カーボンブラシとは
カーボンブラシとは、モーターや発電機などに使用される導電性摺動部品です。
直流モーターや大型の発電機などに使用されます。摺動部品で摩耗するため、定期的な交換が必要な部品です。
摩耗限度線と呼ばれる刻印を超えて使用すると、モーターが故障する危険があります。
カーボンブラシの使用用途
カーボンブラシは、一部のモーターで使用される部品です。主に整流用、集電用、接地用の3つの用途で使用されます。
1. 整流用カーボンブラシ
整流用とは、直流モーターの巻線極性を反転させることを目的に使用される用途です。以下は整流用カーボンブラシの使用一例です。
- 電動工具内部の直流モーター
- 自動車のワイパーやドアガラスの駆動用モーター
- 路面電車の走行直流モーター
バッテリー駆動の電動工具や車載装置などには直流モーターが付属しており、その内部にカーボンブラシが使用されます。
2. 集電用カーボンブラシ
集電用とは、回転体に電気を通過させることを目的に使用される用途です。以下は集電用カーボンブラシの使用一例です。
- 天井クレーンなどに使用される巻線型誘導モーター
- 回転体の計装信号送信用
回転体へ電力や電気信号を伝えるスリップリングという機器があり、内部にカーボンブラシが使用されます。混合機の内部温度発信など、用途はさまざまです。
交流モーターはカーボンブラシを持たないかご型誘導モーターが主流ですが、巻線型誘導モーターを選定した場合は二次巻線接続用にカーボンブラシを使用します。
3. 接地用カーボンブラシ (アースブラシ)
電食防止の目的で使用される場合もあります。電食とは回転機器の回転軸に電気が流れることで、その軸受が電気分解によって腐食する現象です。
インバータ駆動のモーターや発電機において発生しやすい現象であり、カーボンブラシで回転軸を接地することで防止します。電食目的で軸を接地するカーボンブラシを「アースブラシ」または「接地ブラシ」とも呼びます。
カーボンブラシの原理
カーボンブラシはブラシ部分、リード線、スプリングなどで構成されます。
1. ブラシ部分
ブラシ部分は回転体と接して摺動する部分です。多くの場合は材料として黒鉛が使用されます。黒鉛が使用される理由は軽量でさびにくく、導電性で滑りが良いためです。
カーボンブラシ用のホルダの寸法に合わせてブラシの大きさを選定します。カタログ品も存在しますが、カーボンブラシメーカーに形状や寸法を問い合わせれば同様の製品を製作してもらえる場合が多いです。
2. リード線
リード線はブラシに接続された配線部分です。そのほとんどが撚線構造の裸銅線です。接続する端子台形状に合わせて端末の形状や大きさを選定します。
使用電流値が大きくなるほどリード線が太くなり、端子も大きくなることが多いです。
3. スプリング
スプリングはブラシ部分を整流子に押し当てるための圧力を加える部分です。ブラシホルダにがスプリング付きの場合は省略されることもあります。スプリングは一般的にリード線を取り囲むように取り付けられる場合が多いです。
カーボンブラシのその他情報
ブラシレスモーター
直流電源用モーターには、ブラシモーターが主流でした。ブラシモーターでは内部にカーボンブラシと整流子を使用します。したがって、直流モーターには経年ですり減るカーボンブラシの定期的な交換が必要であるという欠点がありました。
近年では、直流電源用モーターにブラシレスモーターを採用している製品も多く存在します。ブラシレスモーターは専用の電源ユニットで電源側を変調させることで、ブラシを使用しないモーターです。専用の電源ユニットが必要ですが、ブラシがないためメンテナンス性に優れており小型です。
ブラシモーターは構造が簡単で安価なため、速度制御が不要な場合に使用されます。ブラシレスモーターは速度制御や一定トルク運転をしたい場合に使用されます。