スパンボンド不織布とは
スパンボンド不織布とは、熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸・ウェブ形成・熱圧着の工程 (スパンボンド製法) を経て製造される不織布です。
主にポリプロピレン (PP) 、ポリエステル (PET) 、ナイロン (PA) などが原料として用いられます。繊維を機械的に絡ませるニードルパンチ方式とは異なり、スパンボンド法では繊維が連続フィラメント状で形成されるため、強度や均一性に優れるのが特徴です。
製造工程が連続的かつ単純なため、大量生産に適し、コストパフォーマンスの高い素材として知られています。さらに、素材によっては通気性・耐水性・耐薬品性を持つため、産業資材や医療用品などの幅広い用途で利用されています。
スパンボンド不織布の使用用途
スパンボンド不織布は、工業や医療、農業などの幅広い分野で使用されています。
1. 工業・製造分野
スパンボンド不織布は、高い引張強度と寸法安定性を活かし、工業・製造分野で利用されています。例えば、自動車分野では以下の素材として利用されており、軽量化や断熱性の向上に役立っています。
- 内装材
- 天井材
- シート裏地
また、製造現場では、フィルター基材・クリーンルームの防塵カーテン・作業服などに採用されています。特に、ポリエステル系のスパンボンドは耐熱性や耐薬品性が高いため、塗装ブースや機器の保護材としても最適です。さらに、軽量で成形性が良いため、複合材の補強層や樹脂成形品の離型シートの材料としても活用されています。
2. 医療・衛生分野
医療や食品などの衛生管理が求められる分野でも、スパンボンド不織布は幅広く活用されています。特にポリプロピレン系の不織布は、軽量で通気性に優れながらも遮断性能を持つため、つなぎやマスクなどの衛生製品の素材として使用されています。
スパンボンド法で形成されたフィラメント構造は毛羽立ちが少なく、クリーンルームでの使用も可能です。また、メルトブローン不織布と組み合わせてフィルター性能を高めたSMS構造 (スパンボンド-メルトブローン-スパンボンド) のマスクも医療現場で広く使用されています。
3. 農業・土木分野
農業用では、スパンボンド不織布が被覆資材として利用されます。適度な通気性と保温性を持つため、ハウスの内張やべたがけ用の被覆材として有効です。
土木分野では、透水性と耐久性を活かし保護材や地盤の安定シートとして使用されています。耐候性の高いポリエステル系スパンボンドを採用すれば、長期にわたって強度を維持することも可能です。