熱媒循環装置とは
熱媒循環装置とは、温度を精密に制御したい対象物へ熱を伝えるための熱媒を循環させる装置です。
内部にヒーターや冷却器、ポンプを備えた構造です。まず、水や油、あるいは特殊な合成液といった熱媒を、設定された温度になるように加熱または冷却します。次に、その温度に調整された熱媒をポンプで目的の設備や機器へと送ります。設備や機器に到達した熱媒は熱交換することで対象物の温度を一定に保つ仕組みです。
熱交換を終えて温度が変化した熱媒は再び装置へと戻り、再度適切な温度に調整された後に再循環していきます。この一連のサイクルを自動で制御し続けることで、対象物を極めて高い精度で目標温度に維持できます。直接加熱と比較して温度のムラなく均一に、そして安定して温度管理ができる点が特徴です。
熱媒循環装置の使用用途
熱媒循環装置は以下のような用途で使用されます。
1. 化学・医薬品
化学プラントや医薬品の製造工場では、化学反応を安定して進めるために厳密な温度管理が不可欠です。例えば、原料を混ぜ合わせる反応釜の温度は、製品の品質や収量に直接影響を与えます。熱媒循環装置は反応釜のジャケットに熱媒を循環させることで、釜全体の温度を均一に保ちます。常に最適な温度を維持し、製品の安定生産を支えます。
2. 成形加工
スマートフォンや自動車部品などに使われるプラスチック製品の多くは、金型を用いて作られます。射出成形と呼ばれる加工方法では溶かした樹脂を金型に流し込み、冷やして固めます。このとき、金型の温度が適切でないと、製品に歪みが生じる問題が発生します。熱媒循環装置を使い金型の温度を精密にコントロールすることで、寸法精度の高い成形品を効率良く生産可能です。
3. 半導体・電子部品
半導体の製造では、クリーンな環境が求められます。シリコンウェハー上に微細な電子回路を描き込む工程では、わずかな温度変化も許されません。熱媒循環装置は製造装置内のチャンバーやウェハーを載せる台座の温度を、0.1℃以下の高い精度で制御するために使用されます。