動粘度計とは
動粘度計とは、流体の動粘度を知るための計測具です。
動粘度は「動粘度計数」とも呼ばれ、流体の流れの伝わりにくさを表す数値です。動粘度に類似した用語に「粘度」がありますが定義は異なります。
粘度は「粘度計数」とも呼ばれ、流体の「さらさら」や「どろどろ」といった粘り気を定量的に示すものです。粘度は流体中の物体の動きにくさを表し、動粘度は流体自体の動きにくさを表すものです。また、動粘度は「粘度をその流体の同一状態における密度で除した値」と定義されており、動粘度も粘度計を用いて計測されます。
粘度、動粘度ともに日本産業規格「JIS Z 8803 液体の粘度測定方法」 によって、6つの粘度計にを用いた測定方法が定められています。
動粘度計の使用用途
動粘度はその物質の扱いやすさや性質を決定する重要なパラメーターであることから、動粘度計は流体製品の検査や製品開発の面で役立てられます。例えば、食品分野では飲料水は、粘度の差異で飲みやすさが変わり、クリーム状の食品も扱いやすさや口溶けなどが変わってきます。
食品分野以外の動粘度計の活用分野は製薬、塗料や工業油などの石油化学製品の品質管理、検査、製品開発です。
動粘度計の原理
動粘度も粘度計から測定されます。動粘度計も粘度計も同じと認識して問題ありません。JIS Z 8803では毛細管粘度計、落球粘度計、共軸二重円筒形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計、平板形回転粘度計、振動粘度計による、それぞれの粘度測定方法が規定されています。
いずれの測定原理も、流体を回転させる、細管に流す、ボールを沈める、振動を与えるなど、流体を変形させて生じる変化から動粘度を評価するものです。
動粘度計の種類
代表的な粘度計は4つあります。また、毛細管粘度計以外は計測器で測定されるのは粘度です。動粘度は粘度を密度で除して求める必要があります。
1. 毛細管粘度計
毛細管粘度計は試料となる流体を細管に通して、流れる時間から動粘度を求めます。動粘度は粘度を密度で割ったものですが、毛細管粘度計は動粘度を直接求めることができます。毛細管粘度計は長く使われてきており、価格も安価なのが特徴です。
2. 落球粘度計
落球粘度計は史料となる流体中にボールを落とし、ボールの落下時間を測定して粘度を測定します。ニュートン流体であれば、幅広い粘度の測定が可能です。ニュートン流体とは、せん断速度が変化しても粘度が変わらない流体のことです。
3. 回転粘度計
回転粘度計は試料となる流体の中に円筒形の回転子を入れて、一定の速度で回転させた際の円筒面に生じるトルクを計測することによって粘度を求めます。回転子の種類によって共軸二重円筒型、単一円筒型、コーンプレート型などの種類があります。コーンプレート型は回転数に変化を加えることによって、非ニュートン流体の流体特性も調べることが可能です。
4. 振動粘度計
振動粘度計は、試料の中に浸した振動片に一定の振動数を与えた際に受ける粘性抵抗を計測する方式です。振動粘度計は、流体が流れている状態でも測定できるのがメリットです。
動粘度計のその他情報
1. 動粘度の単位
動粘度のSI単位はm2/sです。かつてはSt (ストークス) = cm2/s が使われていました。1m2/s = 1cSt (センチストークス) になります。なお、粘度の単位はSI単位ではPa・s 、旧単位ではP (ポアズ) cP (センチポアズ) です。
2. 粘度との違い
言葉では似ている動粘度と粘度ですが、両者の関係は密度によって大きく変化します。つまり、異なる流体で動粘度と粘度を比較した際、両者の大小関係は大きく逆転することに注意が必要です。
例えば、水と乾燥空気を比較した場合、乾燥空気の動粘度は水の約15倍ですが、乾燥空気の粘度は水の約1/55程度しかありません。水の密度は乾燥空気の密度よりも約800倍以上大きいため、動粘度と粘度との関係性は大きく変化します。
なお、ギア油のようなドロっとした油の場合には、動粘度と粘度のいずれも、水よりも圧倒的に大きくなります。
参考文献
https://www.sibata.co.jp/downloads/pdf/manual/M026110-_07.pdf
https://www.atago.net/japanese/new/databook-viscosity_kind.php