回折光学素子とは
回折光学素子とは、光の回折現象を効果的に利用した光学素子です。
光は、障害物にあたったり小さな穴を通過したりした後、その先に広がって進んで行く性質を有します。この現象は回折と呼ばれています。光の回折が現れるのは、障害物や隙間の大きさがその波長と同じ程度か、あるいは小さい時です。微小な部分に当たって反射した光も回折を起こして広がります。回折光学素子はDOE (英: Diffractive Optical Element) とも呼ばれ、微細加工技術の進展により簡単に作れるようになりました。小型化、軽量化に向いており、CDやDVD用の光ピックアップやディスプレイ用素子、撮影レンズなどさまざまな分野で応用されています。
回折光学素子の使用用途
回折光学素子は光学関連の幅広い分野で使用が広がっています。
1. 光ピックアップ
CDやDVD用の光ピックアップが、回折光学素子の代表的な使用例です。CDやDVDは、樹脂板の表面に極めて小さな凹凸をつくることでデータを記録します。樹脂板にレーザー光を当て、反射した光によってデータを読み取ります。この読み取る装置が光ピックアップです。光ピックアップへの回折光学素子の活用は、読み取り精度の向上とともに小型化にも大きく寄与しています。CDやDVDの表面が虹のように色づいて見えるのは、反射した光が回折を起こして広がる現象です。
2. ディスプレイ用素子
回折光学素子は、カラーフィルタとしてディスプレイ用素子に応用されています。回折光学素子は光の波長で進む方向が変化します。この特性を利用すれば、波長の異なる光の三原色 (赤、緑、青) の成分を異なった方向に回折させることが可能です。そして、それぞれの画素に集光させることでカラーフィルタを構成します。回折光学素子はフィルタによる減衰が生じないため高感度のディスプレイが実現できます。
3. 撮影レンズ
撮影レンズは、自然光が使用される装置に回折光学素子を利用している例です。ここでは同心円状の格子を持つ2枚の回折光学素子を向かい合わせに配置させています。この配置で不要な回折光の発生を抑え、写真へのフレア光の映り込みがなくなります。撮影レンズは、回折光学素子により小型化および軽量化を実現しています。