スマートグラスとは
スマートグラス (英:Smart Glasses) とは、頭部に装着してデジタル情報の取得と発信が可能なウェアラブル端末です。
ユーザーが視界を確保したまま両手を自由に動かせるため産業向けを中心に幅広い分野で活用が進んでいます。
スマートグラスはARグラスと混同されがちですが厳密には異なります。ARグラスは現実世界を認識してデジタル情報を重ねて仮想現実を表示する端末ですが、スマートグラスは頭部へ装着したウェアラブル端末に様々な機能を追加したものとなります。ARに対応したスマートグラスも一部あります。
スマートグラスは片目タイプと両目を覆うオーバーグラスタイプがあります。片目タイプは軽量で扱いやすいため産業分野で、両目タイプは迫力ある映像を大きく表示することができるためエンターテイメント分野で利用されています。
スマートグラスの使用用途
スマートグラスには様々な使用用途があります。以下はその一例です。
1. 製造業
スマートグラスの活用により、画面と音声によって作業情報の確認・データのやりとりなどが作業の手を止めずにハンズフリーで行うことができます。また作業の記録をデータとして保存することができるため製造現場におけるDX化を促進することができます。
2. メンテナンス業
メンテナンス作業員などがスマートグラスを使用することで、作業手順やマニュアルを表示し、作業の効率を向上させることが可能です。部品の識別や交換手順を表示したり、リアルタイムでメーカーとのビデオ通話を行いながら作業を行ったりすることができます。作業効率を上げるだけでなく、専門的な支援が必要な場合でも、遠隔から迅速に対応することが可能です。
3. 建設・土木
スマートグラスを活用することで遠隔で現場サポート、立ち合いや確認作業を行う遠隔臨場が可能となります。また監査員が安全チェックを行う安全パトロールも、現場へ出張することなく遠隔から行うことが可能です。現場と離れた場所から臨場を行うことで安全性の確保、コスト削減、人材不足の解消を行うことが可能です。
4. 医療分野
スマートグラスによって手術中に医師に必要な情報をリアルタイムで提供することが可能です。これにより、手術の効率性と安全性を向上させます。また訪問看護のおいて両手が使えるため患者の補助や診察を行いながら遠く離れた医師や専門医に的確に状況を伝えることが可能です。
5. 研修・教育
作業者目線の映像を取得することができるため熟練者の作業映像を記録して教育用として活用することができます。また若い人材や未経験者の目線映像を熟練者が遠隔地から作業研修を行うことが可能です。これにより熟練技術者の技術伝承、人材不足を解消することができます。
6. エンターテイメント
ARに対応したスマートグラスではARゲームのプラットフォームとして使用され、ユーザーは現実の世界で仮想キャラクターと対話しながら、ゲームをプレイすることができます。また、一部のスマートグラスはVRにも対応しており、仮想現実世界に没入しながら映画やゲームを楽しむことが可能です。
スマートグラスの原理
スマートグラスには一般的に小さなディスプレイが組み込まれています。このディスプレイはユーザーの視界に情報を表示するために使用されます。製品によってはヘッドアップディスプレイを採用しており、情報をユーザーの視界に投影することが可能です。
また、グラス内部に様々なセンサーを組み込まれることが多いです。加速度計やジャイロスコープまたは距離センサーなどがその一例です。これらのセンサーによってデバイスの位置や動きを検出し、それに応じてデバイスの動作を制御します。
スマートグラスは内蔵コンピューターを有し、ディスプレイに表示する情報を処理し、センサーデータを解析して適切な動作を行います。無線通信機能が組み込まれている製品も多く、インターネットに接続して外部のデータにアクセスすることが可能です。BluetoothやWi-Fiを介して他のデバイスと通信することもできる場合が多いです。動力源として内蔵のバッテリーが組み込まれており、必要な電力を供給します。一般的にスマートグラスのバッテリー寿命は、使用状況や機能の種類によって異なります。
また、スマートグラスとスマートフォンとのユーザーインターフェイスが異なる点が重要です。スマートフォンは画面に対して指によるタッチ操作が基本ですが、一般的なスマートグラスは声による音声操作が基本となり、両手で作業をしながらでも操作を可能とする点が大きく異なります。
スマートグラスの選び方
スマートグラスを選ぶ際は機能だけではなく使用する環境に応じた製品を選ぶことが重要です。以下はその一例です。
1. OS・アプリケーション
スマートグラスのOSは機能や対応アプリケーションに影響を与えます。主要なスマートグラスOSには、AndroidベースのOSやiOSベースのOSなどがあります。また、スマートグラスに付属するアプリケーションやサービスが、課題解決につながる機能を有しているか、初期設定や使い方が複雑ではないか、活用用途をイメージして製品を選ぶことが重要です。
2. 重量
スマートグラスの重量は装着感や快適性に影響を与えます。長時間の使用を考えると、特に頭部へ装着する機器は軽量であることが最も重要です。また、重量のバランスについても装着感に影響を与えるため、前後左右に対して均等な重量バランスである方が、長時間の装着には向いています。
3. 無線通信機能
無線通信機能を有する製品は、使い勝手や機能の拡張性が高まります。一般的にBluetoothやWi-Fiを搭載しているスマートグラスが多く、他のデバイスとの接続やインターネットアクセスが可能です。製品によってはLTEや5Gなどのモバイル通信機能を備えており、独立した通信がも可能です。
4. バッテリー寿命
スマートグラスのバッテリー寿命は使用時間に大きく影響します。長時間使用する場合や外出先で使用する場合は、バッテリーが長持ちするデバイスを選ぶことが重要です。また、バッテリーの交換が可能であるかも考慮する価値があります。
5. 利用環境
スマートグラスは精密機器であり、製品によっては衝撃耐性や防水耐性が十分でない可能性があります。特に屋外での利用に際しては、防塵防水耐性や衝撃試験等、利用する用途や場所に応じて必要な性能を備えているか、確認することが重要です。