不動態化処理とは
不動態化処理とは、金属表面に耐食性の高い酸化被膜を形成し、腐食の進行を防止するための化学的処理です。
主にステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどの金属に施され、表面を安定した不動態に変化させます。代表的な処理方法は、硝酸処理・フッ酸処理・クエン酸処理などです。これらの薬液に金属を一定時間浸漬することで、鉄分や汚染物を除去し、酸化被膜とも呼ばれる薄い酸化膜を形成します。この膜が金属を外部環境から保護し、錆の発生を抑制します。
不動態化処理で作られるのは1mmの100万分の1に相当する1nmほどと非常に薄い膜です。食品施設や医療機器、化学プラント設備など、衛生性や耐薬品性が求められる分野で広く用いられています。
不動態化処理の用途
不動態化処理は、食品や医療、化学などの幅広い業界で用いられています。
1. 食品業界
食品業界では、製造装置や配管、タンクなどの衛生管理が求められる設備に不動態化処理が用いられています。不動態化処理を行うことで耐食性を向上させ、清潔な状態を長期間することが可能です。
酸化膜により鉄分の溶出を防ぎ、安全な製造環境を維持できます。高い衛生管理が求められる食品業界では、錆を防ぐ不動態化処理が有効です。
2. 医療業界
医療機器や手術器具では、高い安全性が求められるため耐腐食性が不可欠です。不動態化処理を施したステンレスは、血液や薬剤などにさらされても腐食が進行しにくく、長期的に衛生性を保つことが可能です。
処理方法の中でも、クエン酸処理は残留薬品や不純物の除去に優れているため、医療機器向けのステンレス部品において、衛生性や耐食性の観点から採用例があります。
3. 化学業界
化学業界では、薬品タンクや配管、反応槽などに不動態化処理が行われます。酸や塩化物・アルカリなど腐食性物質が存在する環境下で、ステンレス鋼などに不動態化処理を行い形成された酸化膜が、金属表面での化学反応を抑制し、腐食や点食の進展を抑制します。
これにより、設備の寿命を延ばし、交換やメンテナンスにかかるコストや労力の削減が可能です。