ヘキサナール

ヘキサナールとは

ヘキサナールの基本情報

図1. ヘキサナールの基本情報

ヘキサナール (Hexanal) とは、鎖状脂肪族アルデヒドの一種に分類される有機化合物です。化学式はC6H12Oです。別名には、ヘキシルアルデヒド、ヘキサアルデヒドやカプロンアルデヒドなどの名称があります。CAS登録番号は、66-25-1です。

分子量は100.16、融点は -56℃、沸点は131℃であり、常温において無色透明の液体です。臭いについては、青葉の臭い、未熟な臭いと形容されます。大豆や草から出る青臭い臭いは、ヘキサナールに由来するものです。エタノール及びアセトンに溶けやすく、水に溶けにくい性質があります。密度は、0.8335g/cm3です。

引火性が高いことから、消防法では、第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体に分類され、法規制を受けています。

ヘキサナールの使用用途

ヘキサナールの主な使用用途は下記の通りです。

  • アルコール飲料の附香剤
  • バターフレーバー
  • 化粧品の香料、香味剤
  • 染料
  • 可塑剤、合成樹脂の原料
  • 農薬の製造

具体的な例では、可塑剤原料である1-ヘキサノールはヘキサナールの水素化によって製造されています。また、ヘキサナール単体ではは青臭い臭いの原因物質であるものの、香料の成分にも使用される物質です。

例えば、リンゴの風味などのフルーツ系フレーバーにグリーン香を与えたり、バターなど乳製品や、ラム系フレーバーに用いるフレッシュ感を与えたりするなどの効果があります。

ヘキサナールの原理

ヘキサナールの原理を合成と化学的性質の観点から解説します。

1. ヘキサナールの合成

ヘキサナールの合成

図2. ヘキサナールの合成

ヘキサナールは、生物中では脂肪酸の酸化により生成される物質です。例えば、大豆中ではリノール酸がリポキシゲナーゼによってリノール酸13-ヒドロペルオキシドに変換され、更にヒドロペルオキシドリアーゼによって変換されることで、最終的にヘキサナールが生成します。

工業的には、1-ペンテンをヒドロホルミル化する反応により、ヘキサナールを得ることができます。

2. ヘキサナールの化学的性質

ヘキサナールの化学反応

図3. ヘキサナールの化学反応

ヘキサナールは、僅かでも酸が共存すると容易に酸化・重合します。これは、ホルミル基 (-CHO) の性質に由来するものです。前述の大豆においては、アルデヒドデヒドロゲナーゼにより、カプロン酸へと酸化されることが知られています。また、合成化学の観点では、Wittig反応やアルドール反応にも使用可能です。

このように、ヘキサナールに含まれているホルミル基は反応性が高い官能基ですが、一方でヘキサナールは法規制に従った保管及び取扱においては安定と考えられています。

3. 実社会におけるヘキサナール

ヘキサナールは調理中の脂質過酸化反応により、食品でも生成される可能性がある物質です。インスタントラーメンやコーヒー用ミルクなどの劣化臭成分からヘキサナールが検出されています。その他に、リンゴジュースやオレンジジュースなどのジュース類や、オリーブオイルなどでも生じることがあります。

引火点が32℃と低く、極めて燃え易い性質です。そのため、熱、火花、裸火、高温のもののような着火源からは遠ざける必要があります。尚、労働安全衛生法では、「危険物・引火性の物」に指定され、消防法では「第4類引火性液体、第二石油類非水溶性液体」に指定されるなど、各種法令による規制を受けています。

ヘキサナールの種類

現在市場に流通しているヘキサナールには、産業用の製品や、研究開発用試薬などの種類があります。産業用の製品は、主に工場における有機合成原料・香料原料などの用途を想定して販売されています。荷姿はドラムや石油缶など、工場でのニーズに合わせた大型容量が中心です。

研究開発用試薬は、2mL , 25mL , 100mL , 250mL , 1Lなど、実験室等で扱いやすい容量の種類で販売されています。室温で保管・輸送が可能な試薬として販売されている場合と、冷蔵保管試薬として販売されている場合とがあります。前述の通り、引火性が高いことから注意が必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/66-25-1.html

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