錫めっき

錫めっきとは

錫めっきとは、金属の表面に錫のめっき皮膜を付加する表面処理技術です。

錫を溶かしためっき液に金属 (鉄や銅の板や部品など) を浸して通電することで、めっきを施します。錫めっきの特徴は、錫の性質である、錆びにくい、熱を伝えやすい、電流をよく通す、柔らかい、融点が低い、毒性が低い、などを反映したものとなっています。

錫めっきのメリットは、以下のとおりです。

    • 鉄など、錆びやすい金属の表面処理として、錆び防止を図ることができます。
    • はんだ付け時に、はんだののりが良いです。熱を伝えやすく融点が低いためです。
    • 錫めっきに用いられる無機錫は毒性が低く、食品に接触する用途にも適します。
    • 錫は柔らかいため、めっき加工後も曲げたり延ばしたりの加工がしやすいです。

    なお、錫めっきのデメリット・注意点は、以下の点があります。

    • ウイスカ (ヒゲ状の突起) が発生しやすいです。ウイスカはめっき実施後に潜伏期を経てから成長することがあり、特に電気部品では短絡などの問題を引き起こします。ウイスカは錫の単結晶であり、これを発生させない対策は下地にニッケルめっきを行う、合金めっきとする、めっき後に熱処理をするなど、製造条件の総合的な設定にノウハウがあります。
    • 硬い物質によって簡単に傷が付きやすいです。また、錫の皮膜が傷ついて下地が露出すると、下地の金属が錆びる可能性があります。亜鉛めっき鉄板 (トタン)においては、亜鉛が鉄より先にイオン化し溶け出すことで鉄部を守る効果 (犠牲防食) が知られていますが、錫めっき鉄板 (ブリキ) にはその効果はありません。
    • 融点が低いため、高温下での使用に適しません。
    • 錫は色素を吸着しやすく、製品が着色・変色しやすいです。

    錫めっきの使用用途

    錫めっきの使用用途の例を以下に示します。

    1. 調理器具

    銅製の鍋の表面処理に錫めっきが用いられます。銅は熱伝導性・蓄熱性とも優れており、銅鍋は調理において重要な役割を持ちますが、錆びにくくするため、あるいは銅が溶け出して食品を変色させるのを避けるために、錫めっきが施されることが多いです。

    2. 缶 (ブリキ缶)

    食品缶詰を含む、各種収納缶にブリキ (錫めっき鋼板) が用いられます。缶を構成する鉄の防食のためです。

    3. 電気製品の部品

    はんだ (鉛と錫を主成分とした合金) 等の接点を形成する素材となじみが良く、はんだ付け性に優れているため、電気製品の部品に用いられます。

    4. 軸受部品・煽動部

    錆に強く、表面を平滑にできるため、自動車や機械設備の軸受部品など煽動部の部品に用いられます。