高力黄銅

高力黄銅とは

高力黄銅とは、六四黄銅にマンガン、アルミ、鉄を添加することで硬度や耐摩耗性を向上させた黄銅合金の一種です。

銅と亜鉛の合金でできており、機械加工性が優れている材料です。また、磁気特性が非常に低く電気伝導率が高いため、電子部品やコネクタ、配線端子などにも使用されています。自己潤滑性があり加工時に熱が発生しにくいため、加工性が良好です。また、塩水中での耐食性が高く熱にも強いため、海洋環境や高温環境でも使用されます。

高力黄銅の使用用途

1. 電気機器部品

電子部品、コネクタ、配線端子などが挙げられます。

2. 船舶、海洋設備、油田設備、高温環境の部品

  • 船舶の部品: プロペラ、クランプ、ジョイントなどの部品
  • 海洋設備の部品: バルブ、配管などの部品
  • 油田設備の部品: ポンプ、フランジなどの部品
  • 高温環境の部品: 燃焼室、エンジン、タービンなどの熱処理装置、熱交換器、歯車などが挙げられます。

3. 交通機器部品

自動車部品、バイク部品、自転車部品などが挙げられます。

4. 楽器部品

楽器、ピストン、バルブなどが挙げられます。

5. 食品関連部品

食品加工機器、調理器具、食器などが挙げられます。

6. 医療関連部品

医療機器、歯科用具、医療器具などが挙げられます。

7. アクセサリー部品

宝飾品、時計、眼鏡などが挙げられます。

8. 電気部品

電気抵抗器、スイッチなどが挙げられます。

高力黄銅の種類

JIS H 3250では,以下の2種類の高力黄銅棒が規定されています。製造方法によってC6782はさらに3種類、C6783はさらに2種類の合計5種類に分類されています。

種類 記号
合金番号 製法
C6782 押出 C6782BE
引抜 C6782BD
鍛造 C6782BF
C6783 押出 C6783BE
引抜 C6783BD

JIS H 5120では,以下の二種類の高力黄銅品鋳物が規定されています。

種類 記号
高力黄銅鋳物1種 CAC301
高力黄銅鋳物2種 CAC302
高力黄銅鋳物3種 CAC303
高力黄銅鋳物4種 CAC304

高力黄銅の性質

1. 耐摩耗性

高力黄銅は銅と亜鉛の合金でできており、亜鉛の添加によって硬度が向上しています。また、亜鉛と銅の結晶構造が違うため、合金の結晶構造が細かくなり、強度が高くなる傾向があります。高力黄銅が耐摩耗性に優れている理由は、亜鉛が銅よりも硬く、摩擦による磨耗を抑える効果があるためです。

2. 耐腐食性

高力黄銅は、亜鉛の添加により銅単体よりも耐腐食性が高まります。また、亜鉛は酸化物の形成を促進する効果があるため、亜鉛を含むことで錆びにくくなります。

3. 熱伝導率

高力黄銅は銅の熱伝導率が非常に高いため、熱が均等に伝わります。また、亜鉛の添加により耐熱性が向上します。そのため高温での使用に適した材料です。

4. 見た目

高力黄銅は金属色が美しく、見た目が高級感があるためインテリアやアクセサリーなどのデザイン品にも使用されます。

5. 電気伝導率

銅は非常に優れた電気伝導率を持っており、高力黄銅には、さらに亜鉛の添加により電気伝導率が向上した材料です。よって高力黄銅は、電気部品や接点部品に広く使用されています。

6. 非磁性

高力黄銅は非磁性体です。理由は、高力黄銅の結晶構造に亜鉛が影響を与えるためです。銅と亜鉛は、原子構造が異なるため、合金化すると結晶構造が複雑になり、磁場を作れないため、高力黄銅は非磁性体となります。

また、高力黄銅は非磁性体であるため、磁気ノイズや磁気干渉の影響を受けず、電子機器などの電磁環境に影響を与えません。そのため電子部品や機械部品など、高精度な製品に使用されることがあります。

高力黄銅のその他情報

使用上の注意

高力黄銅は、一般的に耐腐食性に優れた材料として知られています。亜鉛の添加によって銅単体よりも耐腐食性が高まり、亜鉛は酸化物の形成を促進する効果があるため、高力黄銅の表面には酸化膜が形成され、内部まで腐食が進行するのを防ぎます。よって、高力黄銅は、一般的には耐腐食性に優れている材料です。

しかし、特に酸性やアルカリ性の強い環境や長時間の使用によっては、高力黄銅の表面に腐食が生じる場合があります。そのため、使用環境や使用方法に応じた注意が必要です。また、低温下で脆性を示すことがあります。

高力黄銅は、亜鉛の添加により結晶構造が細かくなり強度が向上しますが、低温下で結晶の変化が生じると結晶粒が粗大化し、強度が低下して脆性が増すことがあります。また、高力黄銅に含まれる亜鉛が低温下で析出すると結晶構造に変化が生じ、脆性が増すこともあります。そのため低温環境での高力黄銅の使用には十分な注意が必要です。

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