リグニンスルホン酸

リグニンスルホン酸とは

リグニンスルホン酸 (CAS登録番号8062-15-5) は、植物成分であるリグニンを部分分解し、スルホン化した化合物です。

リグニンスルホン酸は、亜硫酸法によるパルプ製造工程において、パルプ製造の副産物として得られるものです。単にリグニンと呼ばれることもあります。

植物成分のリグニンは芳香族高分子化合物であり、木などの植物体において繊維質 (セルロース及びヘミセルロース) と絡み合いながらこれを覆い、植物体の耐久性を高める役割を担っています。パルプ製造は、木材から繊維質を取り出して利用するために、化学反応によりリグニンを分解し除去する工程です。ここで除去されたリグニンが製品として活用されます。

リグニンスルホン酸は、亜硫酸法で用いられる亜硫酸に由来するスルホン基のほか、部分分解したリグニンに由来するカルボキシル基やフェノール性水酸基を持つ高分子化合物です。これらの特徴から、優れた分散性、粘結性、キレート性を有しています。

リグニンスルホン酸の使用用途

リグニンスルホン酸は、以下に示す用途に用いられています。

染料・顔料の分散剤

リグニンスルホン酸は、高分子電解質としてさまざまな粒子に化学的または物理的に吸着する一方、スルホン基による強い負の帯電によって静電的な反発を生じることで、分散状態を維持します。この性質は分散剤として優れた特徴です。

そのため、リグニンスルホン酸は染料・顔料の分散に利用されます。

黒鉛・活性炭・豆練炭の粘結剤、肥料・農薬の造粒剤

リグニンスルホン酸は、黒鉛・活性炭・豆練炭などの粘結剤に用いられています。高分子物質としての粘りを有するため、練り固めて成形する工程に適し、さらに燃焼もしやすいためです。一部の製品には、原料木材に由来するスルホン化された糖類が含まれており、粘りを強めることに寄与しています。

また、練り固めて成型する用途として、肥料や農薬の粒を形成することにも用いられています。

水処理剤・ボイラー清缶防食剤・土壌改良剤

リグニンスルホン酸はスルホン基・カルボキシル基・フェノール性水酸基を有しており、多価金属イオンをキレートする性質を持ちます。水処理剤・ボイラー清缶防食剤・土壌改良剤としての用途は、キレート性を活用した利用法です。

水処理において多価金属イオンを捕捉して除去したり、あるいは土壌に欠乏している多価金属イオンを保持させて土壌に添加することで土壌改良に役立てたりすることができます。