砂防工事

砂防工事とは

砂防工事とは、山地や河川で発生する土砂災害を防止し、人命や財産、生活環境を守るために行われる工事の総称です。

砂防工事の重要な特徴としては、予防的な観点から実施されることが挙げられます。災害が発生する前に危険箇所を特定し、適切な対策を講じることで被害を未然に防ぐことを目指します。また、砂防工事は単に構造物を設置するだけではなく、流域全体の地形や地質、植生といった自然環境を総合的に考慮し最適な対策を立案・実施することが求められます。

日本の砂防工事は、急峻な地形と多雨という気候条件から古くから重要な役割を担ってきました。近年では高度な技術の導入により、より効果的に土砂災害を防ぎ安全な国土づくりに貢献しています。さらに環境への配慮も重視され、自然と調和した砂防対策が求められています。

砂防工事の使用用途

砂防工事は、土砂災害から人々の生活を守るために、発生が想定される現象 (災害の種類) に応じて適切な対策が講じられています。主な対策としては以下のとおりです。

1. 土石流対策

土石流対策は、豪雨による土石流を制御し下流域の被害を軽減するために実施されます。主な対策として、砂防ダムを設置して土砂を捕捉し流速を低下させる方法があります。さらに渓床に段差を設けたり、渓流を横断する構造物を設置して土砂を貯めたりすることで渓流の勾配を緩やかにします。また、水の流れを制御し流路を安定させることも重要です。これらの対策により、土石流の勢いを抑え被害を最小限にとどめることができます。

2. 地すべり対策

地すべり対策は不安定な斜面での地すべりの発生や進行を抑制するために行われます。主な対策として、土留め壁の設置や杭・ワイヤーによる斜面の補強により安定化を図ります。また、水路の設置や地中への管の埋設により地下水位を下げることも重要です。これらの対策を組み合わせ、地すべりによる家屋倒壊や道路寸断などの被害を軽減します。

3. がけ崩れ対策

がけ崩れ対策は、急峻ながけ地での岩盤崩壊や落石を防ぐために実施されます。主な方法として、がけ地の表面をコンクリートなどで覆って保護する工法や、格子状の枠を設置して斜面の崩壊を抑える工法があります。また落石対策として、落石防護網や落石防護柵の設置が一般的です。特に落石防護網は落石のエネルギーを吸収し、道路や鉄道などへの被害を軽減する効果があります。

4. 火山噴火対策

火山噴火対策は、火山活動に伴う土石流や泥流の被害を軽減するために行われます。火山周辺への砂防ダム設置により、噴火で発生する大量の土砂を捕捉します。また溶岩流や泥流を安全な方向に誘導する導流堤を築造し、集落や重要施設への被害を最小限に抑えることも重要な対策です。