精密水準器とは
精密水準器は、高度な水平の基準が要求される精密機器などの製造工程などで、水平を確認するために使用されます。液体の内部にある気泡の位置を測定することによって、精密水準器の位置がどの程度の傾斜があるかを測定します。JIS規格によって、水準器の精度が厳密に定められています。基本的には、目視によって水平を確認しますが、気泡の位置をセンサで測定することによって、デジタル信号として傾斜度合いを入手できる精密水準器も発売されています。
精密水準器の使用用途
精密水準器は、精密機器や半導体、ディスプレイなどの製造工程など、高い精度が要求される製造現場で使用されます。工作機械や製造装置の動作前や設置時に使用します。作業ごとに高度な水平が要求される機器に搭載されている場合もあります。精密水準器の選定の際には、測定精度や振動への強さ、デジタル式かアナログ式か、使用する環境に適しているかどうか、測定のしやすさ、サイズなどを考慮する必要があります。
精密水準器の原理
精密水準器の測定原理を説明します。精密水準器は、精密に目盛り付けされ、水平などが担保されている容器、容器が取り付けられている精密な筐体で構成されています。容器はわずかに湾曲しており、その容器の内部には、規定量の液体と気体が入っています。デジタル式の場合は、気泡を観測する部分にイメージセンサが内蔵されています。
目視での測定時は、気泡が容器にある目盛りのどの位置にあるかを目視で確認することにより、精密水準器が位置している場所の傾斜を測定します。デジタル式の場合は、センサから取得した画像を処理することによって、どの程度の傾斜があるかを内蔵されている制御基板で計算し、表示部に表示します。また、傾斜の度合いを電気信号としてその他の接続可能な機器に伝達し、フィードバック制御などを行い、水平を保つためのセンサとして機能することも可能です。仕組み上、振動が多い環境や高温の環境下では、正常に機能しない場合があるため、注意が必要です。
精密水準器の種類
精密水準器は日本工業規格であるJISによって、その構造や精度が決められています。
精密水準器は感度によって種類が三つに分けられています。水平器の感度は、一種(0.02mm/m、約4秒)、二種(0.05mm/m、約10秒)、三種(0.1mm/m、約20秒)の三種類にJIS規格で定められています。感度とは、気泡を1目盛移動させるのに必要な傾斜角のことで、感度表示は底辺1メートルに対する高さが基準になります。
例えば1種の場合、底辺1メートルに対し0.02mmの高さを1目盛で検出します。300mmのサイズの水準器(1種:感度0.02mm/m)を用いて気泡が1目盛移動している場合、水準器の端から端まで6μmの高さの違いがあります。
また感度は、傾斜角度(秒)でも表されます。角度1秒とは、1mにつき4.85μmです。
- 1種 0.02mm/m = 角度4秒 = 0.00111°
- 2種 0.05mm/m = 角度10秒 = 0.00277°
- 3種 0.1mm/m = 角度20秒 = 0.0055°
精密水準器の等級
精密水準器は性能(精度)によって、JISではA級とB級に等級が分かれています。各性能の交差は以下の通りです。精度とは、計測器が表す値又は測定結果の正確さと精密さ(ばらつきの小さい程度)を含めた総合的な良さで、測定のばらつきのことです。測定を行った際に、測定値±精度となり、±精度の中に測定目的の真の値が含まれる形になります。
JISでは精度は以下の通りとなっています。
- 全範囲精度 (1種) :A級±0.5目盛、B級±0.7目盛
- 全範囲精度 (2種及び3種) :A級±0.3目盛、B級±0.5目盛
- 隣接精度 (1種,2種及び3種) :A級0.2目盛、B級0.5目盛
A級とB級で精度が異なっており、さらに1種と2種及び3種、全範囲精度と隣接精度でそれぞれ精度の値が分けられています。1種、2種、3種とは、精密水準器の種類で説明の通り、精密水準器の感度による差です。全範囲精度とは、精密水準器の全目盛範囲での精度についての規定です。そして隣接精度とは、隣接する目盛に対しての精度の規定です。
参考文献
https://www.fsk-level.com/
https://satosokuteiki.com/item/detail/3113?pid=6332
https://www.kikakurui.com/b7/B7510-1993-01.html