ヒ素除去装置とは
ヒ素除去装置とは、対象物に含まれるヒ素を選択的に取り除装置です。
ヒ素は無味無臭で水に溶け込んでも気づきにくい特性があります。しかしながら、ヒ素を慢性的に摂取した場合、皮膚疾患や内臓がんの発症といった深刻な健康被害を招きます。そこで、安全な水質を確保するために開発されたのがヒ素除去装置です。
装置の内部には鉄系吸着材やイオン交換樹脂または逆浸透膜などが組み込まれており、ヒ素を化学的または物理的に捕捉します。多くの場合、砂ろ過や活性炭と組み合わせた多段構成が採用され、濁りや有機物も同時に除去する設計です。原水の水質や処理量に合わせて、カートリッジ型から大型タンク型まで幅広い形式で設計・販売されます。近年では技術の進歩によって運用コストも抑えられ、様々な場面で導入が広がっています。
ヒ素除去装置の使用用途
ヒ素除去装置は以下のような用途で使用されます。
1. 浄水施設・一般家庭
浄水施設や一般家庭では、安全な飲料水と生活用水を確保するためにヒ素除去装置が活用されます。大規模な浄水場では河川や地下水を原水として取水し、ヒ素をはじめとする有害物質を基準値以下まで除去することが不可欠です。一方、水道が整備されていない地域や、自家用の井戸を水源とする家庭では、小型のヒ素除去装置が設置されることがあります。
2. 製造業
製造業でもヒ素除去装置は重要な役割を担います。代表的な例が半導体の製造工程で、ヒ素のような微量な不純物も許されません。そのため、逆浸透膜などを用いた高度な除去装置で、徹底的に水が精製します。また、工場排水に含まれるヒ素を取り除くためにも導入される場合があります。
3. 食品産業
食品産業では、製品の安全性と品質を保証するため、製造工程で使われる水の管理が極めて重要です。清涼飲料水や酒類は、原料水にヒ素が含まれていると最終製品の安全性に直接影響を及ぼします。そのため、製造用水をヒ素除去装置で処理し、安全性を確保する場合があります。食品の安全基準を遵守する上で、ヒ素除去装置は工場の衛生管理の要となる設備です。