自動車用バッテリー管理システム

自動車用バッテリー管理システム

自動車用バッテリー管理システムとは、電気自動車やハイブリッドカーなどに搭載される車載用リチウムイオン電池の安全制御を行うシステムです。

一般的に、リチウムイオン電池などの二次電池について、安全管理を行うシステムをバッテリーマネジメントシステム (BMS) と呼びます。自動車用バッテリー管理システムとは、BMSの中でも車載用バッテリーに特化したシステムです。リチウムイオン電池は高効率でエネルギー密度が高い一方、発火や発煙などの危険性があるため、適切に制御を行う必要があります。自動車用バッテリー管理システムを使用することで、安全で効率的なバッテリー運用が可能です。

自動車用バッテリー管理システムの使用用途

自動車用バッテリー管理システムの主な使用用途は、車載バッテリーを適切に制御することで、安全性とパフォーマンスを高めることです。また、健全なバッテリーの使用により、バッテリー寿命が延びる効果も期待されます。

自動車用バッテリー管理システムが使用される主な車両は下記の通りです。

  • ハイブリッド車 (HEV)
  • プラグインハイブリッド車 (PHEV)
  • バッテリー電気自動車 (BEV)
  • フルハイブリッド車 (FHEV)
  • 商用車および農業用車両(CAV)
  • 低速電気自動車
  • 電動二輪車/三輪車

自動車用バッテリー管理システムの原理

自動車用バッテリー管理システムは、バッテリーの充放電を電子制御回路で監視および制御します。
具体的な監視項目には

  • 電圧
  • 温度
  • 容量
  • 充電状態
  • 消費電力
  • 残りの動作時間
  • 充電サイクル

などがあります。また、バッテリーに過度な負担をかけないこともバッテリー管理システムの役割の一つです。極端な急速充電や高放電電流によって生じる、セル (バッテリーモジュール内の単電池) の過放電や過電圧を防ぐ機能があります。

1. 具体的な機能

自動車用バッテリー管理システムの主な機能は下記の通りです。

  • セルの過充電、過放電を防ぐ機能
  • セルの過電流を防ぐ機能
  • セルの温度管理を行う機能
  • 電池残量を算出する機能
  • セル電圧の均等化 (セルバランス) を行う機能

自動車用バッテリー管理システムは、バッテリーモジュール (組電池) におけるセル(単電池)の電圧、電流、温度を測定します。規定の範囲を超えた場合、出力端子を切り離すことで過充電、過放電、過電流などからの保護を行い、電池残量を測定することで電力供給を制御することが可能です。

また、セルごとの電圧差を解消する働きも行い (セルバランシング機能) 、異なるバッテリーセルが同じ充放電要件を持つように管理します。

2. 装置構成

自動車用バッテリー管理システムは、大きく分けて下記のような構成になっています。

電圧検出:バッテリーモジュールおよび各セルの電圧を計測する
モニタリング回路:セルごとに状態を監視し、セルバランス調整を行う
温度検出:セルごとに温度を計測する
制御回路:BMSの計測、バランス調整を制御する
電流検出:ユニット全体の電流を計測する
電圧検出:ユニット全体の電圧を計測する
ジャンクションボックス:異常時に遮断しバッテリを保護する
地絡検知:ユニット全体の地絡を検知する

また、具体的には、次のような電子部品が用いられています。

  • 温度計測: NTCサーミスタなどの温度センサー
  • セルバランスの調整、電圧計測: チップ抵抗器
  • 制御回路 : DC/DCコンバータ回路
  • ノイズ除去、スイッチング・平滑: 導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ
  • 電圧変換: 車載用パワーインダクタ
  • ESDノイズ除去: チップバリスタ

自動車用バッテリー管理システムの種類

自動車用バッテリー管理システムは、車種によって種類が異なります。ハイブリッド車 (HEV) 、プラグインハイブリッド車 (PHEV) 、バッテリ電気自動車 (BEV) など、車両の種類に合わせて選択することが必要です。

車両種別以外では、製品によって、一般的には監視可能なセルの数、バッテリー電圧の種類 (12-24Vや48Vなど)、電圧制御の精度などが異なります。また、特に高電圧電池が使用されている場合では、高電圧用のシステムを使用することが適切です。