SCS14

SCS14とは

SCS14とは、日本産業規格 (JIS) に規定されているステンレス鋳鋼の一種です。

ステンレス鋳鋼は、主にクロムとニッケルを含む合金元素を添加した鋳鉄に分類される鋳造材料の一種です。化学組成はオーステナイト系ステンレス鋼の一種であるSUS316に相当します。オーステナイト系ステンレス鋼とは、主にクロムニッケルを含む合金元素を添加した鋼材の一種です。SCS14は、一般的な鋳鉄や鋼材に比べて耐腐食性、耐熱性、耐摩耗性が優れており、非常に広い範囲で使用されています。

SCS14の使用用途

1. ボルト、ナット、シャフト、バルブ

バルブ (英: valve) とは、液体や気体などを流通する管路やタンクなどの流路を開閉するための装置 (弁) であり、流体が通過するパイプや管路の中に設置されています。

2. フランジ

フランジ (英: flange) とは、配管やタンクなどの流路の接続部分にある、平面または凸面状の板状部品のことです。

3. フィッティング (配管継手) 

フィッティング (英: fitting) とは、配管やホースなどを接続するための部品の総称で、配管やホースを接続する部品だけでなく、分岐や結合、制御などの機能を持った部品も含まれます。

4. ポンプ部品

ポンプ部品はインペラ、キャップ、シャフトなどです。インペラ (英: impeller) とは、ポンプやタービンなどの回転機械の部品の1つで、回転する軸の周りに取り付けられた羽根状の部品のことです。

5. タービンブレード

タービンブレード (英: turbine blade) とは、タービンなどの回転機械の部品の一つで、流体の力を利用して回転運動を生み出すための羽根状の部品のことです。

6. ベアリング

ベアリングとは、回転する軸の周りで摩擦を減らし、動きを円滑にするために使用される機械部品のことで、一般的に、内部に球やローラーなどの転がり要素を含んでおり、外部の輪と内部の輪の間に配置されます。

7. その他

その他としては排水管、電気通信部品、照明器具、外壁材料、屋根材料などにも使用されています。

SCS14の性質

1. 化学組成

SCS14の化学組成は下記のとおりです。

  • 炭素 (C) : 0.08%以下
  • シリコン (Si) : 2.00%以下
  • マンガン (Mn) : 2.00%以下
  • リン (P) : 0.040%以下
  • 硫黄 (S) :0.040%以下
  • ニッケル (Ni) : 10.00%~14.00%
  • クロム (Cr) : 17.00%~20.00%
  • モリブデン (Mo) : 2.00%~3.00%

2. 耐食性

SCS14は耐食性に優れています。主な理由は次の2つです。

1つはクロムの添加による効果です。クロムの添加によって、SCS14表面には非常に硬く薄い保護膜が形成され、内部が腐食しても表面が損傷されないため、耐食性を維持できます。保護膜は非常に硬く、薄いため、鋳鉄の内部が腐食しても表面が損傷されることがなく、耐食性を維持できます。

もう1つは均一な結晶構造による効果です。SCS14は高い溶融度を持っているため、鋳造工程において均一に充填されます。均一に充填された鋳造品は内部の結晶構造が整然としており、微細な粒子が形成されます。そのためSCS14の耐食性が高くなります。

3. 耐熱性

SCS14は耐熱性にも優れています。主な理由は次の2つです。

1つは合金化による効果です。SCS14に含まれるクロム、ニッケル、モリブデンなどの合金元素は高温下でも化学的に安定し、鋳鉄の内部が融解することを防ぐため、耐熱性を向上させます。また、合金元素同士の相互作用によって、より強い化学結合が形成され、鋳鉄の内部での微細な結晶構造が形成されます。これらの特性によって、SCS14は高温下でも強度を維持し、変形やクラックの発生を抑制できます。

もう1つニッケルの添加による効果です。ニッケルは高温下でも柔軟性を持ち、熱膨張率が低いため、高温での変形やクラックの発生を防げます。また、ニッケルは酸やアルカリ、海水などに対する耐性が高く、腐食に強いため高温下での耐久性を向上させます。

4. 強度と硬度

SCS14は強度に優れています。理由はクロムとニッケルの添加により、鋳鉄の耐食性や耐熱性が向上するためです。また、合金元素同士の相互作用により、鋳鉄の強度が向上します。さらに、高い溶融度により均一な結晶構造が形成され、鋳造品の品質が向上し、強度や硬度が向上します。

5. 耐疲労性

SCS14は疲労強度に優れていることも特徴の1つです。主な理由は次の2つです。

1つは均一な結晶構造による効果です。SCS14は高い溶融度を持ち均一に充填されるため、内部の結晶構造が整然としており微細な粒子が形成されます。微細な粒子は疲労の影響を受けにくく、鋳鉄の疲労強度を高めます。

もう1つは組織の均一化による効果です。SCS14は鋳造時に適切な熱処理を行うことで、組織を均一化できます。組織の均一化によって、不均一な部分による応力集中を軽減し、鋳鉄の疲労強度を向上させます。また、適切な熱処理によって組織の安定性を向上させて疲労寿命を延長します。

6. 非磁性

SCS14は非磁性材料です。SCS14はクロムとニッケルの合金であり、非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼に分類されます。クロムとニッケルは、鉄と結合して非磁性の化合物を形成するため、材料全体が非磁性になります。

フェライト相 (磁性) とオーステナイト相 (非磁性) からなる二相性材料ではなく、単一のオーステナイト相で構成されているのが特徴です。オーステナイト相は、外部磁場に対して磁化されることがなく、非磁性となります。

また、SCS14は熱処理によって組織を制御できます。加熱によってオーステナイト相が形成され、急冷することで組織が固化し、磁性を持つフェライト相を含まない組織が得られるため非磁性材料となります。

7. 腐食性

SCS14は耐食性に優れていますが、塩水中での腐食に弱いため特に海水中での腐食には注意が必要です。SCS14が耐食性に優れている理由は、主にクロムとニッケルの添加による効果です。クロムとニッケルは、空気中や非常に薄い酸性やアルカリ性の液体中など、多くの環境で腐食に対する耐性を持つ金属元素です。

しかし、塩水中に長期間曝露されるとクロムの添加による効果が弱まり、海水中の塩分や酸素によって腐食が進行することがあります。また、海水には海藻やプランクトンなどの微生物が含まれており、これらの微生物が表面に付着すると腐食が促進されることがあります。

8. 溶接性

SCS14は溶接性が良くありません。理由の1つは結晶粒の粗大化です。SCS14は高い溶融度を持っているため、溶接時に急激な冷却が起こることで結晶粒が粗大化する場合があります。結晶粒が粗大化すると、強度や耐食性が低下し、欠陥や亀裂が生じやすくなります。

もう1つは酸化皮膜による影響です。SCS14はクロムを含むため、表面に酸化皮膜が形成されます。溶接時には高温になることで酸化皮膜が膨張して破裂することがあります。また、酸化皮膜は溶接時に溶けにくくなり、不良や強度低下の原因となることがあります。

SCS14のその他情報

特殊な成形

SCS14は、鋳造材料であるため、複雑な形状の部品や大型の部品を製造できます。鋳造は、他の製造方法と比較して形状やサイズに柔軟性があるため、SCS14を使用することで特殊な形状の部品を効率的に製造できるのが利点です。また、鋳造によって材料の均質性が高く、内部欠陥や不均一な構造が発生することが少なく、強度や耐久性に優れています。

関連する金属材料

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です