モールド変圧器

モールド変圧器とは

モールド変圧器

モールド変圧器とは、巻線部分をエポキシなどの樹脂によって含浸モールドさせた変圧器のことです。

乾式変圧器とも呼ばれます。変圧器は電圧を変化させる際に、鉄心や巻線部分がそこでの電力損失分の熱を帯びてしまうため、放熱させる必要があります。一般的な変圧器では放熱に油が使われますが、モールド変圧器では油の使用が無いため、発火などの安全面において優れた変圧器です。

万が一の際に、発火の恐れが低いことや軽量小型なものが多いことから、屋内での使用に適しており、身近な建物の中にも設置されています。

モールド変圧器の使用用途

モールド変圧器は、主にビルなどの建物の屋内設備の電気の変圧用途が多く、その安全性の高さから様々な場所で使用されています。一例をあげると、地下鉄の構内です。地下鉄では大きな電力を消費する場合があり、変圧器を必要とします。

しかし、油入変圧器を使用すると、万が一のときに大変危険です。このように、火災が発生すると非常に危険な場面では、モールド変圧器の使用が適しています。また、マンションやデパートなどでも使われます。安全性はもちろん、小型で軽量という特徴から屋内施設での使用に適している変圧器です。

モールド変圧器の原理

モールド変圧器は、一般の変圧器が電圧を変化させる際に発生する発熱を、変圧コイルを覆うエポキシ樹脂などの樹脂モールドを介して、空気中に伝搬させて冷却しています。一般的な変圧器は、鉄心と巻線を利用して構成されており、鉄心に導線を巻いた2つのコイル状の巻線が使用されます。

この巻き線コイルの片側に電流を流すと、電磁誘導の原理でもう一方に電圧が生じます。この巻き数を調整することで、発生する電圧を調整する装置が変圧器です。

電圧を変化させる際に、鉄心や巻線は電力損失分の発熱が生じます。油入変圧器では周囲の油が熱を取り去り、水や風の力で外に放熱します。一方、モールド変圧器は乾式変圧器とも呼ばれ、油を使用しない点が最大の特徴です。

モールド変圧器のその他情報

1. モールド変圧器の長所

油を使用しないことで、モールド変圧器には油入変圧器と比較して次のようなメリットとデメリットがあります。

安全性が高い
万が一の際、油に引火して発火する恐れが無いため屋内や密閉空間でも使用できます。一方で、油入変圧器の場合は、大容量だと設置に際して消化設備の具備が必要なケースがあります。

軽量で小型
油を使用しない分、軽量で小型の構造が可能です。建物の高層部分にも設置することができます。また、油入変圧器のように内部の油のメンテナンスや廃棄手法を考慮する必要もありません。

2. モールド変圧器の短所

コストが高い
油入変圧器と比べると、内部構造の違いからコストが高くなりがちです。したがって、導入に際しては、まず油入変圧器から考慮し、適さない場合にモールド変圧器を選択することが多いです。

駆動音や振動が大きい
油入変圧器は周囲の油が振動や音を吸収してくれますが、モールド変圧器はそれが無いため、比較すると騒音が気になります。

3. トップランナー変圧器

モールド変圧器は平成19年度までに、油入変圧器は平成18年度までに「トップランナー変圧器」として、環境にやさしい高効率な変圧器を推奨する制度が官民合わせて取り組みがなされています。ここでのトップランナー変圧器の基準は、旧JIS品に比べ損失を30%低減し、エネルギー変換効率約99%という世界 最高水準レベルが目標値です。

また、2014年度からはさらにもう一段階省エネルギー性能を向上させた「トップランナー変圧器2014」への取り組みがなされ、専用のロゴマークにて従来のトップランナー品と区別された指標が用いられています。トップランナー変圧器2014の高性能な指標への対応のため、各メーカーはトランス損失の改善に向けて技術面でしのぎを削っており、その一例には待機電力効率に優れたアモルファス素材の採用があります。

参考文献
https://electric-facilities.jp/denki8/henatsu.html
https://www.daihen.co.jp/technologygeeks/cat01/cat01_01/29/
https://www.yodohen.co.jp/product/trans/mold/

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