グリースニップルとは
図1. グリースニップルの概要
グリースニップル (英: Grease Nipple) とは、グリース潤滑を行っている機械などに取り付け、グリースガンなどの給脂機器を使用しグリースを補給するために、給脂口 (注入口) として使用する部品のことです。
給脂とは、グリースなどの粘性のある半固形状 (ペースト状) の潤滑材を、機械などに補給することを指します。給油とは、液状のオイルなどの潤滑材を補給することです。
グリースニップルの使用用途
図2. グリースニップルの使用用途
グリースは潤滑剤の一種で、低速回転でも大きな荷重のかかるような箇所のローラーベアリング (転がり軸受) や、メタル、ブッシングの滑り軸受を使用している箇所に使用されています。グリースニップルは、このようなグリース潤滑を行っている機械や部品で、補給が必要な場合に取り付けられています。
一般的にグリース潤滑を行っている機械などは、組み立て時にあらかじめ規定量のグリースが充填されています。しかし、機械の運用時間の経過とともに、グリースは減量していきます。そのため、定期的なグリースの補給が必要です。
グリースニップルを取り付けることで、機械などを分解することなく機械外部から容易に給脂することができます。グリースの給脂が必要な個所は、作業性の良い場所もあれば、悪い場所もあります。
グリースの注入作業を想定し、作業性の良いグリースニップルを選定し使用することが必要です。そのため、グリースニップル先端部の形状は数種類あります。
グリースニップルの原理
グリースニップルの先端部は注入されたグリースが逆流しないように、逆止弁構造になっています。グリースニップル先端内部には、小さな鋼製のボールが組み込まれています。
ボールはスプリングによって常にボディに押し付けられ、グリースが漏洩しないよう封止するのが役割です。グリースの給脂は、グリースガンなどを使用し圧力をかけることで、グリースがボールを押し込み、注入口とボールの隙間からグリースが流入します。
グリースニップルの種類
グリースニップルは下記の規格などにより形状、寸法、材質などが規定されています。
- JIS B1575: 2000 グリースニップル Grease nipples
- ISO 6392-1: 1996 Earth-moving machinery -Lubrication fittings- Part 1: Nipple type
JIS B1575では、グリースニップルの種類は1~5形の5タイプあり、それぞれで材料が2種類 (表面硬化処理を含めると3種類) があります。
図3. グリースニップルの種類と形状
1. グリースニップルの形状
- 1・2形
1・2形は、ストレートタイプで、取り付け用穴の中心と注入口は同軸で、グリースガンなどのホースに取り付けられている口金をまっすぐ押し当て注入します。1形と2形の違いは、取り付けねじ部のねじ仕様で、1形は平行ねじのM6x0.75で、2形はテーパねじのR1/8です。 - 3形
取り付け用穴の中心に対して、45°傾いて取り付けられています。 - 4形
取り付け用穴の中心に対して、65°~67.5°傾いて取り付けられています。 - 5形
取り付け用穴の中心に対して、90°傾いて取り付けられています。
1~5形のグリースニップルから、グリースガンのホースと口金が差し込みやすく作業性が良い形式を選定します。グリースニップルの外形寸法JIS規格により定められていて、口金差し込み部寸法は同寸法で共通です。JIS規格適合の口金付きのグリースガンであれば、メーカを問わずグリース補給が可能です。
2. グリースニップルの材質
グリースニップルの材質は下記2種類があります。
- 鋼製 JIS G4051 S15C、S20C または JIS G4804 SUM22~SUM241
- 黄銅製 JIS H3250 C3601~C3604
なお、JIS B1575では1994年の改定前に規定されていた従来形の形状及び寸法は「付属書3」に、また参考用にボタンヘッド及びピンタイプの形状および寸法は「付属書4」に記載されています。ボタンヘッドおよびピンタイプは、それぞれ専用の口金が必要になりますが、ニップルへの差し込みが容易で外れにくいのが特長です。
図4. ボタンヘッドとピンタイプの形状
グリースニップルは、主にグリース給脂 (減量した分を追加で補給すること) するとき以外は使用されることはありません。そのため、グリースニップルの開口部から粉塵などの異物が混入しないように、付属品としてキャップがあり取り付けることがあります。
グリースニップルのその他情報
グリースニップルの給脂方法
図5. グリースニップルの給脂方法
グリースニップルへの給脂は、一般的にグリースガンを使用します。手動グリースガンはハンドルを握り往復動させグリスチューブ (グリースを収納しているチューブ) を加圧しグリースを注入させます。また、手動以外にも電動タイプもあります。
グリースガンにはタイプがありますが、タイプに関わらず、注油時のグリースニップルとグリースガン差し込み口の角度には注意が必要です。斜めになっていると正しく注油できず、注油口の隙間からグリースがあふれてきます。グリースニップルとグリースガン差し込み口は真っすぐになるよう注意して給脂を行ってください。
参考文献
https://neji-one.com/lineup/S0161001.htm
http://www.cup-kurita.co.jp/lib/index.html#l03
http://www.mekatoro.net/mechatro_parts/vol3/pdf/P06-065.pdf
http://kikakurui.com/b1/B1575-2000-01.html
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/221000613678/