分類があります。
新聞用輪転機は、文字通り新聞の印刷に使用される輪転機です。グラビア印刷とは、シリンダーと呼ばれる円柱型の金属の凹み (セル) にインキを入れ、余分なインキを落として被印刷体に印刷する印刷方式です。セルの深さで濃度を調整するため、階調を持つ画像 (写真など) の再現性が高いことが特徴として挙げられます。機器によっては、耐油剤や撥水剤を塗布する機能性印刷も可能です。
輪転機のその他情報
輪転機を使用した印刷の工程
輪転機を使用した印刷工程全体は、大きく次の3つのステップに分けることができます。
- プリプレス工程
印刷する原稿の構成、デザイン、編集から製版を行う工程です。 - プレス工程
プリプレス工程で作成した版を用いて印刷を行う工程です。巻き取り紙のセット、版の取り付け、インクの調整などの準備を行った後に、印刷を開始します。刷り初めは、印刷ずれや濃度など異常がないか確認しながらゆっくり印刷を回しますが、その後は、回転数をあげて高速に印刷を行います。 - ポストプレス工程
印刷した紙の後加工を行う工程です。最終的な印刷物のサイズに合わせて断裁を行います。用途に応じて、2つ折り、4つ折りなどの折り加工やラミネートや箔押しなどの処理を施す場合もあります。
参考文献
https://www.shinkohsha.co.jp/blog/rinten_maiyou/
https://www.ohw.jp/html/page245.html
http://www.grand-pt.co.jp/index.php?page=Type-Print