高視認性安全服とは
図1. 高視認性安全服のイメージ
高視認性安全服とは、それを着用している人の存在を視覚的に周囲からの認知度を向上させ、安全に作業を行うための作業服です。
明るい場所または暗い場所などの周囲から見落とされる可能性が高い危険な場所・状況において特に必要とされます。車両や重機・建設機械などの前照灯のもとで目立つため、高視認性安全服の着用により、車両運転者や機械作業者に対して、着用者の存在を知らせることができます。建設現場や作業現場での作業を安全に行うことが可能です。
高視認性安全服の使用用途
高視認性安全服は、周囲からの認識が必要とされる様々な作業現場で使用されています。危険の伴う作業現場はその危険性や現場内の移動体速度に応じて、一般的に3つのクラスに分類されています。
1. クラス1
駐車場やサービスエリア、倉庫内・工場内の作業など、移動体速度が30km/時未満の現場です。
2. クラス2
一般道路上の作業現場や公共事業の建設作業現場、配送業者など、移動体速度が60km/時未満の現場です。各種調査・検針作業者や交通警備・整理従事者などもクラス2に該当します。
3. クラス3
移動体速度が60km/時の現場です。危険の伴う高速道路上の作業現場、線路上および空港内での作業現場などや、公共事業作業者、緊急事態活動職員が該当します。
高視認性安全服の原理
高視認性安全服は、その規格がJIS T8127で定められています。素材は蛍光生地、再帰性反射材などの、360度全方向から目で確認できる高視認性材料を使用することが必要です。色は蛍光イエロー、蛍光オレンジレッド、蛍光レッドと限定され、色度座標により明確に指定されています。
また、全方向からの視認性を確保するため、水平方向帯状の再帰性反射材および蛍光生地が、胴部、脚部および腕部を一周する構造が必要です。胴部だけを覆う高視認性安全服では、蛍光生地や再帰性反射材の幅は50mm以上と定められています。
高視認性安全服の種類
高視認性安全服では、前述のクラス1~3の各種リスクレベルに適合する製品の種類があります。各クラスによって、高視認性材料の必要面積が定められており、具体的な数値は下記のとおりです。
材料 | クラス3 | クラス2 | クラス1 |
---|---|---|---|
蛍光生地 | 0.80m2 | 0.50m2 | 0.14m2 |
再帰性反射材 | 0.20m2 | 0.13m2 | 0.10m2 |
ただし、上記表を満たしていてもレベル1であってもズボンのみの着用では適合とみなされず、必ず上着の着用が必要となります。用途に合わせたものを適切に選択することが必要です。
高視認性安全服のその他情報
1. 蛍光
蛍光色とはその色によって吸収された波長の色より長い波長を発するため、一般の色に比べより鮮明に見える色のことです。具体的な色には、蛍光イエローや蛍光オレンジなどがあります。
原理は蛍光色素の分子が高エネルギーの光を吸収し、吸収した光よりも長い波長の光を放出することによります。蛍光生地は日中に鮮やかに見える一方、基本的に夜間に光を当てても反射しないため、注意が必要です。
2. 再帰性反射材
図2. 通常の反射と再帰性反射の比較
再帰性反射材とは、ある方向から入射してきた光が面に照射された後に同じ方向へ反射される特性を持った材質のことです。光がどのような方向から当たっても、入射方向に向かって反射するよう光学的に工夫されており、特に夜間に効果的です。
図3. オープンビーズ型と封入ビーズ型
高視認性安全服の表面にコーティングされる再帰性反射材素材は、微細ガラスビーズやプリズムなどです。特に、ビーズ加工のものには、オープンビーズ型 (ビーズが表面に露出している) と封入ビーズ型の2種類があります。オープンビーズ型の方が反射性に優れている一方、封入ビーズ型ではビーズの表面が平滑な樹脂層で覆われているため汚れの除去が容易です。
封入型では降雨などによる反射性能の低下がほとんど認められないのが利点です。
参考文献
https://www.kobe-sanuki.co.jp/setsumei/jist8127.html
https://jsaa.or.jp/