スケール防止剤

スケール防止剤とは

スケールの堆積とスケール防止剤の概要

図1. スケールの堆積とスケール防止剤の概要

スケール防止剤とは、送排水施設や設備、配管内などに堆積した水の不溶な水垢 (難溶性の塩) を除去する薬剤です。

地下水などに溶け込んでいるシリカ、マグネシウム、カルシウムなどのミネラル分が、空気との接触による酸化、圧力や温度の変化などによって、水に溶けにくくなり析出して結晶化した物をスケール (Scale) と呼びます。

スケールが配管設備などの内部で結晶化して固着した場合、除去することが困難となり、送排水に問題が生じます。スケール防止剤は、このようなスケールの析出を抑制したり、析出したスケールを分散させる目的で使用される薬剤です。

スケール防止剤の使用用途

1. 配管・送排水施設

一般的に水中には様々なイオンが含有されています。陽イオンでは、カルシウム、マグネシウム、鉄、バリウムなどが含まれ、陰イオンでは炭酸イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオン、ケイ酸イオンなどが含まれています。スケールとは、これらのイオンが過飽和状態となって析出する難溶性の塩です。スケールが発生する原因には、加熱や冷却、pHの変化などが挙げられます。また、温泉水には無機質成分が多いため、特にスケールが堆積しやすい性質があります。

工場の製造現場や温泉のボイラー、熱交換器などにおいては、配管にスケールが詰まると、送排水に大きな圧力が必要です。水の循環速度が遅くなることで生産能力や熱効率が低下し、また、機器故障の原因にもなります。運営コストや管理コストの増加要因でもあります。スケール防止剤は、このようなスケール堆積による不具合を防止するために使用される薬剤です。工業的には、ボイラーや冷却塔の冷却水配管、食品工場の配管などにも使用されています。

2. その他

スケール防止剤は、送排水の他に、鏡や自動車の表面にできるウロコ状のスケールを取り除く際にも使用されます。

スケール防止剤の原理

1. 概要

スケール防止剤は、水中に溶解している無機成分に対してスケールの析出・堆積を防止する効果があります。主な作用としては、

  • 無機成分と結合して静電反発作用によって安定化する
  • 立体障害作用を利用して安定化する
  • pH調整や脱酸素剤として作用する

などの種類があります。

2. 静電反発作用

スケール防止剤による静電的反発の模式図

図2. スケール防止剤による静電的反発の模式図

静電的反発作用を用いたものでは、スケール防止剤がマイナスの電荷を持ち、無機イオン成分同士の接近・結合を抑制します。溶解している状態が安定となり、析出しにくくなる仕組みです。

3. 立体障害

スケール防止剤による立体的反発の模式図

図3. スケール防止剤による立体的反発の模式図

立体障害の作用を用いたものは、側鎖構造が大きく立体障害の高いスケール防止剤が水中の無機イオンと結合します。その結果、イオン成分同士の結合を立体的に阻害して反発し、水中での安定性が増して溶解状態が安定となります。

4. その他

温泉などのカルシウム系のスケールは、酸性条件下で溶解させることが可能です。このため、塩酸などのpH調整剤や脱酸素剤を除去剤として有効に用いることができます。尚、シリカ系のスケールは、酸性洗剤でも落ちにくい特徴がありますが、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムに良く溶けるため、これらが主成分である除去剤を用いることで、対策が可能です。

スケール防止剤の種類

スケール防止剤には、温泉で用いられることの多い製品と、主に工業配管で用いられる製品などの種類があります。

1. 温泉用途など

温泉用途では特に無機イオンの成分が多く、また温泉によっても成分の種類が異なるため、泉質に合わせた製品展開です。鉄系スケールに特化した製品や、鉄・カルシウム・硫酸カルシウム・複合スケールなど広く付着を防止する製品などがあります。また、温泉や、食品工場などで用いられるスケール防止剤には、食品添加物を原料に用いた、人体への安全性が高いものもあります。

2. 工業用

工業用では、特に冷却水での需要が多いことから冷却水向けの製品が販売されています。中には、スケールの防止とともに、冷却水系で繁殖しやすい細菌の防除、スライム、腐食予防が同時に可能なものもあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/grsj1979/25/3/25_3_163/_pdf

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