錆止め油

錆止め油とは

錆止め油とは、金属の表面に塗布して錆の発生を防ぐ油系の防錆剤です。

特に錆びやすい鉄素材に錆止め油を塗布して保護膜を作り、錆の原因となる水分と酸素が接触しないようにします。錆止め油が必要なのは、金属素材には精錬前の状態に戻ろうという性質があるためです。鉄素材なら酸化鉄、つまり「赤錆」の状態に戻ろうとします。

精錬により高純度の金属として取り出されても、水分と酸素に触れると鉄の原子は電子を取られて2価イオンとなり、水酸化第1鉄へと変化します。さらに、水分と酸素に触へ変化してれ続ければ、2価イオンは電子を取られて3価イオンオキシ水酸化鉄となり、その1部が酸化鉄へと変化して「赤錆」を発生します。

赤錆は、金属製品の耐久性や性能の低下を招いて事故につながりやすいです。また、金属製品が錆びることにより損害や経済的損失が発生する場合もあります。そのため、錆止め油によって保護膜を作り金属製品を錆びさせないことが大切です。

錆止め油の使用用途

錆止め油には、一時的な防錆や、屋外の錆止め、輸送時の防錆、指紋除去と錆止め、潤滑性を必要とする機械部品の錆止めなど、さまざまな使用用途があります。JISK2246によれば、錆止め油は以下の5つの形に分類されます。

さらに、性質や粘度により細かく分かれているため、使用用途に合った錆止め油を選ぶことが大切です。

1. 指紋除去形

素手で製品に触れる工程がある作業現場では、指紋や汗が素材の表面に付着することがあります。指紋や汗には水分や塩分が含まれており錆の原因になるため、金属表面から除去することが大切です。指紋除去形の錆止め油は、低粘度の保護膜を形成して機械や部品などに付着した指紋を除去し、錆を防止します。

2. 潤滑油形

潤滑油形は溶剤を含まず、引火する危険が低い錆止め油です。油膜の粘度が低い種類から順に、1種1~3号と2種1~3号の計6種類があります。低~中粘度の1種は金属材料・製品、中~高粘度の2種は機械・機器類内部の錆止めに最適です。

3. 溶剤希釈形

溶剤希釈形には、硬質膜・軟質膜・水置換形軟質膜・水置換形軟質膜・不粘着硬質膜の5つの種類があります。不粘着硬質膜を形成する溶剤希釈形は屋外での使用も可能ですが、他は屋内での使用が基本です。

4. ペトロラタム形

ペトロラタム形は軟質の膜を形成する錆止め油です。そのため、複数の部品で構成される高度な仕上げ面に適しています。

5. 気化性

気化性錆止め油は、粘度の異なる2種類の油膜を形成します。気化性でありながら溶剤を含まないので、引火の危険性は低いです。気化する性質を利用し密閉された空間での錆止めに適しています。

6. その他

JISK2246-5の規定にある「錆止め性能試験」に合格済みで、かつ上記の分類にはあてはまらない錆止め油を指します。

錆止め油の原理

金属の表面に溶剤・鉱油・防錆添加物が入った錆止め油を塗布すると、溶剤が蒸発し鉱油や防錆添加物が金属表面に付着し、保護膜を形成します。その保護膜が錆の原因となる水分や窒素・硫黄酸化物などの腐食要因との接触を防ぎ、金属表面の錆を防止します。

錆止め油の効果を十分に発揮するためには、表面の洗浄 (石油系溶剤洗浄、蒸気洗浄、アルカリ洗浄) によって水分・錆び・腐食を除去し、腐食要因を取り除くことが重要です。

錆止め油のその他情報

錆止め油の塗布の方法

  • 侵せき塗布
    複雑な形状の製品に十分な塗布が可能。
  • スプレー塗布
    大型製品や広範囲の塗布に最適。
  • ハケ塗り
    部分塗りや繰り返し塗りが可能。

錆止め油は入手が容易で汎用性があり、一般に広く利用されています。特に液体タイプは即効性が特徴で、凹凸がある表面にも浸透するため錆止め効果が高いです。

しかし、その一方で油汚れや悪臭により作業環境の悪化を引き起こします。簡単に塗れても、除去は容易ではありません。また、結露が生じると水分を上手く遮れない場合があるため、注意が必要です。

参考文献
https://www.yukenkogyo.jp/
https://www.chemicoat.co.jp/knowledge/detail_134.html
https://kikakurui.com/k2/K2246-2018-01.html

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