フロログルシノール

フロログルシノールとは

フロログルシノールとは、化学式C6H6O3の天然に存在する有機化合物の1つです。

フロログルシノール類は、細菌や植物によって生合成され、さまざまな植物内の成分中に配糖体として存在します。アシル誘導体はオシダ属のドリオプテリス・アルグタ  (英: Dryopteris arguta) の葉状体に含まれます。

褐藻類からフロログルシノール類が単離でき、タンニンの1種であるフロロタンニン (英: Phlorotannin) を合成可能です。また、フロレチンヒドロラーゼによるフェノン誘導体の加水分解でも得られます。

化学式 C6H6O3
英語名 Phloroglucinol
分子量 126.11
融点 216 ~ 219℃

フロログルシノールの使用用途

多官能性であるフロログルシノールは、有機合成の中間体として有用です。主に医薬品や爆薬の合成原料などに使用されます。

例えば、フロプロピオンの合成原料に利用されます。ジアゾ染料と結合して速やかに黒色になるため、印刷のカップリング剤としても使用可能です。リグニンと呈色反応を示し、分析試薬に用いられます。ペントースなどの検出や定量 (トレンス反応) にも有用で、フロログルシノール反応と呼ばれています。

フロログルシノールの性質

フロログルシノールの反応

図1. フロログルシノールの反応

フロログルシノールの分子量は126.11で、融点は216〜219°Cです。常圧でのフロログルシノール2水和物の融点は116〜117°Cです。フロログルシノールは昇華性を有します。弱い三塩基酸で、最初の2つのpKaは8.5と8.9です。

ヒドロキシルアミンと反応して、オキシムを形成します。フロログルシノールはエノールのように、ケト互変異性体と平衡状態で存在しているためです。

フロログルシノールはベンゼントリオールのようにも振る舞い、3つのヒドロキシル基がメチル化されると、1,3,5-トリメトキシベンゼンが得られます。

フロログルシノールの構造

フロログルシノールの構造

図2. フロログルシノールの構造

フロログルシノールは1,3,5-ベンゼントリオールとも呼ばれます。ベンゼン環に3個のヒドロキシ基が置換したポリフェノールであり、ベンゼントリオール (英: benzenetriols) またはトリヒドロキシベンゼン (英: trihydroxybenzenes) の1種です。

フロログルシノールは、pHに依存した化学平衡の関係にあります。フェノール型の1,3,5-トリヒドロキシベンゼンとケトン型の1,3,5-シクロヘキサトリオンの2種の互変異性体が存在します。分光学的に中性化合物のケト互変異性体は検出できません。ただし、脱プロトン化した場合には、ケト互変異性体が優勢です。

フロログルシノールのその他情報

1. フロログルシノールの合成法

フロログルシノールの合成

図3. フロログルシノールの合成

有機合成では、1,3,5-トリニトロベンゼンの還元によりトリアミノベンゼンが生じ、得られた塩酸塩を水と煮沸して加水分解すると得られます。通常のアニリン誘導体は水酸化物イオンに不活性ですが、トリアミノベンゼンが互変異性によりイミン体になるため、加水分解を起こしやすいです。

2. フロログルシノールの反応

フロログルシノールのヘッシュ反応 (英: Hoesch reaction) によって、1-(2,4,6-トリヒドロキシフェニル)エタノンを合成可能です。塩化亜鉛触媒の存在下で、フロログルシノールとイソバレロイルニトリルが反応すると、レプトスペルモンが生成します。

低温のアンモニア水とフロログルシノールは容易に反応して、5-アミノレゾルシノール (フロラミン) を合成可能です。フロログルシノールとフロレチン酸の反応では、フロレチンが30%の収率で得られます。

3. フロログルシノールの異性体

ヒドロキシ基の位置によって異性体が3種類存在します。1,2,4-ベンゼントリオールと1,2,3-ベンゼントリオールです。1,2,4-ベンゼントリオールはヒドロキシキノール、1,2,3-ベンゼントリオールはピロガロールとも呼ばれています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0232-5650JGHEJP.pdf

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