電着塗装

監修:株式会社カワイ化工

電着塗装とは

電着塗装とは、電気を使用して金属などの表面に塗料を塗布する方法です。

一般的には金属を導電性のある塗料に浸し、直流電流を流すことで表面に固着させます。均一で密着性の高い塗膜を形成することが可能な点が特徴です。電着時間や電圧を制御することで、厚みをコントロールすることも可能です。

また、塗膜が密着しているため、耐摩耗性や耐薬品性が高く、長期間にわたって保護効果を持続させることが可能です。塗装プロセス中に発生する排出物や揮発性有機化合物 (VOC) の放出も少ないため、環境への影響も少ない点も特徴の一つです。したがって、自動車や建築などの様々な産業で広く利用されます。

電着塗装の使用用途

電着塗装は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車

自動車のドアやボンネットなどのボディに電着塗装が広く利用されています。これにより、耐久性や防錆性が向上し、車両の寿命を延ばすことが可能です。また、 エンジンの各部品、特に鉄製の部品には耐熱性の高い電着防錆塗装を適用することが多いです。

2. 建築物

電着塗装は鉄骨や鋼材などの建築用金属部品の表面保護に使用されます。これにより、建物の外観や耐久性が向上し、防錆性を付与することが可能です。また、アルミニウムの軽量性と耐食性を活かすため、建築用のアルミニウムパネルや窓枠などに電着塗装が施される場合もあります。

3. 家具

家具の金属製品には耐久性や外観美を向上させるために電着塗装が施されます。スチール製のテーブルや椅子、キッチン用品などがその一例です。これにより、家具の耐摩耗性や汚れに対する耐性が向上させ、長期間美しい外観を維持することが可能です。

4. 農業

電着塗装は農機具にも広く使用されます。耕運機や播種機の部品または噴霧装置のフレームなどがその一例です。農機具は屋外で使用しつつ農作業での過酷な環境条件にさらされるため、耐久性や防錆性を付与するために使用されます。

電着塗装の原理

電着塗装は電気化学を使用する塗装方法です。対象となる基材は導電性である必要があります。一般的に金属が使われますが、非導電性の基材でも導電性の被覆を施すことで電着塗装が可能ですが、乾燥温度が150℃以上と高温になるため、樹脂には不向きです。

塗料は導電性の液体である電解液中に分散されます。この液体には塗料粒子が浮遊しており、電着塗装の対象物となる基材に塗料を付着させる役割を果たします。塗料には水溶性塗料を使用されることが多いです。

カチオン電着塗装は、塗料がプラスに荷電して、マイナス側の被塗物に析出するものことを指します。黒い見た目が特徴的で耐食性に優れた塗装方法です。

アニオン電着塗装は、電着塗装が普及した初期の頃に用いられていた方法であり、カチオン電着塗装とは対照的に塗料がマイナスに荷電するものとなります。アニオン電着塗装は電着時に被塗物からの錆びの原因となる鉄溶出が起こりやすいため、次第にカチオン電着塗装が使用されるようになりました。

ただ、アニオン電着塗装は全く使われなくなったというわけではなく、カチオン電着塗装ではアルマイト皮膜を破壊してしまうため、現在でもアルミサッシを塗装する際は、アニオン電着塗装が用いられています。

電着塗装の選び方

電着塗装サービスを選ぶ際は、以下の選定要素を考慮することが重要です。

1. 対象材料・形状

対象物が金属であるか、非金属であるかを確認します。金属であれば導電性があり、電着塗装が適していますが、非金属の場合は導電処理が必要です。メッキ処理などの導電処理を施します。

対象物の形状やサイズも考慮します。大型の部品や複雑な形状の部品には、特殊な電着塗装設備が必要になる場合があります。

2. 塗料

使用環境に応じて、塗料を選定します。対象物が屋外で使用される場合、耐候性に優れた塗装が必要です。一般的な塗料としてはエポキシ樹脂やアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂などが使用されます。

エポキシ樹脂は一般的な電着塗料の主要な成分の一つです。耐久性が高く、耐薬品性や耐摩耗性に優れています。ただし、紫外線に弱い特性があるため注意が必要です。

アクリル樹脂は耐候性に優れており、屋外での使用に適しています。自動車の外装部品や建築材料などに使用されます。ポリウレタン樹脂は柔軟性と耐久性を兼ね備えており、屋外での使用に適しています。

3. 生産性

大量生産を行う場合は、生産性が重要です。自動化された電着塗装ラインを有する企業を選定します。コストと性能のバランスを適切に見極めることが重要です。

本記事は電着塗装を行う株式会社カワイ化工様に監修を頂きました。

株式会社カワイ化工の会社概要はこちら