ヘルムホルツコイル

ヘルムホルツコイルとは

ヘルムホルツコイルは、均質な磁場を発生させるコイル群の一つです。

ヘルムホルツコイルは、2つの同じ形状の円形のコイルを、コイルの半径と同じだけ離して平行に 、かつ中心軸が同一になるように 配置し、同じ向き・量の電流を流します。ドイツの物理学者ヘルマン・フォン・ヘルムホルツ(Hermann von Helmholtz)にちなんで名付けられた名称です。

地磁気を打ち消す目的や、磁場のキャリブレーションなどにおいて使用されていることが多いコイルです。製品によって、発生磁界の強度や、コイル径などは様々であり、多様な製品が提供されています。

ヘルムホルツコイルの使用用途

ヘルムホルツコイルは、均一な磁場を発生させられることから、地磁気を打ち消すために用いられることが多いです。これは、局所的には地磁気は単一方向を向いていると見なすことができ、ヘルムホルツコイルもまた単一方向を向いた磁場を生成するためです。

工業的分野や磁気学、材料科学、生物物理学などにおける研究用途で使用されることが多く、代表的な用途には下記のようなものがあります。

  • 製品、機器、材料の磁気による影響の検査
  • プローブ、センサ、磁力計、ホール効果センサ、その他の磁場センシングデバイスなどの校正における標準磁界の発生
  • ホールIC、ホール素子など、磁気センサの検査
  • 磁気カードなどの磁気による影響の検査
  • 磁気式リードリレーの検査
  • 磁性体の測定
  • 物理学教育における教育ツールおよびデモンストレーション
  • 磁気関連の実験用設備

ヘルムホルツコイルの原理

1. 概要

ヘルムホルツコイルは、巻数、線種、半径が同じ、2つのコイルから構成されます。2つのコイルが、半径と同じ距離で平行かつ同軸に配置される時、コイルに挟まれた空間で、磁場の向きと大きさがほぼ同じになります。電線には、エナメル銅線や中空銅線などが使用され、コイルを巻きつけるボビンの素材には、木や各種の合成樹脂、非磁性体の金属などが使われます。電源は外部電源やバッテリーより供給されますが、ヘルムホルツコイルの磁界の精度は使用する電源の精度に依存しています。

導出は割愛しますが、ビオ・サバールの法則より磁束密度Bを求めると、

B = (4/5)3/2μ0nI/R
0 = 4 π ×10-7 [T・m/A] (真空の透磁率)、コイル半径:R、巻き数: n、電流: I )

となります。

2. 多軸ヘルムホルツコイル

多軸ヘルムホルツコイルとは、ヘルムホルツコイルの外側に更にヘルムホルツコイルを組み合わせたコイルです。通常、軸が直交するように組み合わせられます。2軸、或いは3軸のコイルの組み合わせにより各軸の磁界を合成し、2次元・3次元的に発生磁界方向をコントロールする事が可能です。

ヘルムホルツコイルの種類

1. 概要

ヘルムホルツコイルには、様々な種類の製品があります。発生する磁界の磁束密度は製品によって大きく異なり、100 µT の製品もあれば、2 mT 前後、7 mT 前後、20 mT 前後の製品まで様々です。200 mT にも達する大型の製品もあります。大型の製品では重さが150 kgや300 kgにもなります。製品によっては、磁場内にワークをセットするステージ付きです。また、コイルのボビンを放熱板にすることで発熱を抑えた製品や、全体がアルミフレームなどのベースに乗っているものもあります。

コイル間隔を調整できる可変型ヘルムホルツコイルや、前述した2次元、3次元型の多軸ヘルムホルツコイルも販売されています。

ヘルムホルツコイルの磁界の精度は使用する電源の精度に依存するため、電源付の製品もあります。

正方形のコイル2つを平行かつ同軸に置き、両者に同じ向きや大きさの電流を流す場合、両コイルの中心間の二等分点から、コイルに近づいていくと、磁束密度が増えます。つまり均一な磁界ではありません。このため、このコイル対は厳密にはヘルムホルツコイルではありません。しかし、このコイル対はヘルムホルツコイルと同様に地磁気キャンセラーとして使えるので、これをヘルムホルツコイルと呼ぶメーカーもあります。

2. 設計・選定

  • ヘルムホルツコイルは、オーダーメイドになる場合も少なく有りません。設計や製品選定の場合には、下記の点をはっきりさせておくことが必要です。コイルが大きいものでは、使用による発熱や安全性などを予め検討しておく必要があります。
  • 必要な均一発生磁場、磁界の範囲と磁界の強さ
  • 磁界の方向 (一方向か多軸か)
  • 連続使用時間
  • 使用される環境温度