光ファイバーカプラー

光ファイバーカプラーとは

光ファイバーカプラーとは、光信号を比率によって分岐・合流させたり、波長によって分波・合波させたりすることができる受動光機器です。

別名には、光カプラー、光スプリッター、光ファイバースプリッター、溶融ファイバカプラ、光分岐、ファイバ結合器などの名称があります。特に電源がなくても動作するデバイスです。

分岐・合流用の光ファイバーカプラーと波長の異なる光を合波・分波する光ファイバーカプラー (WDMカプラー) があります。複数の光の入力を結合したり、反対に一つの入力を複数へと分岐させたりするときに使われ、入力・出力ともに複数入力・複数出力の接続が可能です。幅広い波長 (400nm前後~2000nm前後) の光源で利用されている光デバイスです。

光ファイバーカプラーの使用用途

光ファイバーカプラーの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 光ファイバー通信
  • 光ファイバーのモニタ
  • 光ファイバーセンサ
  • 光源
  • 光トランシーバ
  • ファイバーレーザーの励起
  • 計測装置
  • EDFA
  • 波長多重システム
  • CATV
  • FTTH/PON
  • CWDM通信
  • PON (Passive Optical Network) の構築
  • 光アンプでの信号光とポンプ光の合分波

光ファイバーカプラーの原理

1. 分岐・合流用の光ファイバーカプラー

光ファイバーカプラーの融着延伸部は、光ファイバーのコア径が小さくなっているため、光がクラッド内に広がります。また、コアとコアが近接しており、伝送によって到達した光は隣のファイバに結合することが可能です。

分岐の特性や波長は、コアとコアとの距離とファイバー同士が接している距離によって変化し、光の伝送に伴って結合比が高くなります。したがって、融着延伸部の長さや径の調整により、結合比の異なるカプラーを作ることが可能です。

一般的な分岐比としては、分岐比が50:50、75:25、90:10、99:1などがあります。入力・出力ともに、複数の接続が可能であるため、複数の異なる信号を入力してカプラーで結合させ、分岐させて出力させることも可能です。。

2. WDMカプラー (分波・合波用光ファイバーカプラー)

同じ構造の光ファイバーを用いて製造されたカプラーでは、光の伝送と共に隣のファイバへと光が移ります。ある特定の伝送距離で全てが結合し、それよりも更に光が伝送すると逆に元のファイバに戻ります。

全てが結合する伝送距離は光の波長によって異なるため、融着延伸している部分の径や長さを変えることで、波長の異なる光を分離して複数出力を行ったり、波長の異なる光を合波して単一出力を行ったりすることが可能です。

光ファイバーカプラーの種類

光ファイバーカプラーは大きく分けて、分岐・合流用と分波・合波用の2種類です。光ファイバーの本数や種類によって分類することもできます。

1. 光ファイバーの本数による分類

2本の光ファイバーを融着延伸した1×2あるいは2×2カプラーが一般的ですが、1×3、3×3、1×4、1×8、1×16、1×32、1×64など、多出入力用にの複数のファイバを融着延伸したカプラもあります。

なお、1×2カプラーなど、片方のポートがもう一方より少なくなっているものは不要なポートを終端処理によって閉じてあります。入力ファイバと出力ファイバが同一方向に配置されている同方向性の製品では、省スペースを実現することが可能です。

2. 光ファイバーの種類による分類

材料となる光ファイバーの種類によって、シングルモードカプラーやマルチモードカプラーなどの種類があります。使用する光源や光波の性質に合わせて、偏波保持、偏光保持、ダブルクラッド、広帯域などの種類もあります。

CWDM (Coarse WDM: 低密度光波長多重) カプラーは、WDMカプラーよりも波長間隔を大きくしてあるWDMカプラーの派生系です。その他、通常の光ファイバーよりも口径の大きい光ファイバーを用いているものもあり、こうした種類のものはハイパワー光伝送に最適です。蛍光顕微鏡、半導体レーザー用など、予め特定の用途を想定して市販されているものもあります。

選択する際にカプラーの性能を評価する指標としては、挿入損失、均一性、過剰損失、反射減衰量などの指標があります。光ファイバーカプラーを使用するときは、用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

光ファイバーカプラーのその他情報

光ファイバーカプラーの製造法

光ファイバーカプラーは、一般的には複数本の光ファイバーを融着延伸して作られるデバイスです。光ファイバーは細い繊維状の構造ですが、石英ガラスやプラスチックで形成されており、中心部の「コア」と周囲の「クラッド」との二層となっています。

材質の屈折率の関係により、光はコア内を全反射して伝播します。一般的な溶融・融着延伸で製造される光ファイバーカプラーの製造原理は次のとおりです。

  1. 材料となる光ファイバーは被膜を除去し、バーナーやオーブンなどで1600℃程度まで加熱します。
  2. 石英が十分に柔らかくなった後、溶着と延伸を行います。
  3. 望みの特性を得られたら延伸を止め、基板への固定とパッケージングを行います。

また、中には融着延伸ではなく機械的な分岐結合によって製造されている製品もあります。分岐結合で製造されている製品の方が、一般的には温度変化や振動などの機械的ストレスへの耐性が強いとされます。

参考文献
https://www.sevensix.co.jp/useful/optical-fibercoupler_014/#2
https://www.fiberlabs.co.jp/tech-explan/about-fiber-coupler/
https://www.thorlabs.co.jp/newgrouppage9.cfm?objectgroup_id=10758